第18話 修行の成果

「最後に1発だけやるか」


「髪を綺麗にして、っとこれでオッケーだね。久しぶりにオズに会えるよ!」


『よし、それじゃあ行こう!』


 オズとアリアが修行を始めてから、あっという間に5か月が経った。

 2人の姿は、以前と比べると全くの別人になっている。

 お互い、久しぶりに会えることをとても楽しみにしていて、表情が明るい。


「早く着きすぎたな。流石にアリアは来てないだろ」

「早く着いちゃった。オズ、どんな風になってるかなー」

「あ、アリアだ。久しぶり」

「オズー! 久しぶりだね!」

「お前、来るの早すぎだろ」

「それは、オズも一緒じゃん」


 2人とも、今日が楽しみすぎて集合時間の5時間前に到着してしまった。

 偶然、2人とも同じ時間に来たので、待つことなく会うことができた。


「それじゃあ、修行の成果を見せ合おうか」

「いいねー。でも、簡単にだけだよね?」

「そうだな。本気ですると、どうなるか分からないからな」

「じゃあ、私からー」

瞬間移動テレポート!」

「え、それって……」

「どこ向いてるの? こっちだよ」


 アリアは、一瞬でオズの後ろに回り込んだ。

 オズは、魔王時代に苦しめられた瞬間移動を見て、驚きのあまり身体が固まってしまった。


瞬間移動テレポートって、勇者しか使えない魔法じゃ……」

「すごいでしょ! でも、これだけじゃないんだよー」

「ほかにもあるのか⁉」

「うん。じゃあ、オズは闇隠れシャドウダイブを使って好きなとこから出て来て。私は、それを当てるから」

「わかった」


 そうしてオズはアリアの真下に身を潜めた。


「出てきていいよ。真下からでしょ」

「ま、まじかよ。なんでわかったんだ?」

「未来視よ。この5か月で完成さしたの」

瞬間移動テレポートに未来視って、強すぎじゃねぇか」

「えっへん! 次は、オズの番だよ」


 オズはアリアの想像以上の成長に驚きを隠すことができなかった。

 それを見たアリアは、堂々としたドヤ顔でオズに成果を見せるように促した。


「ああ。じゃあ、やるか」


 そう言ってオズは、ダークエンジェルナイトを召喚した。

『ダークエンジェルナイト』とは、光と闇属性の融合魔法によって召喚されるものだ。

 そこらの魔族よりも余裕で強い。


「簡単に融合魔法って、すごいねー」

「アリア、こいつにできる限りのシールドを張ってくれ」

「おっけー」


 アリアも光属性だけではあるが、なかなか強い魔力を持っている。

 その為、ダークエンジェルナイトを倒せるのは、ほとんどいないだろう。


「よし、それじゃあ、こいつを倒すぞ」

「いけるの⁉」

「余裕だ。見てろ」


 そう言って、オズは手をピストルのようにして、標的に向けて魔法を唱えた。


光の矢エンジェルスナイプ

「それって、光属性魔法で1番弱い魔法じゃん⁉ そんなんで倒せ―」


 ビュウゥゥン!!!


「……」

「完璧だな」


 オズによって放たれた光の矢エンジェルスナイプは、一瞬にして標的を消滅さした。


「本当に光の矢エンジェルスナイプだったの?」

「自分の目で見ただろ?」

「じゃあ、どうやってやったの?」

「簡単な話だ。魔力の圧縮だ」

「ああー、なるほどー」


 アリアは、オズの説明に理解できていないが、納得した。


「もう1つ、すごいのがあるぞ」

「なになに? 見たい見たい!」

無の世界ディナン

「え、何が起こったの?」


 オズは魔法を唱えたようだが、何も変化がない。

 アリアは、不思議そうな目でオズを見る。


「何でもいいから、全力で攻撃してこい」

「わ、わかった」

瞬間移動テレポート!」


 アリアは、動揺してはいるが、全力で攻撃を仕掛ける。

 オズは、その場から一切動こうとしない。


「このままだと、オズがやられちゃうけど」


 アリアは、剣を寸止めしようと決め、剣を振った。


 スッ、


「えっ、剣が届かない⁉」

「アリア、ちゃんと切れよ」


 オズは、煽り口調でアリアに挑発する。


「挑発されたら本気でするしかないよね」


 そう言ってアリアは、何度もオズに攻撃するが、1発も当たらなかった。


「なんで当たらないの?」

「僕の身体の周りに無の世界を作ったんだ」

「無の世界?」

「そう。見た目では数ミリなんだけど、実際には永遠に届かない距離があるんだ」

「それって、最強じゃん⁉」

「まあね。まだ、自分だけにしか使えないけど」

「魔王の進化バージョンみたい」

「目標達成だな」


 アリアが魔王の進化版と言ったのは、全属性何でもできるのに加えて、攻撃を一切喰らわなくなったからである。

 無の世界ディナンを破るには、無の世界ディナンをぶつける以外に無い。

 その為、実質最強と言う訳である。


「お互いの成果を見せ合ったことだし、作戦会議をするか」

「そうだね! これだと、何とかなりそうだよ!」


 こうして、強くなりすぎた2人の慎重な作戦会議が始まった。

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