リミデットタイム

松丸冬

プロローグ

『はぁはぁ』

真夜中に病院の非常階段を駆け上がる音が響く、重たい屋上の扉を開けて外に出ると、夜の屋上の風は冷たくて強く、軽く体制を崩した。

『おとなしく諦めたらどう?』

屋上の隅から声が聞こえた、声が聞こえた所を見るが、暗くて姿が良く見えなかったが、直ぐに雲の切れ間から月明かりで照らされて、その姿が露になる、そこには綺麗な白髪の少女が立っていた。

見た目からまだ高校生くらいだろう。

『俺に何の用だ、何が目的だ』

男が怯えた声を上げて少女を睨みつけるが、少女はその声を無視して少しずつ距離を詰めて、近づいて来く。

『あの偽善者はどこにいるの?』

少女がそう男に聞きながら、小さな声で何かブツブツと何かを唱え始めると、どこからか少女よりも大きい紫色の鎌が出現した、月の光が鎌の刃に反射して鈍い光を放つ。

『それで俺を殺すつもりか‥‥?』

男が後ずさりながら腰に潜ませていた拳銃を取ろうとする。

『私の質問に答えてくれたら命だけは助けてあげる』

少女がそう言うと、あと数歩の所まで迫って行くその瞬間、男が拳銃を取り出し少女目掛けて発砲した、だが、すぐ目の前にいたはずの少女が瞬く間にその場所からいなくなっていた。

『はっ!?』

男が腑の抜けた声が出た瞬間に男の後ろから声が聞こえる

『残念ね』

後ろから少女の声が聞こえた途端に、腹部の辺りから生暖かい感覚がした。

男が自分の腹部を見た瞬間に激痛が走る、背中から大きい刃物が腹部を貫通していたのだ。

『うぁぁぁぁ』

男の断末魔の様な叫びが真夜中の病院の屋上に鳴り響くと、鎌が腹部を貫いたまま男が蹲り少女に質問をする。

『なっなぜ‥い‥いつのまに後ろ‥に?』

少女は冷たい眼差しを向けて言い放つ

『これから死ぬあなたに答える必要ある?』

次の瞬間、鎌を引き抜き男の首を跳ねた、切り飛ばした頭部は放物線を描いた後、床にゴロンと転がり血だまりが出来る。

鎌を天に掲げて鎌を持った少女が何か呪文を唱えると、男の遺体から緑色の光の球体が出てきて鎌の中に吸収されていった。

『待っててね、絶対に仇は取るから‥‥』

少女は、ぽつりとそう呟くと、夜の闇に姿が消えていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る