第28話
俺はエステル・アリシアとパーティーを組んで、城の近くにある裏ダンジョンに向かった。
裏ダンジョンはゲームをクリアして2週目にならなければ入ることが出来ない。
入ろうとすると、パーティーに止められてはいることが出来ないのだ。
だが、普通に入ることが出来た。
最後まで攻略するのは無理だが、途中までなら問題無く進める。
俺達は裏ダンジョンに入った。
「この場所はあまりにも危険で誰一人として入ろうとはしませんわ」
「そうか、なら宝がたくさんありそうだな」
このダンジョンは50階まであり、1階にはレベル1の魔物しか出ないが魔物の数が多い。
そしてダンジョンのほとんどが迷路になっており迷いやすいのだ。
早速、ゴブリン4体、オーク2体が襲い掛かって来る。
アリシアが走って魔物を瞬殺した。
「終わったにゃあ」
「ありがとう、でもこのダンジョンは先が長いからペースを落としていこう」
俺とアリシアは交代で見張りをしつつ、何日もかけて奥に進んだ。
物資の関係からストレージのスキルも必須なのだ。
低階層は苦戦する事無く順調に進んだ。
【ダンジョン5階】
「魔物が多いにゃあ」
「そうだな」
13体のゴブリンと闘う。
俺が先頭に立ち、魔物を引きつけつつ、近づいたゴブリンをメイスで倒す。
後ろからアリシアが攻撃して数を減らし、エステルはその後ろで見ていた。
俺とアリシアは武器で魔物を倒していく。
魔物が弱いため、苦戦する事は無い。
MPを使いすぎないようにメイスで魔物を倒すが、死ぬ気がしない。
パーティー戦をする事を想定していなかった為すばやさが無い自分の能力値を弱いと思っていたが、すばやさの才能値を上げ、俺が前に出て戦うならタンク役としては悪くないと思えるようになっていた。
倒しきれない敵はアリシアが倒してくれるし、回復はエステルがやってくれる。
更にアタッカーのクレアが加わればバランスの良いパーティーになるのかもしれない。
パーティーを組んで戦うのはいいものだな。
俺は楽しくなっていた。
俺達は先に進む。
「また宝箱にゃあ!」
「すぐに回収する。ポーション15本だ」
宝箱の中身は質が高く、宝箱を空ける度皆のテンションが上がる。
【ダンジョン15階】
「エステル、大丈夫か?」
「……大丈夫、ですわ」
エステルにに疲れが見え始めた。
エステルのレベルは上がり、体力は上昇している。
でも、無理をさせ過ぎたかもしれない。
俺は、楽しいと思っていたけど、レベル差やら色々考えが足りていなかったか。
俺は、舞い上がっていた。
「エステル、無理をさせ過ぎてしまった。一旦帰ろう」
「大丈夫ですわ」
「いや、でも」
「大丈夫ですわ!わたくしは成長していますわ。今は試練の時ですのよ」
試練の時って、疲れているって言っているようなものじゃないか。
余裕のある状態で使うヒールより、MPが無くなりかけ、苦しい状態で使うヒールの方がLVが上がりやすい。
でも、ここで帰るとエステルは俺達に気を使ってしまうだろう。
俺とアリシアは余裕で魔物を倒せるが、エステルは回復魔法がメインの為戦闘力は高くない。
それと、宝箱がいくら出てもみんな喜ばなくなってきた。
宝箱にみんなが慣れてきたのだ。
それだけたくさんの宝箱を開けて進んだ。
【ダンジョン23階】
アリシアにも疲れが見え始めた。
宝をどんどん手に入れ、お金も貯まっていく。
だが、皆の元気は無くなっていく。
「アリシア、疲れたよな?」
「大丈夫にゃあ」
皆我慢強い。
皆に聞くのは良くないか。
もう少し進んだら、俺の判断で帰還する事にしよう。
宝箱を何度も空ける。
もう、10年以上前にプレーしたゲームなので、どこに何が入っているか覚えていない。
だがいいのだ!
全部取る!
『治癒士の首輪を手に入れました』
この宝箱にあるのはエステル用の好感度アップ装備だ。
「ただの首輪に見えますわ」
「強いけど俺が取ったから、エステルが装備すると俺への好感度が上がってしまう。でも、装備の性能は強いはずだ」
「分かりましたわ。装備しますわね……服を脱がないと駄目ですわね」
「す、すまない。後にしよう」
ゲームではそういう設定は無かった。
色々細かい所を俺は分かっていないようだ。
「分かりましたわ。それより、一旦休憩にしたいですわ」
エステルが休憩を求めることが増えてきた。
エステルの限界は近い。
皆には念を押しておこう。
「俺も疲れてきた。頃合いを見て一旦ダンジョンから出よう」
疲れていないがそう言っておく。
魔物には対応できるけど、ダンジョンの中に長時間いるのは精神をすり減らす。
小さい頃から戦闘訓練を積み重ね、その後はダンジョンに通う生活をしていた俺の感覚は多分普通とずれている。
エステルに聞いてもアリシアに聞いても大丈夫と言う答えしか返ってこないけど、2人とも大丈夫じゃないだろう。
【28階】
と、言いつつここまで来てしまった。
30階に上ればセーフゾーンがあるのだ。
それは覚えている。
降りるより上った方が楽だと思ったのだ。
俺は進みながら宝箱を開ける。
『戦士の首輪を手に入れました』
クレア用の好感度アップ装備ゲットだけど、パーティーに居ないんだよな。
「このダンジョンは、30階まで到達出来ればセーフゾーンがある、はずだ。もしセーフゾーンが無ければ帰ろう。セーフゾーンがあればしばらくそこで休息しよう」
「分かったにゃあ」
「分かり、ましたわ」
少し、無理をしすぎたのかもしれない。
2人とも、特にエステルが疲れている。
疲れていなくて元気なのは俺だけか。
小さい頃から体だけは丈夫だったのだ。
HPと物理防御の才能はSSだからな。
のろまでも体は丈夫か。
【ダンジョン30階】
俺は最短距離でセーフゾーンを目指した。
セーフゾーンにたどり着くと、そこにはグラウンド1つ分程度の整備された農園があり、中心部に家があった。
ゲームと同じだ。
「ここは、優しいゴーレムがセーフゾーンを管理している」
「ヨウコソ、ユックリ、ヤスンデイッテクダサイ」
クワを持ったゴーレムが話しかけてくる。
「凄いですわ!ここだけは楽園のようですわね!」
「川があるにゃあ!」
「水浴びをしたいですわ」
アリシアとエステルははしゃいで川に向かって行く。
「ゴーレム」
ゴーレムを呼ぶと俺に振り返る。
「ナンデショウ?」
「フルーツを食べたい。その後は食事も欲しい。その後は風呂だ」
「ワカリマシタ」
ゴーレムはフルーツを取りに向かうが、不思議と喜んでいるように感じる。
家の前にある喫茶店のテラス席のような椅子に腰かけて待つと、ゴーレムがカットしたフルーツを持って来た。
「ありがとう」
「ドウイタシマシテ」
水浴びを終えたエステルとアリシアが戻って来る。
「フルーツかにゃ?」
「ゴーレムに頼んだら貰えた。食事と風呂の用意も頼んである」
「不思議ですわ。人でもゴーレムを作ることは出来ますが、人の気配はありませんの。ゴーレムの修理はどうしているのでしょう?」
このダンジョンは昔発展した錬金文明の名残だ。
だからアイテムの性能も高いし、ゴーレムは自動修理システムが働いて未だにオートで動き続けている。
「昔発展した錬金文明があった、という説があるけど、詳しくは知らないんだ」
「昔の人がゴーレムを作ったのかにゃ?」
「錬金文明が本当ならそうだろうな。所で提案がある。しばらくここでゆっくりしないか?」
「賛成ですわ!」
「そうするにゃあ!」
こうして俺達は休息を取ることにした。
気づいた事がある。
みんなの装備はダンジョンで整っていくけど、俺用の装備が無い。
お金が貯まってきたから父さんに、装備を作って貰おうかな?
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