第38話 桜田凛花との対面
「どうぞー」
白瀬さんがノックすると、返事が返ってくる。
その声は、どこかで聞き覚えがあるものである。
「失礼します」
俺たちは白瀬さんの後に続く感じで、会議室へと入る。
「お待たせしちゃってすみません」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ」
そこには、可愛いと形容することが一番正しい少女が座っていた。
綺麗な金髪を胸の位置くらいまで伸ばし、ウェーブがかかっている。
どこかの国のお姫様と言われても、納得するような雰囲気である。
「直接お会いするのは初めましてですね。私、桜田凛花と申します」
そう言って、凛花はぺこりと頭を下げた。
「初めまして、高森です」
「夏目莉央と申します」
そう言って、俺たちは凛花と握手を交わす。
凛花は人気Vtuberである。
普段は二次元のキャラクターを通して配信している。
今の凛花はいわゆる、中の人というやつである。
「この前はコラボ配信ありがとうございました」
「こちらこそです。おかげで、凛花さんの方からだいぶ流れて来てくれました」
凛花のチャンネル登録者は、俺の三倍以上いるのだ。
「私の方こそ話題性はバッチリだったよ! 高森さんの切り抜きって凄いね」
「見てくれたんですか?」
「もちろんだよ」
凛花とのコラボ生配信の切り抜き動画も当然作られた。
確か、再生回数は100万回を超えていたと思う。
俺の切り抜き動画の中でも、トップクラスの再生回数だ。
「ところでさ、2人は付き合ってるの?」
凛花がいきなりぶっ込んできた。
「へっ」
「わ、私たちは、べ、別に付き合ってるとかじゃ……」
莉央は初々しい表情を浮かべている。
シンプルに可愛い。
ゲームをしている時の真剣な表情もいいが、こうした表情も魅力的だ。
ギャップ萌えというやつだろうか。
俺は思わず莉央に見惚れていた。
「じゃあ、私が高森さんを狙っちゃってもいいのかなぁ?」
小悪魔的な表情を浮かべながら、凛花が俺に腕を絡めてくる。
「絶対にダメです!! 離れてください!!」
そう言って、莉央は凛花を引き離す。
「諒は私と一緒に世界を目指すんです!!」
莉央は顔を赤く染めながら口にする。
「あはは、これは私の入る隙はなさそうだなぁ」
凛花は悪戯が成功した子供のような表情を浮かべ、楽しいそうに笑っている。
「今日は私がわがまま言って会わせてもらったんだ。ありがとうね」
「いえ、僕も会いたかったですから」
「また、一緒に配信やろうね!」
「もちろんです」
SNSのトレンド入りするほどには、俺と凛花の配信は話題に上がった。
「では、僕らはこれで」
「失礼します」
そう言うと、会議室を後にした。
「なんか、凄い人だったな」
「諒も腕絡めて貰って嬉しそうだったけどね!!」
「いや、そんな怒んないでよ」
「怒ってません!!」
いや、可愛いかよ。
莉央はスタスタと歩いて行った。
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