第2話
俺は、ゲームのモブだ。
18才になればダストの数合わせパーティーに加入して街を目指すけど、俺が弱すぎて今後死ぬかもしれないという理由でパーティーから抜ける事になる。
そして村に帰った俺は盗賊に殺され、主人公が盗賊と闘う事になる。
俺はゲーム最初のイベントで死ぬやられ役なのだ。
しかもその事件によって他の村人にも犠牲者が出る。
村のみんなは親切で俺にとって心地が良い。
おおらかで細かい所を色々言ってこない所もいい。
ダストは嫌いだけど、村のみんなは好きだ。
ダスト以外は死なせたくない。
このままでは俺も、他の人も死ぬ。
それにダストが村人を助けるとは思えない。
俺は変わる必要がある。
俺は強くなる必要がある。
ステータスを開いた。
ゲット 人族 男
レベル: 1
HP: 10 SS
MP: 2 G
物理攻撃: 4 E
物理防御:10 SS
魔法攻撃:10 SS
魔法防御: 2 G
すばやさ: 2 G
固有スキル:無し
スキル:『メイスLV1』『盾LV1』『子供LV7』
武器 無し
防具 布の服:10 木の靴:10
……弱い。
能力値の右にあるアルファベットは才能値だ。
SS~Gまであり、SSは最高ランクだ。
才能があるほど能力値が高くなる。
まず魔法攻撃の才能がSSなのに、MPの才能はGで魔法攻撃が使えない。
それ以前に初級の攻撃魔法すら覚えていない。
そしてすばやさの才能がGなのが致命的だ。
動きが遅いと敵に攻撃を当てられないし避けることも出来ない。
才能値が高いのはしぶとさ関連だけで、完全なるターゲットを分散させる肉壁要因だ。
固有スキルは15才になり洗礼を受けないと授かることが出来ない。
5才の俺にはまだまだ先の話になる。
そして子供LV7は完全なバッドスキルだ。
LV7だと70%能力値が減少する。
年齢を重ねていくにつれ子供LVは下がっていく。
子供LV4なら40%、子供LV1なら10%すべての能力が減少する。
15才くらいまで成長すれば子供レベルは無くなり、バッドステータスは無くなるようだが、そこまでが長い。
今の俺は体が出来上がっていない魔法も物理も出来ない木偶だ。
それだけじゃない。
俺の攻撃モーションにも問題がある。
メイスの攻撃モーションがもっさりしていて、攻撃するとバランスを崩す。
試しに小さなメイスを振ってみたけどメイスをうまく振れなかった。
そしてゲームと同じで転びそうになってバランスを崩す動きのおかげで攻撃モーションがよわすぎる。
魔法も駄目だ。
まずMPが低い。
ファイアを使うとうまく制御できず自分もダメージを受けていた。
メイスも魔法攻撃も駄目、今鍛えるなら……体作りだろう。
魔法はMPが低すぎて、覚えても使う事すら出来ない。
魔法は後に回して体作りをする。
俺は帰ってすぐに父さんと母さんに相談した。
「ねえ、メイスをもっとうまく振るにはどうすればいいかな」
「急にどうしたの?」
「もっと強くなりたい」
「まだ子供なんだから強くならなくてもいいのよ」
「でも、強くなりたい」
今まで黙っていた父さんが話しだす。
「ダストより強くなりたいか?」
父さんは、ダストと僕の関係を知っている。
「うん」
正確には18才の死亡イベントまでに力をつけておきたい考えもある。
でも、余計な事は言わない。
「分かった。メイスの振り方を教えよう」
「まだ早いと思うわ」
「教えるのはメイスと盾の使い方だけだ。1日30分で終わる。子供はこのくらい元気がある方がいいだろう」
この村で子供の喧嘩はある程度放置される。
子供の喧嘩に親が介入しても子供が成長しない、そういう文化があるのだ。
「あなたがそういうなら」と言って母さんも納得する。
その日から俺は父さんにメイスの振り方を習った。
「ゲット、もう終わりか?まだ半分も経っていないぞ?」
父さんが腕を組んで俺を見る。
俺は、地面に倒れて大きく呼吸をした。
最初はこんなにきついと思わなかった。
30分だけだと思っていたんだ。
でも、きつい。
最初は『メイスと盾の使い方を教えるだけだ』と言っていた父さんの指導にも熱が入り、息が上がり苦しくなるまでメイスを振った。
右腕に円盾を装備し、左手にメイスを持って振るけど、メイスが重い。
『毎日たった5分の筋トレでOK』とかあるじゃん。
その5分がきつくて筋トレをやらない人が多数派なわけですよ。
子供で太っている俺には30分の訓練すらきつい。
左手でメイスを振れなくなると、今度は何度も父さんが色んな武器で僕を攻撃して円盾の使い方を指南してくる。
「もっと盾を上げろ!」
「もっとコンパクトに構えろ!」
「顔を隠すな!自分の視線を塞ぐのは逆に危ない」
木の武器で何度も何度も攻撃してきて防ぐだけで5分も持たずに地面に倒れる。
慣れない動きと運動不足で息が上がり、頭がぼーっとしてくる。
「きついよ。はあ、はあ、痩せ、痩せれば、はあ、はあ、もっと、動けるかな?」
「ふむ、痩せるか。ゲットは武器の使い方以前に足さばきが悪い。何度もバランスを崩して転びそうになっている。足さばきを最初に訓練しないか?そうすれば自然と体重も減っていくだろう」
「そう、しようよ」
俺は武器を使う以前に自分の体をうまく使えていないようだ。
痩せて、訓練を続ければ攻撃モーションを改善できるかもしれない。
休憩が終わると、父さんが炭で石畳の道に印をつけていく。
「こんなもんか。この炭の印を踏むように動いてくれ」
「分かったよ」
5分後
俺は地面に寝転がって大きく呼吸をしていた。
何度も前を向いたり横を向いたりしてステップを踏むけど何度も転んで血が出た。
そして血が気にならないほど息が苦しい。
「……限界か。明日からは少し時間を減らそう」
「はあ、はあ、今日は、ありがとう」
父さんが目を見開いて僕を見た。
お礼を言ったから驚いたんだろう。
本当のゲットはもっと無邪気で子供だ。
でも、お礼くらい言ってもいいよな?
【ダスト視点】
俺は日本からゲームの主人公に転生した。
糞な現実世界よりゲームの世界の方がいい!
ここは文明は遅れているが、女がいい。
みんな若くて見た目もいい。
何度ヤッテやりたいと思ったか数えきれないくらいだぜ。
だが我慢だ。
ゲームをクリアした俺は知っている。アリシアは元の世界じゃありえないほど美人になるってな。
それを頂く。
そして他のキャラも美人揃いだ。
全部頂く。
子供としてふるまって後10年以上辛抱する必要はある。
だがそうすればみんなとヤレる。
俺は15才で勇者になって、18才で勇者として旅立つ。
旅立ちさえすりゃ、ゲームのストーリーでヤッテいる事を匂わせる発言が端々に出てくる。
子供も遊べるゲームだったからそういう部分はカットしてるが、大人の俺はその細かな描写を見逃さない。
18才になり、旅立つだけで美人になったアリシアが手に入る。
なんせ俺は勇者の固有スキルを手に入れるんだ。
そしてストーリー通りキーアイテムの『ざまあチケット』も持っている。
才能もキーアイテムも全部持っている。
それまではおとなしくしといてやる。
しかし、この世界にも悪い部分はある。
娯楽が無い事だ。
暇を潰すおもちゃが無い。
娯楽さえない。
仕方がない、またゲットをいじめて遊ぼう。
アリシアが居なくなったら何度も川に突き落とそう。
何度も気の棒で叩いてやる。
何度も投げ飛ばして遊ぶ。
あのデブが怯える顔は楽しくてしょうがない。
仕方ねえよなあ。
俺は勇者でこの国を救うんだ。
この俺の退屈を紛らわすためにあいつはいるんだ。
どうせあいつは18才で死ぬ。
それまであいつをいじめて時間を潰そう。
周りを見渡すとガキが紙飛行機を壊して落ち込んでやがる。
しゃーねえな、新しいのを作ってやるか。
この世界には飛行機も紙飛行機もない。
知識チートでガキをみんな手下にしてやる。
アリシアにだけは嫌われないように、時間を潰すだけだ。
ま、他のモブ女は大きくなったら俺が抱いてやってもいい。
しかし、18才になるまでなげえよな。
俺はガキの元に歩いて行った。
俺はガキに紙飛行機を作ってやった後、部下を引き連れてゲットの家に向かった。
……あいつ何で訓練してんだ?
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