本当の彼女

第1話

「君の見ている彼女は本物かい？」

　友達がそんなことを言う。

「怖いことを言うなよ。姿形に声、仕草。どれをとっても彼女は彼女だよ」

「でもそれはお前の中にある彼女だったりする」

「俺の中にある彼女？」

「そう。彼女はお前の前で屁をこくか？　ゲップはするか？」

「しない」

「人間だったら誰でもすることをお前の彼女はしない。それはお前の彼女であろうとするための努力だ。お前の中にある私を守るための努力だ。そんな努力をしている彼女は本物なのだろうか？」

　その問いかけに答えることができない。

「本物の彼女は彼女の内側に居る。早く本物の彼女と会えると良いな」

「他人事だな」

「他人事だもの。まあ本性を晒した時に驚くなよ。女は誰でも女優だって驚くから」

「また怖いことを言う」

　そんな言葉をくれた彼はバツイチ。だからよりその言葉が怖い。

「まあ経験者の言葉として胸にしまっておいてくれ」

「ありがた迷惑な贈り物だな」

「贈り物だぞ。喜べよ」

「喜べるかい！」

　もしもの時はこいつに愚痴って100倍にして返してやろうと思う。それぐらいは許されるだろう。