第21話 入学式

「わぁー! やっとこの時が来たよ!」

「はしゃぎ過ぎじゃないか?」

「オズっだって嬉しいくせに」

「まあな」


 バハムートの出来事から2年が過ぎた。

 オズとアリアは15歳となり、村を離れることになった。

 そうして2人は、魔法学校『ラグーン学園』に入学する。

 親は、両方とも魔法学校に行きたいことは察していたらしく、すぐに同意してくれた。


「友達できるかな?」

「どうだろうな。できたらいいな」

「そうだね! まあ、私には、オズって言う心強い友達が既にいるけどね」

「こ、声がでかいって。は、早く行くぞ」

「もしかして照れてるー?」

「て、照れるわけないだろ!」

「必死だね」

「うるさい!」


 オズとアリアは、普段通りの様子で学校の門をくぐる。

 他の生徒らしき人たちは、とても緊張しているようだ。

 2人は、決められた場所に向かい、入学式に参加する。


「これからラグーン学園の入学式を始めます―」


 入学式が始まり、式はどんどん進んでいった。

 そして、1人の女性が現れた時、場がざわざわし始めた。


「私は、『生徒会長』兼『聖騎士』のアイシャだ―」

「アリア、この人ってそんなにすごい人なのか?」

「オズ、知らないの? このお方は、この学校のトップでありながら、国のトップを務めていらっしゃるんだよ」

「へぇー。国のトップってことは、僕たちよりも強いの? あんなに細いのに」

「当たり前じゃん! 絶対に及ばないよ! あの体型で強いなんてせこいよ!」

「すごいなぁ」


『アイシャ』は、学生でありながら、圧倒的な強さと独特な視点での戦略が評価され、国のトップを務めている。

 その容姿はとても美しく、短く綺麗な髪、整った顔立ち、赤く光る目、女性らしいか弱そうな身体、すべてが揃っている。

 しかし、その容姿からは考えられない程の威圧感があり、会話できる人は限られている。

 そんなアイシャだが、実績と綺麗だからという理由で国のみんなから支持されている。


「―以上で入学式を終わります」

「やっと終わったねー」

「ああ、長かった」

「次は、能力検査だね」


 入学式が終わった後には、クラスを決める『能力検査』がある。

 能力検査とは、いくつかのグループに分かれて、魔法、剣術、運動の3つの検査をして、能力に応じて上からS・A・B・C・D・Eに分類される。

 毎年、Sクラスは数人のみらしい。


「何クラスになるかなー」

「Aくらいがいいな」

「なんでー。Sがやっぱりよくない?」

「あんまり目立ちたくないんでね」

「シャイだね」

「なんか恥ずかしいからやめて」


 やはり2人は緊張感無く、初めの魔法の検査場まで進んでいった。


「それでは、検査の説明を始めます―」


 先生らしき女性がみんなの前に立って説明する。

 検査方法は簡単で、丸い水晶玉のようなものに手をかざして魔力を放出するだけだ。


「誰からでもいいぞー」

「じゃあ、私行くー!」


 みんなが躊躇している中で、1人元気に声を上げて水晶玉の前に立った。


「よし、えい!」


 パキン!


「あ、割れちゃった」


 アリアが魔力を放出すると、水晶玉はあっけなく割れた。


「もう1回やってくれ」

「はーい。えい!」


 パキン!


 再びやってみるが、またあっけなく割れた。


「2度も割れるなんて、何かの間違いかもしれないわ。ほら、そこの子、やってみなさい」

「え、僕ですか」

「そうよ」


 水晶玉が壊れているのではないかと疑った先生は、オズを試しに指名した。


「なら、いきます。はっ!」


 パキン!


「あ、割れた」

「やっぱり壊れてるわね。それじゃあ、実際の魔法で確認するわ」


 オズが行うと、アリアと同じように割れた。

 故障が確認できたので、先生は実技での検査に変更するようだ。


「では、順番に今使える最高の魔法を使ってみなさい」


 今度は順番になり、オズとアリアは最後になった。


「えい!」

「Dね」

「まあまあかな」

「おりゃあ!」

「Eね」

「そ、そんなぁ」

「ほい!」

「いいじゃない。Aね」

「俺様が最強だ!」

「すごいねー。Aだってー」

「そうだな」

「次、アリアさん」

「はい!」


 次々に判定が行われていく。

 今までの最高はAだ。

 そうして、アリアの番が回ってきた。


「それじゃあ、私の本気見せますか!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る