第40話 テイム・モンスター大会(7)

「アウストヴァリリアァァァ!!!」


 ダリアは、愛していたテイム・モンスターが、ハムの創造と破壊リスタートによって跡形もなく消えたことに、かなりの精神的ダメージがあるようだ。

 その為、(キラーン)などが一切見えなくなってしまっている。


「あいつ、相手のテイム・モンスターを消し去りやがったぞ」

「いくら勝つためとはいっても、ありえないわ」

「ダリア、かわいそうだねぇ」

「オズ、どうしてそこまでしたの?」


 ほとんどの観客は、オズの勝ち方に非難の声を上げている。

 この大会のルール上では、モンスターを完全に破壊することは禁止されていない。

 しかし、暗黙の了解として、瀕死状態までで終わらせるというのがある。

 それを破った為、オズに非難の声が上がってしまったのだ。

 しかしオズは、少しも悪いと思っておらず、いつも通りの立ち振る舞いをしている。


「僕の、可愛い、アウストヴァリリア」

「まさか天使エンジェルだとはな。かなり苦戦したよ」

「君は、これに何とも思わないのかい⁉」


 オズが、何もなかったかのようにダリアに話しかけると、ダリアはオズに対して怒りの声を上げた。


「これって、何のことだ?」

「アウストヴァリリアのことだよ! 君が消滅さしたんだろ⁉ 返してくれよ!」


 オズは、何のことか全くわからないかのようにダリアに尋ねる。

 すると、ダリアは我慢ができなくなり、オズの胸倉をつかんで泣きながら訴えた。

 観客は、静かに2人を見守る。


「消滅はしたけど、また会えるぞ?」

「僕のことをバカにしているのか⁉ いい加減にしろ!」


 オズは、平然とした顔でダリアに言う。

 しかし、ダリアはそんなことは信じるはずもなく、さらに怒らせてしまった。


「創造と破壊リスタートだぞ。さっきのは破壊だ。つまり、創造がまだ終わってないだろ」

「どういう事だ?」

「あそこを見てみろよ」

「ど、どうして⁉」

「ブヒッ」


 オズが指で示した先には、なんと小さくなったアウストヴァリリアが居たのだ。

 ダリアは、オズが言っていた創造の意味をまだ理解していないが、あまりの驚きに掴んでいた手を離した。


「まあ、このブタが天使エンジェルだからこれで済んだってところだな」


 創造と破壊リスタートは名前の通り、全てを破壊して再び作り直すというものだ。

 普通であれば、長い歴史の中の原点が作り直され、再び最初から歴史が作られる。

 しかし、天使エンジェルであるアウストヴァリリアは、莫大な魔力によって効果が軽減され、少し子供に戻っただけで済んだのだ。


「出会った頃と同じくらいの大きさだ。生きててよかったよ」


 そうアウストヴァリリアに言うと、ダリアは安心した様でその場に倒れこんだ。


「オズ君、君はこのことを分かっていたのかい?」

「まあ一応な。でも、ほとんど賭けだったけどな」


 2人が話していると、アナウンスが流れ始めた。


「テイム・モンスター大会、優勝は、オズ・ハムペアです!」

「やはり、君は凄い人だよ。優勝おめでとう(キラーン)」

「ありがとう」


 そうして2人は、握手をした。

 ダリアに元気が戻ったようで表情も明るくなった。


 パチパチパチ!


 客席からは、大きな拍手が送られた。

 この2人の試合は、学校の歴史の1つとして飾られた。

 それと共に、多くの実力者から目を付けられることになった。

 今後の生活で、これまで以上に凄い待遇を受けられる。

 その代わりに、次の大会から確実に狙われるようになるだろう。

 果たして、オズたちSクラスを倒す者はいるのだろうか。

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