第4話 波乱の教室

 翌日、沙穂と共に学校へ向かう。寮から学校までは歩いて15分。始業のギリギリに間に合えばいいので8時過ぎに出発した。

学校へ向かう途中のコンビニでお茶とお菓子を買うのが日課になっている。昨日金山に奪われたのは、この時買ったチョコだ。

 沙穂は小さいグミがたくさん入っているお菓子を買っていた。私もいつも買っているチョコのお菓子を買った。もちろんHORNは買わない。

そのまま学校へ向かう。

「かなみ、金山くんと何かあったら呼んでね!助けに行くから!」

沙穂は、優しい。教室がある階数も違うし、自分だって色々あるはずなのに・・・。

「ありがとう!頑張る!、でも、ほんとにヤバかったら沙穂のとこに逃げようかな。」

「うん!ヤバくなくてもきて!」

と笑い合い沙穂と別れ、自分の教室へ入った。金山はもうきていて、私に気づくと嬉しそうに

「やっときたか!菓子持ってきてやったぞ!」

と叫んだ。

”HORN”、”HORN”と言っていたから警戒していたのに「明日お菓子あげる」と言うのを覚えていてちゃんと守ってくれたのか。私も約束を守ってあげれば良かった・・・。


「えーーー!意外!かなみって金山くんに貢がせてるのぉ〜?」


甲高い声が響く。ゆりえだ。書き忘れていたが彼女はかなり陰湿で性格が悪い。若菜に毎日悪口を言わせるだけのことはある。


「いや、私が昨日お菓子あげたから、お返しに今日買ってきてくれたんだよ。」


本当は会話などしたくないが、無視をしたら角が立つので一応説明をする。


「え〜〜?別にお返しもらう必要なくな〜い?恐〜」


恐いのはあんただよ。なんで急につっかかってくるんだ。


「そうだね。金山くんに申し訳ないし、あのお菓子受け取れないや。」


ゆりえが歪んだ顔で口を開こうとしたので、強引に話を切り上げ席へ向かう。朝から最悪の気分だ。

彼女は巧妙に他人の評価を落としていくので、最初の頃は慕われていたが被害者が増え、本性があらわになってからは孤立気味である。やり口が汚いのは親が政治家であることの影響かもしれない。


席に着くと、金山も異変に気づいたのか珍しく小声で

「どうしたと?俺のせいけ?」


と眉を顰めていた。彼はなにも悪くないので気にする必要はない。


「ううん、大丈夫。お菓子持ってきてることが気に食わなかったみたい。」


まだ気分は最悪だが悟られないように笑顔を作った。


「ね〜〜、金山くん。かなみにチョコせびられたの〜?可哀想〜」


席までついてきたようだ。気配を消していたのか、妖怪みたいだ。


「うん、ごめんね。お菓子は自分で食べな。ゆりえも席に戻ったら?」

私は金山くんに謝る。100円ちょっとのお菓子で大騒ぎされるのはたまらない。


「え〜〜、こわ〜〜い!怒ってるの?私金山くんと話してるんだけど。」

妖怪め。票集めのつもりなのか。気色悪い選挙演説なら自分の取り巻きの前でやれよ。

普段なら言わないような台詞が口をついて出ようとした。が、


「俺が好きでやっとるんじゃ!」

金山が爆発したように叫んだ。


「え?好きで駄々っ子やってたってこと?」

状況が理解できなくて、思わず聞いた。


金山は耳まで真っ赤にして「そうや!悪いか!文句あるか!」とボソボソ呟いている。


「えええ!金山くんかなみのこと好きなの?!やばー!!もしかして私のせい?」

ゆりえはまだまだ首を突っ込む覚悟があるようだ。


「そう言うわけじゃないんじゃない?流石に無神経だよ。」

ゆりえのキンキンした声に苛立つ。彼女に言う必要はないし、どちらでも構わないではないか。

それに、この状況をこれ以上ゆりえにかき回されることは避けたい、絶対に嫌だ。


「うるせーーーー!お前に関係無いっちゃ!帰れ!!」

金山がキレた。

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