脱リア充のススメ
霧
第1話 学校のためっていう気持ちが理解できない
学校のため。嗚呼、なんて薄っぺらい偽善に満ちた忌々しい言葉だろう。
口にしただけでも吐き気がする。
僕は学校というものにいい思い出がない。だから母校への愛着なんて、小学校のころから湧かなかった。
通っていた小学校や中学校、地域から有名人が出たと聞いても、誇らしげに語る周囲の気持ちが理解できなかった。オリンピックで日本が勝っても、熱狂する人たちを冷めた視線で見るだけだった。
学校なんて大嫌いだった。特に行事というのは嫌いだ。
体育祭、文化祭、修学旅行、卒業式。陰キャの気持ちお構いなしで盛り上がり、熱狂する。陽キャの陽キャによる陽キャのための祭典。
横目で見るたびに滅びればいいとすら思った。そこに参加することが入試よりも苦痛だった。
周囲が盛り上がるほどに孤独を感じ、テンション高い会話をふられるたびに空気を悪くする。
それなのに。
どうして。
「会長~!」
「かーいちょ!」
「かいちょ~」
どうしてこうなった。
期末考査が終わって、生徒会長を決めるための演説が行われた日。
体育館に集められた、全校生徒。
もちろん僕は立候補なんてしないしする気もないし、推薦してくれる友達もいない。
それなのに。
注目が集まるのは檀上に立つイケてる立候補者でも、その前に熱弁を振るった眼鏡君でもなく、その他大勢の中に交じっている僕。
この前はクラスの陽キャに脅されたばかりなのに。
さらにその前はせっかく仲良くなった祇園さんと疎遠になりかけたのに。
今はこうして、全校生徒が僕の一挙手一投足に注目し、歓声をあげている。
「一言、一言おねがいします~!」
生徒の一人が悪のりして、僕にマイクを突きつけるように拳を向けてくる。
お前誰だよ。
馴れ馴れしいんだよ怖いんだよ、陽キャは距離の詰め方おかしいんだよ。
そう心の中で毒づきながら、思考はあらぬ方向へと向かう。
どうしたら、いいのかな。ねえ、教えてよ……
静音ちゃん。天才にして、○○。
ああ。ここ二か月くらい、本当にいろいろなことがあった。
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