第40話 ざまぁされた幼馴染③
俺は自宅に戻って思い出す。
「そういえば、えまの親父さんも会社やってたっけな」
この前、付き合って欲しいと言われたが、俺は断った。
それからも、何度か連絡は来ているが、まともに返信するのもバカらしくなっていた。
夏目ホールディングスとは比べものにならないが、えまの父親も自分で会社を経営していた。
しかし、その会社も今は上手く行ってないと聞く。
「こんな株持っていてもしょうがないよな」
幼馴染のよしみとして、俺は大会賞金の一部でえまの父親の会社の株を所有していた。
プロゲーマーというのは不安定な職である。
これがずっと続くとは限らない。
これからの生活を考えて俺は投資をしていた。
その中の代表格が株式投資である。
スマホで株価のチャートを見ると、明らかにえまの父親の会社の株価は下がっている。
「これ、ここから更に下がりそうだな」
俺はそれなりにえまには世話になっていたつもりなので、結構な額の株式を所有していた。
「全部売っ払っちゃうか」
こんな所の株を持っているなら、他の株を買った方がよっぽどいい気がする。
俺は夏目ホールディングスの株も所有しているが、そちらは順調に上がっている。
新規の事業が上手く行ったことが要因だろう。
今、えまの父親の会社の株を売ったら俺に取っては損になるのだが、これから上がる見込みがない株式を持っていても仕方がない気がするのだ。
俺はパソコンを開き、マーケットに入って所有している株の全てを売り払った。
「さて、ゲームの練習しなきゃな」
プロホプルの日本大会まではあと一ヶ月ほどである。
出場メンバーを見るに、今回も油断できないメンツである。
いくら世界大会で優勝した経験があるとはいえ、気を抜いていたら足元を掬われることになる。
愚者は経験に学び、賢者は歴史から学ぶという言葉もあるくらいである。
♢
俺が株を売ってからの展開はそう、遅くは無かった。
えまの父親の会社が明らかに傾いた。
「ちょっと、パパ! 会社大丈夫なの?」
子供ながらにも、自分の父親の会社の業績が悪かったことは分かっていた。
「うるさい! お前が気にすることじゃない!!」
ただでさえ、上手く行かない会社経営にえまの父親は苛立っている。
「そう! 潰れても私知らないから!」
えまはえまで、諒に振られて苛立っている。
「諒から返信もないし……」
えまはスマホを眺めてつぶやいた。
諒からの返信は一週間以上無い。
「なんでよ! 少し前までは私に惚れていたくせに! 全部あの女のせいだわ!!」
諒との個人メッセージには、ただ《既読》とだけ表示されている。
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