第10話
「痛っ……少し休んでから帰ろう」
ボーナスタイムが過ぎてアドレナリンが切れたからなのか、突然痛みが増してきた。
耐えられない程では無いけど、一旦休憩を取ってから寮に戻った。
「「飛鳥!?!?!?」」
寮に戻った俺は泥だらけになった服を着替えるために自分の部屋に戻ろうとしたら、弥生と健太に見つかって何があったのかと駆け寄られた。
「ちょっと色々あってね」
俺は二人を心配させないように適当に誤魔化した。
「今日は室内トレーニングだったよね?」
「まあね」
「やっぱあいつらか。なんか怪しいなとは思ってたんだ。一旦シメてくるか」
そう言って健太は武器を持ち、何やら物騒な事を仕掛けにいこうとしていた。
「……やめて。本当に良いから」
健太にシメてもらえばスカッとするのは事実だけれど、それよりもトレーニング相手を失いたくないという気持ちが勝った。
いくらスキルの為だとしても、健太と弥生は俺が怪我しないようにペースを抑えるだろうし、そもそも人数の問題であそこまでの効果は見込めない。
というわけであんな容赦ないスピードで攻撃してくれる集団というのは大事にしておきたいのである。次第にダメージとかも減ってくるだろうから安全になるだろうしね。
「何で葛藤したんだ?」
「こっちの話だから気にしないで」
本当に禄でもない理由なので。
「なら良いけどさ」
そう言って無事に武器を収めてくれた。危ない危ない。
「とりあえず夕食でも食べながら今日の成果を教えてよ!」
「勿論!」
夕食の際、クラスメイトに暴行を受けて得たもの以外のスキルの獲得状況を説明した。
それから約2週間。もっと強くなるべくスキルを片っ端から取っていった。
強くなる実感がスキルの獲得という目に見える形で得られて楽しかったけれど、流石に毎日スポーツか武道か筋トレを繰り返す日々にも飽きが来ていた。
いくら実感があったとしても、流石に同じ動きを100回~1000回繰り返す作業はね……
『~♪~♪』
というわけでここ3日はダンスに興じていた。
初級を獲得するために1時間を費やす必要があるが、今までの訓練とは違い常に複雑な動きが求められるから楽しい。
何故なら、ダンスには技毎のスキルだけではなく曲毎にもスキルが存在するのだ。
例としては【グッ〇イ宣言(ダンス)[初級]】や、【ラ〇ィット(ダンス)[初級]】等がある。
基本的に全てが独学となる上、振り付けを見れるのがパソコン室のパソコン位なので見辛かったのがアレだったけど。
今回は気分転換兼スキル獲得が目的だったので色んな曲を1時間ずつ踊るという簡単な物だったけれど、いつか時間がある時に何か高難易度のダンスを習得したいと思う。
「ここまでにしようかな」
最後に【〇っぽいな(ダンス)[初級]】を獲得した所で切り上げて自分の部屋に帰った。
「そろそろダンジョンに潜り始めようかな」
というのも、皆とステータスが並びきる前に魔物との戦闘に慣れておきたいのだ。
一応スキルのお陰で戦闘技術は担保されているのかもしれないけど、命がかかっている以上、念には念を入れておくべきだと思う。
一応ゴブリンやスライムとは戦闘済みだけど、あれは最下級のFランクの中でも最も弱いモンスターだし、一般人でも倒せるレベルなので例外とする。
「大体今の身体能力が常人の2.3倍位だから、レベルで言えば6くらいかな」
となると行くべきは隣町の植物系ダンジョンかな。一応攻撃力が低い代わりに防御力が高めって話だったから今のステータス的にも丁度良いしね。
「なら早速準備を始めよう」
武器や防具は今持っている物で問題ないかな。で、食べ物飲み物はそんな長時間滞在するわけじゃないから要らない。ライトもあそこは年中昼間みたいに明るいらしいから必要無い。
「あそこはバーナーとマスクが必要だったよね」
通常のダンジョンで必要とされる道具が殆ど必要ない代わりに、この2つが必須という話を散々言われた記憶がある。
バーナーは巻き付かれた時の脱出用で、マスクは花粉対策らしい。
ゴブリンとかよりは強いけれど、それでも最下級のダンジョンだから忘れていてもどうにかなるらしいけど、いざという時に相当面倒なことになるとのこと。
「早速買いに行こう」
マスクは持っているけどバーナーは持っていなかったので買いに行くことに。
というわけで辿り着いたのは探索道具専門店ではなく、普通の百貨店。
何故探索道具専門店ではないのかというと、バーナー等の生活必需品にもなる道具は百貨店とかの方が品揃えが豊富だから。
探索道具専門店というものは探索に必要な道具を最低限網羅しているだけなので、脱出用の煙玉や使い捨ての弓矢等を買う際には重宝するが、ダンジョン探索関連以外で使わない物を買う場合以外は普通の店で買った方が良い事が多い。
まあ九割くらいは百貨店に行きたかったからなんですけど。
だってこういう店に行ける機会って殆ど無かったんだもの。孤児院出身にはスーパーが最高級のお店なんだよ。
「とりあえず入ろうか」
外だけで感動している場合では無いんだよ。バーナーを購入するんだよ。
「おお……」
中には見た事が無い店が凄く高そうな商品を並べていた。財布とペットボトルを一本入れたら終わりバッグが数万円って何。ぼったくりじゃないですかね。
結構な人数が居るはずなのにやたら静かだし、少し落ち着いた雰囲気の方々が多い気がする。
そのせいで周囲をきょろきょろしながら感心している俺が若干浮いている気がする。
でも気にしたら負けだ。だって楽しいんだから仕方ないじゃないか!
俺は上京したら周囲をきょろきょろして一人でテンションを上げるし、世界各地の名所に来たら感動のあまり大声を上げるよ。
別に良いじゃないか!ただ感動しているだけなんだから!
おのぼりさん丸出しでみっともないなあって?知るかボケ!そんなこと言ってきたら真っ二つにしてやるからな!
『脳内での暴言語彙が累計100語を突破しました。よってスキル【脳内暴言[初級]】が取得可能になります』
「あっ……」
すいません、反省します。もう暴言は言いません。でもスキルは一応取っておきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます