episode 20『死者』
昨日、夜の駅ビルで、友達そっくりなお化けに出会った。
ほんとうにもう、何から何まで友達に瓜二つだった。それでも声をかけなかったのは、どこかに違和感があったからだろう。夜遅い時刻とか、彼女の家からも職場からも遠い路線だったこととか。それはつまり、外見上はまったく見分けがつかなかったということでもある。
そもそも、わたしたちはどうやって友達によく似たお化けの群れから、友達を選り分けているのだろう――?
そして今日。夜更けのオフィス街にて。ガラス張りの高層ビルをわたしは見上げている。上層階のホールに亡くなった人たちが集っている。
霊で溢れそうな建物に、わたしは吸い寄せられていく。
友達にそっくりな「何か」に出会ってしまったからだろうか。
昨日までわたしは、亡くなった人たちのことなんて、全然考えていなかった。霊的な世界に関心が薄い方だったと思う。友達にそっくりな姿をした存在は、わたしの死生観を揺るがしてしまったのか。
あれはよく似た姿をしているだけで、わたしの友達ではないというのに――。
あれはきっと、さまよう霊魂が、わたしのよく知った形をとって現われたものに過ぎない。
もう一度、建物を見上げる。見知った顔など一つもないというのに、それでも尚、わたしは死者たちから目を逸らすことができなかった。
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