第70話 莉央vs諒

 1回目の安全エリアの収縮が始まる。

俺は、いち早くエリア内に入っていた。


 ここに来るまでにbotを3体倒している。


「takamoriくん、今どこに居るの?」

「莉央の後ろにいるよ」

「もう、冗談やめてよ」


 そんな会話をしながら、索敵をしていく。


《イチャイチャすんな》

《莉央ちゃん、takamoriさんをぶちのめしてくれぇ》


 相変わらず、すごい勢いでコメントが流れていく。


「うわ、あぶねぇ」


 俺は銃を撃ちながら言った。


「今botに7割削られたんだけど」

「そのまま、やられれば良かったのにぃ」

「残念やったな」


 このルールではbotにやられても負けになる。


《世界チャンピオンがbotにやられたら笑う》

《botに7割削られる世界大会優勝者w》


 コメント欄も盛り上がってくれている。

 

 俺は、その場でひとまず回復を入れる。

右上には残り30人と表示されている。


「だいぶ減ってきたな」

「緊張感増してきたねぇ」


 エリアに飲まれているのもあるが、莉央も相当な数を倒しているのだろう。


 そして、さらにエリアが収縮していく。


「そろそろ出会ってもおかしくないよな」

「だね」


 エリアの感じから見て、そろそろ出会ってもおかしくはないエリアになっている。

俺が、家に入って物資を漁ろうとしたその時だった。


 いきなり、ヘッドショットを喰らった。


「嘘だろ!!!!!! くっそー!」


 俺は思わず大きな声を出してしまった。

俺の方の画面ではloseと大きく表示されている。


「やったー! みんな、takamoriくんに勝ったよー!」

「うわぁ。まじか。めっちゃ悔しいねこれ」


 俺が完全に油断していた。

呑気に物資なんて漁っている場合では無かったと後悔する。


「うわ、そんなところに居たのかよ」


 俺は、リプレイで莉央の様子を確認した。

周囲には敵の様子は無かった。

ということは、それなりに遠距離から狙撃されたことになる。


「私も狙撃できるって忘れないでよね」

「参りました」


《莉央ちゃんが勝ったー!》

《takamoriさん、油断しすぎw》

《おいおい、世界チャンピオンに勝っちゃったのかよ》

《莉央ちゃん、おめでとう》


 一応、その試合は最後までプレイして莉央が優勝した。


「じゃあ罰ゲーム!」


 莉央がいきいきしている。


「takamoriくんには、原宿でクレープを私に奢ってもらいまーす!」

「そんなことでいいのか?」

「うん、その代わり、原宿まで付き合ってもらうし、荷物持ちしてもらうから」


《デートじゃん》

《おい、やっぱりtakamoriそこ代われ》


「その様子はこのチャンネルで動画も公開するから楽しみにしててね!」

「まあ、負けましたので、クレープでもなんでも奢らさせて頂きますよ」

「やったー! ってことで、今日の配信はここまで! 急な配信なのに見てくれてありがとう」

「ありがとうございました」


 そう言って、莉央が配信終了をクリックする。

俺たちのゲリラ配信は終了した。


「さてと、いつ原宿いく?」

「莉央はいつがいいんだ?」

「明日、暇?」


 明日は祝日である。

特に予定も入っていないはずだ。


「大丈夫だよ」

「じゃあ、明日の午後いこ!」

「了解! じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」

「分かった! じゃあ、時間と集合場所は連絡するね!」

「あいよ」


 俺は荷物をまとめると、莉央の部屋を後にした。

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