第12話
「でも正面突破しかないよな……なら」
俺は頭を叩くのではなく、胴体あたりを突いて吹き飛ばすことにした。
振り回すよりは傘が頑張ってくれるかもしれないという判断だ。
「グオッ!?」
ゾンビの防御力は俺の突きよりは高いらしく、突きで倒すことは叶わなかったが少しだけ道が開いた。
「吹っ飛べ!!」
俺はゾンビの群れから脱し、再び逃げ回ることに。
それから五分後、
「もういないな!」
客が全員二階に逃げた事を確認した俺は二階に戻った。
「もう大丈夫そうですか?」
俺は階段そばで待機していた警備員に状況を尋ねた。
「はい、もう客は全員脱出したみたいです。ただ、地下一階で探索者の方が戦闘中です!」
「それは本当ですか!?」
「はい」
「じゃあ呼びに行かないといけないじゃないですか。でも……」
「どうされました?」
ダンジョンの表層である一階にEランクのゾンビが居るということは、その下である地下一階にはより強いモンスターが居る可能性が高い。
仮にそうでなかったとしても、Eランクのゾンビ以外が居た時点で俺はどうにもならない。
「何か武器になりそうなものはありますか?」
だからせめて武器が欲しい。地下一階に一瞬でも滞在できれば大声で呼んで、一階に集まってきたゾンビの群れを武器で強引に突破して帰って来れる。
「これはどうですか?」
警備員が渡してきたのは警棒。金属製であり、ある程度の耐久性と長さを確保できている。
「ありがとうございます、では行ってきます」
そして俺は地下一階へと向かった。
ドンッ!!!!!!
「カハッ……」
地下一階へと降りた瞬間、少女が俺の方へ飛んできて、そのまま壁に叩きつけられた。
「誰?」
「探索者です。全員避難は終わりました、逃げましょう!」
少女を吹き飛ばしたモンスターの見た目はゴブリン。しかし、サイズがおかしい。天井に頭が付きそうなレベルなのだ。
つまり、こいつはゴブリンジェネラルというB級のモンスター。
一般的にレベル40は無いと倒すのは厳しいとされている。
そんな日本上位でしか倒せないようなモンスターをレベル6相当の俺ではどうすることも出来ない。
「駄目。このモンスターには階層を超える力があるから、ここで食い止めないと」
そう言って剣を杖代わりに立ち上がる少女。
「でも、俺たちでは……」
ボロボロの少女とレベル6の男でアレを相手取るのは不可能だ。
「なら逃げなさい、私が食い止めるから」
尻込みしていた俺にそう言った少女はゴブリンジェネラルに向かって行った。
「ぐはあっ!!!」
そして一方的に吹き飛ばされる少女。完全に遊ばれている。
このままでは確実に少女は死ぬ。
そう確信した俺の行動は一つだけだった。
俺は少女に夢中になっているゴブリンジェネラルの背後から接近し、全力で警棒を振り下ろした。
「グオア!!!!!!!!??????」
「うっ!!!」
攻撃を受けたゴブリンジェネラルは苦しみつつも、背後に居た俺に反射的に殴り返してきた。
技術なんてものは一切無い、咄嗟に出たただパンチだったが威力は甚大で、俺は近くにあったガラスケースと共に吹き飛ばされた。
「あれ……?」
見た目的には派手な一撃だったが、思っていたよりもダメージはなかった。
そうか!あいつらに殴られたお陰か!流石はスキルの力だ!
別に痛いのは痛いんですけどね。
けど、どうにか戦えない事はないみたい。
もしかしたら俺が思っているよりも強くなっていたのかも。
「はあああああ!!!!」
俺はゴブリンジェネラルに真正面から突っ込み、警棒で攻撃を仕掛ける。
「グアアア!!!」
明らかに狙いが見え見えだったからか両手でガードされたが、腕に結構なダメージが入っているみたいだ。
「行ける!!!!」
俺はガードをしている腕をへし折る為にガードの上から警棒を何度も叩きつけた。
そして、50回程叩きつけた結果、腕の骨は折れ、完全に使い物にならなくなってしまったようだ。
「グルルアアアアアア!!!」
「ぐはっ!!!」
腕が使えなくなったと思い攻撃を止めた結果、その腕によって殴られた。
まさか、俺の攻撃を受けていたのも遊びだったのか??
「いや、そんなことは無い筈」
ゴブリンジェネラルは両手をぶらんと下げているだけで、そこから動かす気配はない。
最後の力を振り絞って俺を吹き飛ばした形だろう。
ダメージは受けてしまったが、もう防御する腕は無い。後は頭に直接警棒を叩きこむのみ。
だから俺は正面から再び突っ込んだ。
ゴブリンジェネラルは攻撃を防御出来ないからか、焦ったような表情をしている。行ける。
俺は頭に攻撃を当てるために跳躍し、ゴブリンジェネラルの頭に攻撃を叩きこむ体勢になった。
しかしその瞬間、ゴブリンジェネラルの表情は俺を馬鹿にするものに変わり、
「グハッ!?」
散々攻撃を受けてきた腕ではなく、足で蹴り飛ばされた。
威力は今までの腕による攻撃の比ではなく、これまでのダメージの蓄積も込みで一歩も動けない。先程痛みが弱く感じていたのは、単に勝てる事への喜びでアドレナリンが大量に出ていただけだったらしい。
「ギャギャギャギャ」
どうやら、俺の攻撃を両手で必死に防御していたのも、腕しか使ってこなかったのも、焦ったような表情を見せてきたのも、全ては俺を油断させる為の罠だったらしい。
ランクが高いモンスターは頭が良いケースがあるとは知っていたが、ここまで知恵が回ると言うのか。
そして悠々と近づいてきたゴブリンジェネラルは、俺に止めを刺す為に左足を振り上げ、
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