第2話 魔法とスキルを得て冒険者となる

森を出て6日目。


遠くに城壁の様なものが見えて来た。

「あれが城塞都市というものか。」

と言いながら門に向かって歩いた。


門で簡単な身元確認されるが、冒険者カードの確認だけで済んだ。


街に入ると多くの人がいた。

開拓村では見かけない様な種族の人や露店や兵士を見かけた。


興味を惹かれながら、冒険者ギルドに向かい中に入る。

結構大きな建物に驚く、中に入るとカウンターと食堂が見えた。


依頼の張り出してある壁を見ながら物色していると、二人組の女性冒険者に声をかけられた。

「見ない顔だけど、どこから来たの1人?」

と。

「ああ今この街に着いたとこだ。開拓村から来たんだ。いい宿知っていれば教えてほいい。」

と答えると、

「宿はウルフのシッポ亭がいいよ。依頼を受けるなら一緒に行かないかい?場所わからないだろ。」

と言われたので、確かにと思いつつ。

「私は構わないが、良いのか?」

と聞くと

「良いわ。オーク退治に行きましょう。」

と言われ一緒に依頼を受けた。




ーー  冒険者としての実力



2人の女性冒険者は、

・アリス〜細身の長身で双剣を扱う

・イデア〜小柄で杖持ち魔法を使う

で、同じ村の出身だそうだ。


この街に来て半年、もう1人か2人のパーティーメンバーを探しているらしい。

そこで新しくこの街に来た者によく声をかけている様だ。


街から出て東に1時間ほど馬車で行くと森に着く。

「ここが東の森、ゴブリン、オーク、コボルト、ウルフの魔物が多くいるわ。」

と説明するアリス。

ゴブリン、オークにコボルトは、ここに来る前に見た小鬼のことだと分かった。そこで

「ウルフというのはコレのことかな?」

と皮を剥いだオオカミの毛皮を見せると

「それは・・ブラックウルだわ。かなり凶暴よ、あんたが倒したの?」

と聞かれ「そうだ」と答えた。


森に入りMAPと気配察知を合わせて使うと、森の地図の中に魔物の位置が表示される。

半径は1kmだ。

「オークの集落があるみたいだ。行ってみるかい。」

と私が言うと。

「え。何故そんなことがわかるの?」

とイデアが聞くので

「気配察知を鍛えると、種類と位置がわかる様になるんだ。」

と答えると

「気配察知のスキルを持っているの珍しいわね」

と言われたので、

「スキルは考えて訓練すれば取得できるだろう。」

と答えると、何を言ってるのと言う顔をされた。


目的の場所に近づき

「あれがそうだ。」

と指差しすると

「本当にオークの集落だ。でもあの数は私たちだけでは無理よ。」

と答えるアリスに頷くイデア。

私は

「それじゃここで見ていてくれ。」

と言い残すとスタスタとオークの集落に歩いて近づいた。


私に気づいたオークの先兵が、声を上げて威嚇する。その声を聞きつけ多くのオークが集まり出す。

私は目の前に多くのオークが集まったのを確認して

「エアー・カッター」

と唱える。

すると私を中心に風の見えない刃が無数に飛び出した。

切り刻まれるオーク。40ほどのオークが倒れる。

私はそれらを収納しながら、集落の奥に歩く。少し大きいオークが数体現れ、剣で斬りかかる。

「雷撃」

と唱える僕の言葉の後に雷鳴が響く。

煙を立ち上らせたオークが倒れるのを収納しさらに奥に向かう。


穴蔵がありそこから一際大きなオークがでて来た。

丸太を手に小枝の様に振り回しながら襲って来た。

身体強化して素早く後ろに回り込み首を手刀で振り抜くとぽろりと首が落ちる。

全てを収納し2人を呼ぶ。


「貴方、魔法使いなの?」

イデアが聞く

「魔法は使えるけど、どちらかというと肉体派かな」

と答えるとさらに

「収納魔法を使えるの?」

と聞かれる。

「ああ訓練してやっとものにしたんだ。」

と答えると

「ええ、訓練で習得できるものなの?」

と驚いていた。


集落の奥の穴蔵には、オークが集めた宝が隠してあった。

・金貨などの貨幣

・剣や槍に鎧など

・宝石や鉱石

それらを回収し街に戻るため馬車を持つ。


森の出口に馬車の乗り場があり、2時間おきに馬車が来る様だ。




             ◇



冒険者ギルド内の買取カウンターで、オークの買取を依頼しながらアリスがオークの集落の殲滅を報告する。


「オークを殲滅したと聞きましたが、どこにあるのですか?」

と尋ねる受付嬢に

「収納しているんだ。数が多いからどの位買取できるんだ。」

と聞くと

「収納?・・一度に解体できる数は30迄です。」

というので

「なら30を出すので買取をお願いするよ。」

と言いつつ裏に回り、解体場でオークを出してゆく。

切り刻まれているが綺麗なオークや少し焦げたオークが最後に一際大きな首を切り落としたオークを出すと。

「これは、オークがジェネラル。これはオークナイト。」

と驚いていた。


計算が済むまで食堂で待つことにした、

「ここのお勧めはなんだい」

とアリスに聞くと

「ここはエールね」

と答えるのでエールを3つ頼み、氷魔法でキンキンに冷やして手渡すと

「冷たいエールは美味しいわ。」

と喜んだ。


「貴方幾つの魔法が使えるの?」

イデアが聞いて来た

「私が今使えるのは、身体強化、水魔法、火魔法、土魔法、風魔法、雷魔法、氷魔法、闇魔法、光魔法、解毒、身体異常回復、気配察知、気配遮断、瞬間移動、治療魔法、看破、鑑定、収納魔法の18くらいかな」

と答えると、固まる様に目を見開いたイデアが

「本当に魔法やスキルは努力で身につくの?」

と聞き返した。

「う〜ん。私は教えてもらったことが無いから、よくはわからないけど大丈夫じゃないかな。」

と答えると

「なら私に魔法を教えて。」

と言われ「いいよ」と答えていた。



買取は結構高額になり、金貨45枚と銀貨50枚それと銅貨30枚を貰ったので、三等分して渡すと。

2人は

「これは何?私たち何もしてないわ。」

というので、

「パーティーでの活動なら、誰がではなくて皆んなでだよ。」

と言い

「宿を教えて、今日は飯を食べてゆっくりしたい。」

と答えると、「分かったついて来て。」とギルドを後にした。




ーー  アリス、イデア side



私はアリス18歳。幼馴染のイデアとパーティーを組んで冒険者をしている。

もう少し稼ぎを増やすために、パーティーメンバーを探している時に1人の若者を見つけた。


彼は静かに依頼を確認していたが、その立ち姿に隙がなかった。私はこの子は出来ると思い声をかけることにしたのだ。


しかしその後は驚きの連続だった。

森に着いた途端

「オークの集落がある」

と言い出しそこに私たちを連れてゆくと、60以上はいるオークに一人歩いて近づくと、殲滅して見せたのだ。


しかもそれを収納魔法で全て収納すると買取額を3人で分けたのだ。

驚き以外なかった。




私はイデア18歳。魔法学校を出た後、幼馴染のアリスと冒険者になった。

魔法は教える者が持つ魔法以外は覚えることができないと言われていた。

そこで冒険者に必要な水と火を習得したが、今日パーティーを組んだ青年は自分で18もの魔法やスキルを習得していた。

私は今までの常識が崩れるのを感じた。思わず「教えて」と言っていた。


しかも彼はその願いを軽く「いいよ」と答えてくれたのだ。




                  ◇



次の日、朝から2人と東の森に来ていた。


アリスには身体強化。イデアには収納と雷撃を教えるためだ。

先ずアリスにエネルギーの塊を見つけてもらう必要がある。

と思っていたらイデアもよく分かっていなかったので2人とも一緒に訓練を始める。


「身体の中にエネルギーの塊があると思うんだが分かるかな?」

と2人に瞑想しながら、身体の中を探す様に言う。

暫くして2人とも「分からない」と答えるので。

「臍の下あたりに熱の塊があると思うがどう。」

と言いながらもう一度瞑想を命じる。するとイデアが

「ああ、分かったこれだ。」

と声を上げる、そのあとアリスも

「確かに。何かあるのがわかるわ。」

と言い出したので、2人に

「それが魔法やスキルのエネルギーだ。それを身体中に広げるか手足に伸ばすように動かしてみて。」

と言うと暫く2人を見ていた。


「熱い。体が熱くなって来た。」

アリスが言うので

「アリス、足に纏わせて飛んでみて。」

と指示する。

アリスは、目を開け膝を曲げると飛び上がった。

そう高さ3m程も。

「ウソこんなに。」

バランスを崩しながらも着地して自分の足を見る。

「これが身体強化なのね。」

と喜んでいた。


するとイデアが、

「手に纏わせたわ。」

と言う。

「手を地面に着いて土を出すイメージを強く持って纏わせたわエネルギーと土を混ぜる様に感じて。」

と言うと、元々魔法の素質があった為か。

「あ。土が手から溢れ出した。土魔法を習得したわ。」

と喜んだ。


それから毎日の様に森に来ては狩りと魔法の訓練を行い、1月後には殆どを身につけることができたが、雷と氷は出来なかった。


多分その出来る理由が理解できない為だろうと思った。


この世界でも「雷撃」は、神の雷と呼ばれており、使える人は存在しないと言われていたのだ。




ーー  新しいパーティーメンバー



2人の訓練が大まか終了したところで、西の森に向かった。

西の森は馬車で2日の行程で、魔物が格段に強いことで有名だ。


・空を飛ぶ魔物はワイバーンを筆頭に5種類ほど。

・地を走る魔物はダイアウルフを始め3種類。

・地を歩く魔物はホブゴブリンなど進化した魔物が5種類。

・木を移動するものはアクネラ等4種類。

等、パーティーで臨まなければ生きて戻れないと言われている。


3人で向かい森の手前に拠点を作る。


森に入る前に、私はイデアにMAPと気配察知の重ねがけによる敵索を指示。

「大丈夫500mまで魔物の反応なし。」

イデアが伝える。

アリスを先頭に進む、すると300mほど進んだところで。

「魔物の反応、5体の・・ホブゴブリン、だと思う。」

とイデアが伝える。


アリスは身体強化を行い飛び出すと、一気に5匹のホブゴブリンを殲滅する。

死体はイデアが覚えたての収納魔法で収納。


先に相手を見つけ先制攻撃で殲滅か回避を選択しながら、パーティーは森を進む。

「ワイバーンが接近!1頭だ頭上に注意。」

私が2人に注意をする。


「え!ワイバーン。」

存在に気づけなかったイデアが狼狽える。

「イデア落ち着いて。下から魔法で翼を狙って!」

とアリスが言うと、落ち着きを取り戻したイデアが。

「ストーン・ニードル」

と唱えてワイバーンの左の翼を狙う。


上手くワイバーンの左翼を傷つけ、低空に下がったワイバーンをアリスが狙う。

近くの樹木の上に登っていたアリスは、ワイバーン目掛けて飛び掛かる。


背にしがみつき手にした剣で左の翼を切り刻むと、ワイバーンは地面に落下。

そこにイデアの土魔法が頭を直撃。

呆気ないほど一方的にワイバーンを倒した2人は、自分らの成果が信じられない顔をしていたが。

「私たちワイバーンを倒したのね。」

とアリスが言うとイデアも頷きながら手をとって喜んでいた。


「戦いはまずまずだが、イデアの索敵が上空を疎かにしていた様だ。以後は注意する事。」

と注意すると素直に

「はい。分かっています。」

と答えた。


その後午後まで狩りをしたところで、拠点に帰る事にした。

その途中で、イデアが

「何かが接近して来ます。・・人と・・・ダイアウルフ5頭です。」

注意する。


私は既に把握していた。そう逃げているのが少女らしい事と、その連れと思われる冒険者パーティーが反対の方向に逃げているのを。


アルスは戦闘の準備をする、イデアも魔法の準備をしている。

目に見える獣道に少女が飛び出した。

すぐ後ろにダイアウルフが迫る。


先頭のダイアウルフが飛び掛かるがそこに雷撃が襲う。

雷撃に怯むダイアウルフと衝撃で転ぶ少女。

アリスが飛び出し、ダイアウルフと少女の間に立つ。イデアの土魔法がダイヤウルフに打ち出される。


磯礫を巧みに避けるダイアウルフ、しかし次の瞬間雷撃に打ち倒される。

一瞬で5頭のダイアウルフが倒され、自分を守る様に立つアリスを見て少女が

「え、何が?・・私・助かったの。」

ホッとしたのか、少女はそこで気を失った。


ダイアウルフを収納し、少女を回収して拠点に戻る。

夕食の準備をしているところで、少女が目を覚ました。

「あのう・・助けてもらって・・ありがとうございます。でも私返せる物を何も持っていなくて・・何でもしますので、街まで連れて帰ってください。」

と言うと頭を地面につけて懇願し始めた。


アリスが少女に近づき、

「そんな心配は不要よ。お腹すいたでしょう、ご飯にしましょう。」

と少女の手を取りテーブルに座らせた。


今晩のご飯は、街で人気店のシチューと柔らかいパンに肉の串だ。

「こんなご馳走・・私も食べていいんですか?」

おずおずと聞く少女にイデアがニコリと笑い

「お代わりもあるからどうぞ。」

と言うと少しずつ食べ始めた少女、途中からは夢中に食べていた。


彼女は、ポーターとして冒険者パーティーに雇われてついて来た様だ。

あのダイアウルフの群れに追われ、パーティーから囮として捨てられた様だ。

これは完全な犯罪と言える、多分あのパーティーは彼女が死んでいると思っているだろう。


彼女の生い立ちを聞いていた2人が私に、

「あの子をパーティーに入れることはできませんか。」

と聞いて来た

「君らとあの子がいいなら私に嫌はないよ。」

と答えると嬉しそうにテントに戻って行った2人を見て、ほっこりした気分になった。


新しいパーティーメンバーが加わった瞬間だ。

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