第6話

そんな私を見て、彼は笑ったまま隣に座って

「鮫島さん、幾つですか?」

突然聞かれて、思わず声を詰まらせると

「こうして話していると、年上って感じしないですよね」

そう言って私の顔を見つめた。

もっと若かったら、この視線に耐えられたのかもしれない。

10歳以上は年上であろう自分が急に恥ずかしくなり、思わず俯き

「ババアをからかうと、痛いめに遭うからね!」

って、自虐ネタで笑顔を作った。

すると彼は私の肩を掴んで

「自分で自分をババアって言うの、良く無いですよ」

そう言われてしまう。

真剣な彼の視線に、心臓がバクバクと激しく鳴り響き、私は慌てて彼の手を振り払った。

「若い子がオバサンを揶揄うもんじゃないわよ!ほら、さっさと戻りなさい」

と、彼の背中をわざと強く叩いた。

彼は大袈裟に

「痛てぇ!」

と叫ぶと、小さく微笑み

「凹んだ顔より、あんたはそうしてる位がちょうど良いよ」

そう言うと、私の頭をぽんぽんっとやって去って行った。

年甲斐も無く、かなり歳下であろう彼にドキドキさせられた。

……悔しい!

ガキの癖に!とか、歳下の癖に!とか……。

自分の頭の中で、あれこれ彼に心を奪われない為の予防線を必死に張り巡らせる。


怖かった……

今までの自分が塗り替えられてしまいそうで


「歳下のくせに、生意気なんだよ……」

泣き出しそうな自分を誤魔化す為に、私はポツリと遠ざかる彼の背中に呟いた。

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