不運にも好きな子の目の前でズボンを下ろされた男、幾人かの女子に目を付けられ
深谷花びら大回転
好きな子の前で……
僕、
『足立君、だよね。頭の上に桜の花びらがついちゃってるよ?』
『――あ』
『ほら、これ』
『あ、ありがとう……ございます』
高校に入学して間もなく、桜も散り際の頃――僕は恋をした。
――――――――――――。
体育の授業5分前、体育館にて。
「昨日シーズン変わったけど、雲晴君はもうやった?」
「うん、やったよ。マップも武器も一新されてて、別ゲー感あったけど、それが逆に新鮮で面白かったよ」
「そうなんだ。私、昨日はできなかったから早くフレさん達とやりたいな」
僕は真心ちゃんとの会話を心から楽しんでいた。ゲーム好き、ジャンルもほぼ同じ、話してて飽きない。
けれど、未だに真心ちゃんと一緒にプレイしたことがなかった。前から誘ってみよう誘ってみようとは思っていたんだけど、思うだけで声をかけられなかった。
だから今日――今日こそは勇気を振り絞って真心ちゃんを誘う。
「ま、真心ちゃん!」
「ん? なに? 雲晴君」
「ききき、聞いてほしいことが――あ、じゃなくてお願い? 頼みたいこと? ――――と、とにかく聞いてほしいことがあるんだッ!」
「え――う、うん……な、なに?」
肩にかかるくらいまで伸びた黒髪のサイドを耳にかけた真心ちゃんは、やや堅い様子。
上目遣いでチラチラとこっちを窺がってくる真心ちゃんに、僕は告げる。
「ぼぼぼ僕とッ! フレンドになってくれませんかッ?」
「……ふ、フレンドって……え、ゲームの話?」
ワンテンポ遅れて反応した真心ちゃんに、俺は頷いて見せる。
すると彼女はホッと胸を撫で下ろし、呆れたような笑みを浮かべる。
「いいよ、一緒にやろ」
「いいいいい――――いいんですかッ⁉」
「全然いいよ……というか、大袈裟すぎだよ」
「ご、ごめん……そんなに大袈裟だったかな?」
「うん。私はてっきり……」
「てっきり、なに?」
「ううん。なんでもない!」
真心ちゃんは首を横に振って誤魔化すように笑った。
『てっきり』の後に続く彼女の言葉はなんだったのか。僕は気になったけど、無理に聞こうとはしなかった。
というより、今の僕にはそんな余裕がない。真心ちゃんの快諾を得られ満たされた心は喜びで一杯一杯。
この程度のことでと思われるかもしれないけれどね。
「――へえええいッ! く、も、は、る――ってうぉわッ⁉」
その時だった。僕の名前を呼ぶ声が後ろから聞こえてきたなと思ったその瞬間には――僕の下半身は涼しくなっていた。
「………………」
視線をやや下に向けた真心ちゃんがお口を両手で押さえて赤面する。
「「「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ」」」
耳を
「―――――ッ!」
そして、真心ちゃんは声を上げることなく僕の前から遠ざかっていった。
「ご、ごめん雲晴……お、俺、こんなことするつもりは、なかったんだ……
友人である
自分の身になにが起きているのか、確認しなくても状況はわかる……上だけ体操着の、下半身丸出し変質者になってしまっていることくらい、確認しなくても……。
「気持ち悪いから早くしまってよそれえッ!」
「ほんと最悪ッ! もうほんとに最悪ッ!」
「死ねよ足立ッ! 勃ってんじゃねーよ〝足勃ち〟ッ!」
クラスの女子から攻撃的な言葉を浴びせられるが、どうしてか僕の心境は穏やかだった。
そうだよね、汚いもんね、一刻も早く隠さないとだよね。
僕はしゃがんで下ろされたズボン及びパンツを戻そうとするが、和也の手がガッチリと固定されてて中々上げられない。
「和也……手、離してくれないか?」
「ごめん……わざとじゃなかったんだよ……くもはるぅ……こんな……ほんとにごめん」
木目調の床に額をつけ、嗚咽交じりの声でそう口にした和也。自席の念に駆られている様子の彼に、僕の言葉は届いていない。
困ったなぁ……これじゃあ隠そうにも隠せないやあ。
天を仰ぐとぼやけた天井の照明が。どうやら僕は泣いているらしい。
勃起ぐらいしちゃうよなぁ……好きな子と会話してたら。
この日を境に――僕の青春は終った。
――――――――――――。
どうも、深谷花びら大回転です。
前にも投稿した事があるこの作品を少し変えてこれがらあげていきたいと思っとりやす。
おなしゃすしゃす
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