第19話 歴代最高記録
配信前の待機人数が5万人弱というとんでもない記録を叩き出した。
これは、事務所内の配信者の中でも1、2を争うほどの記録である。
ここから、さらに視聴者数は伸びると予想される。
「なんか、緊張するな」
顔出し配信するのは久しぶりだ。
ほぼ始めてレベルなので、いつもよりドキドキする。
「大丈夫だよ。視聴者のみんなは優しいから」
「そうだな。世界大会の決勝に比べたら、マシだな」
「いや、比較対象がおかしい気がするんだけど」
莉央は若干引いていた。
そして、配信開始の1分前になる。
・53032人が待機しています
配信直前にして待機人数がさらに増えた。
もはや、怖いまである。
「よし、がんばろうね!」
そう言って、莉央はピシッと背筋を伸ばした。
「おうよ」
予約していた配信が無事に開始される。
コメントが画面をすごい勢いで流れて行く。
【待ってましたー!】
【Takamoriさん、イケメン!?】
【おい、リオちゃんと距離近くないか?】
【プロゲーマーの初見プレイ楽しみ!】
概ね好評と思われるコメントだ。
「みんなこんばんはー! 今日はTakamoriさんとレーシングゲームやっていくよー!」
「ほぼ初見なんだよな。たまにはこういう誰かを撃たないゲームもいいよな」
「ちょっと、Takamoriさんなにそれー」
リオとの雑談から配信は始まる。
【仲良しか!】
【うらやま】
【二人はFPS以外も上手いのか!?】
「うーん、FPS以外は私もTakamoriさんも初心者みたいなもんかな」
「だね。あんまりやってこなかったしね」
「じゃあ、早速始めていくよー」
俺たちはコントローラーを操作する。
まずは、コースを選択する。
「どこやります?」
「うーん、俺はこれ」
「じゃあ、私はこれで」
二人とも定番のコースを選択する。
今回は通信対戦をしているので、俺とリオ以外にも6人のプレイヤーが居る。
全員がコースの選択を終えると、ランダムでコースが選ばれる。
結果、リオが選んだコースとなった。
「やった、私の選んだコースだ!」
「よかったじゃん」
配信していることを忘れてしまうほど、俺はこの状況を楽しんでいた。
「よっしゃ、やるか!」
俺はコントローラを握りしめて、画面に集中する。
3・2・1!start!
スタートダッシュは好調だ。
そのまま、進んでいき、アイテムボックスを割る。
俺が一位でリオが二位という状況だ。
三位以降からはすでにだいぶ距離を離している。
「よーし、スピードアップ!」
「あ、Takamoriさん、ずるい!」
「いや、ずるくはないだろ」
リオもスピードアップアイテムを引いていた。
【Takamoriさんのドリフト上手!】
【これで、初見なのかよ】
【実質、Takamoriとリオの対決で草】
同時視聴者数は6万人を超えた。
ただ、高校生二人がレーシングゲームをしているだけの配信に6万人もの視聴者が集まったのである。
俺の持ってる視聴者とリオの持っている視聴者の層が微妙に違ったことも影響しているのだろう。
このゲームは先にコースを3周した人が勝ちというシンプルなものだ。
俺とリオは2周目の後半に突入していた。
「はい、1位!!」
「負けました……」
結果、俺が1位でリオが2位というものだった。
「手汗でコントローラびしょびしょだわ」
「Takamoriさん、どんだけ集中してるんですか!」
「負けたくなかったんだもん!」
「子供か!」
リオと俺の会話はごく自然なものだった。
視聴者たちもそれを見て楽しんでくれているのだと思う。
【Takamori、女の子相手に本気じゃん】
【もう、二人とも付き合えよ】
【二人とも接戦!】
【FPS以外も上手いとか、チートじゃん!】
コメントの勢いは止まる所を知らない。
「Takamoriさん、もう一戦やりましょう」
「望む所ですよ」
俺たちは再びコントローラを握りしめた。
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