第39話 テイム・モンスター大会(6)

「ブヒブヒブヒー!!!(キラーン)」

「どんどん攻撃しちゃってください!(キラーン)」

「オズ様、何か作戦は無いのですか?」

「今、考えてる。とにかく避けてくれ」


 アウストヴァリリアが、天使エンジェルだと正体を明かしてからは、ハムは攻撃を防ぐことしかできていない。

 相手が天使エンジェルである以上は、一撃が命取りとなるので、無理に攻撃が出来ない。

 オズは、ひたすらに対策を考えている。


「考えろ。何か策があるはずだ」


 相手は天使エンジェルだ。

 恐らく魔法は光属性のみしか使えない。

 しかし、厄介なのが天使エンジェル特有の自然回復だ。

 何度、深い攻撃を与えてもすぐに回復する。


「この間にも、ハムの体力は削られていく。そう長くは持たないだろうな」


 アウストヴァリリアは、自然回復がある為、体力に限界は無いに等しい。

 しかし、ハムはオズと修行をしたとはいえ、超大型モンスターなので、体力の消費は早い。


「オズ様、私、体力がそろそろ……」

「待てよ、ハムの体力が無くなる、か」


 オズは、体力という言葉に何か引っかかったようだ。


「これだ!」

「待ってました!」

「君のモンスターは、体力の限界だよ。それで何ができるのですか?(キラーン)」


 ハムの体力は、もう限界に近い。

 ダリアは、そんなハムを見て、自分の勝ちを確信しているようだ。

 しかし、オズ目には闘志が見られた。

 それどころか、このピンチの場面で笑っているのだ。


「ハム、フィールド内に最大限の障壁バリアを張れ!」

「わ、分かりました」

「一体何をする気なのだい? もう、僕の勝ちは決まった様なものだろ?(キラーン)」


 ハムは、オズに言われるがままに障壁バリアを張った。

 障壁バリアを張るということは、観客に被害が及ぶ可能性があるということである。

 体力の無いハムに、それほどの攻撃ができるはずが無いと確信しているダリアは、オズが何をしようとしているのか予想できていない。


「まあいいでしょう。次で決めなさい!(キラーン)」

「ブヒ!(キラーン)」


 ダリアは、次の攻撃で倒しにいくようで、アウストヴァリリアの周りにはもの凄い光属性のオーラが見られる。


「ハム、こっちも次で決めるぞ!」

「何をするのですか?」

創造と破壊リスタートだ」

「なるほど。それなら今の体力でも使えますね!」


 なんとオズが考えた策は、ハムの最終奥義である創造と破壊リスタートを使うことであった。

 創造と破壊リスタートは球の様なものを放ち、それに繋がっているものを種族、強さ、自然のものなど全ての形あるものならば関係なく効果がある。

 その効果は、1度全てを消滅させ、その後に再び新しく作り直すという魔法だ。

 これならば、天使エンジェルであるアウストヴァリリアも一撃で倒せる。


「ブヒブヒー!!!」

「ヴァァー!!!」


 ガタガタガタガタ!!!


 アウストヴァリリアの突進とハムが放った創造と破壊リスタートがぶつかり合い、地面が激しく揺れる。


 アウストヴァリリアは、創造と破壊リスタートを跳ね返そうとしている。

 アウストヴァリリアは天使エンジェルである為、球に飲み込まれないと倒しきれないようだ。


「このままだと、跳ね返して僕の勝ちだ!(キラーン)」

「このままだったらな」

「どういうことだい?(ハテナ)」

「見てたらわかる。ハム、もう1発だ」

「これ以上だと、この星が危ないですよ!」

「そこは、僕に任せろ」

「分かりました……」


 すると、ハムは創造と破壊リスタートをもう1発放った。


「まだまだいけますよ!(キラーン)」

「ブヒブヒー!!!(キラーン)」


 アウストヴァリリアは、まだ跳ね返す余裕があるようだ。

 すると、すかさずオズがハムに命令する。


「……」

「り、了解致しました」


 シュン!


「なに!? 瞬間移動テレポートだと!?」


 なんと、ハムはアウストヴァリリアの後ろに回り込み、無防備な状態のところを攻撃したのだ。


「勝負ありだな」


 ヒューン


「……」


 背後からの攻撃によって、アウストヴァリリアは力が弱まり、創造と破壊リスタートに飲み込まれてしまい、跡形もなく消えた。

 運良く空中で攻撃が当たった為、オズが周りを魔法で空気を無くし、触れるものを無くすことができた。

 それによって、他の被害は1つもなかった。


「アウストヴァリリアァァァ!!!」


 ダリアは、大声で泣き叫んだ。

 消え去ったものは1つであったが、それはもの凄く大きなものだった。


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