第6話 放課後
若菜は5限で早退した。先生には体調が悪いからと説明していたが、本当は推しのコンサートのためだ。彼女は重度のKPOPファンで現地のコンサートや、ファンミなるものに足繁く通っている。
彼女が推しているKPOPグループについて何度も説明してくれるのだが、私にはまだ良さがわからない。しかし、月に1度の頻度で韓国に行く活力を与えてくれる彼女の推しはきっと素敵なのだろう。私も推し活にハマりたいなぁ。
「なぁ!何ぼーっとしようと?!俺のチョコ食ったけ?!」
「うわ、でた」
金山だ。自習するつもりで席にいたが間違えたか・・・・
「なんや!ずっとここにおったろ!それより食った?」
「まだ」
想像していたよりも遥かに高級そうなチョコ、食べられるわけがない。今もそのまま机の中にある。
「あれさ、本当にもらっちゃって良いの?私金山くんに一粒しかチョコあげてないし・・・」
「あれ余ってたヤツやから気にすんな!俺も食いたいから今食お!」
なんだなんだ、余ってたやつ?そんなことある?今食うって一緒に食う気なの?とりあえず机の中からチョコを出した。
「今食うの?」
「あ?当たり前やろ!さっき言ったやん!早く開けんかい!」
なにがなんだかわからないけど、金山にもらったモノだし・・・
「いいよ。でも半分は私のだからね。貰ったし」
「はあ?!がめついな!」
貰った本人の前でラッピングされた包みを開けるのなんか緊張するな。丁寧に開けた方がいいよね。
「ちんたらすんな!はよ開けえ!」
くそ。あんたに気をつかって綺麗に開けようとしたのに。こいつは察する力皆無だな。
包みを軽く破り、中の箱を出した。淡いピンク色の可愛い箱だ。蓋を開けると、いろんな形のチョコが入っている。
「俺これ!!」
金山は大きいトリュフを掴もうとしていた。
「待って!いったん説明見よ!」
箱とチョコを覆う紙の上にあった、それぞれのチョコについて詳しく書いてある紙を見た。
金山が取ろうとしたのは紅茶風味のトリュフ。紅茶の他には、ベーシックなビター味と抹茶の3種類あるようだ。
「ねえ、わたしもその紅茶味のやつがいい」
「はあ?紅茶と他は何があると?」
「チョコと抹茶」
「じゃあチョコがよか!」
「やった!ありがと。」
カリカリのチョコレートにコーティングされた濃厚なガナッシュがもう、濃厚。美味しい。
「めちゃくちゃ美味しい!!」
「バリうまいっちゃけど!!!」
思わず二人で目を合わせた。
「お前マジでチョコ好きやなー、入試の時も食、食べよったやろ?」
「入試?てかなんで?」
「俺、お前の横に座っとったんばってん覚えとらん?」
「んーー、覚えてないな」
「なんでや!覚えとけっちゅうねん!!」
こいつ・・・
「あ、思い出した。消しゴム忘れてたでしょ」
ずっと忘れていたけど、入試の時横に座っていたのは金山だったのか。
試験が始まって30分くらい経ったとき、横の席の男の子がでゴソゴソと筆箱の中を確認したりテスト用紙を裏返したりしていて、カンニングしようとしているのかと思って注目していた。
でも、しばらく経ってもカンニングする気配がないので私の考えすぎかと反省していたら、回答用紙を指で擦り始めた。そういうことか・・・
私は見かねて消しゴムを机の真ん中のほうへスーッと置いた。すぐに消しゴムに気付いて、ゴシゴシと何箇所も消していたような気がする。
「そういえば、あの時HORNくれたよね」
試験が終わった後、「ん!」と押し付けるようにHORNを投げ渡し、大股で返っていった。
「やっと思い出したけ!俺はずっと覚えちょったちゃ」
「そうなの?そんなに気にしなくていいのに。あれ、消しゴム返してもらったっけ?」
「返しとらん」
「やっぱり!なんか無いなと思ってたんだよね」
「返したいっちゃけど・・・」
「え?もういいよ。消しゴムあるし」
「返させろって言っとーやろ!!!」
「わかったわかった。じゃあ消しやすいやつがいいな」
「知らん!一緒に選ばんかい!!」
「ん?」
「明日!土曜日!12時!飯食うなよ!」
「一緒に来て欲しいの?」
「しゃあしか!・・・用事あると?」
「用事はないけど・・・」
「イヤと?」
「うーん、じゃあいいよ」
「ほんま?!じゃあ明日12時ね!」
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