第15話 作戦会議

「やるって決めたのはいいけど、どのくらいのレベルまで上げればいいんだ?」

「オズは、魔王くらいになってくれたらいいよ」

「ま、魔王⁉」

「うん。そうだよ」

「半年でそこまで行けと⁉」

「オズなら大丈夫だよ!」

「いずれはそのレベルを目指していたから、まあ何とかするか」

「それで、私は勇者くらいになれば、2人で何とか勝てそうだよ!」

「魔王と勇者の共闘か。それなら、勝てそうだな」


 村を守る為には、オズは、魔王並みの力を。アリアは、勇者並みの力をつける必要があるそうだ。

 言い換えれば、2人ともが前世の力を身に着けるということである。

 魔王と勇者は、歴代最強クラスの実力の持ち主である。


「そんなレベルまで上げないといけないってことは、相手はこれまでとは比べ物にならないってことか」

「姿は、ドラゴンみたいな感じだったよ」

「ドラゴンの姿で、最強クラスとなると……。あいつしかいなくないか?」

「やっぱりオズもそう思う?」

「ああ、しかいないだろ」


『バハムート』それは、この世界で無敵とされているドラゴンだ。

 ドラゴンの中でも飛び抜けて強く、たった1体で世界を支配した。

 最強と言われている魔王と勇者が一緒に戦ったとしても、勝てる可能性は低い。


「でも待てよ。バハムートって、封印されたんじゃなかったか?」

「そうよ、ある老人によってね」


 アリアは、オズにその出来事について話した。

 そう、バハムートは1人の老人によって封印されたのである。

 世界を支配した後、バハムートは破壊を楽しんでいった。

 そうして、人類が絶滅しそうな程の被害を受けた時に、1人の老人がバハムートに立ち向かったのである。

 その老人は、とても小さな村の村長で、実績などは一切知られていなかった。

 そんな老人がバハムートに立ち向かうのだから、村の人々は止めようとした。

 しかし、その時の老人は全くの別人のように見えたようで、みんなはその老人に全てを託したそうだ。

 そうして老人は、バハムートの前に行くと、呪文を唱えた。

 その瞬間に、バハムートは村の石像へと吸い込まれていったらしい。

 その後、すぐに老人は亡くなり、その石像が村の守り神として扱われるようになったそうだ。


「そして、その石像がアジサイ村の石像なの」

「それなら、バハムートが何者かによって封印から解放されるってことになるのか」

「その可能性は低いと思うよ」

「なぜだ?」

「今の平和な世界でそんなことをする人がいるとは思えないよ。それに、封印を開放するのにもとてつもない魔力が必要だから」

「それじゃあ、どうしてバハムートが村に出現するんだ?」

「それはね、魔法の効力が切れるからよ」

「ってことは、その老人が使った魔法って……」

一時封印テンポラリーシール。一時的なものなんだ」


 封印魔法には2種類あり、『一時封印テンポラリーシール』は名前の通り一定期間しか封印できず、いずれは封印が解けてしまう。

 それともう1つは『永久封印インフィニティシール』である。

 永久封印インフィニティシールは、一時封印テンポラリーシールとは異なり、永遠に封印し続けることができる。

 バハムートは、一時封印テンポラリーシールであった為、その開放が半年後であるということだ。


「それなら、僕たちでまた、封印すればいいってことだな」

「まあ、そうだね。倒しきるか、永久封印インフィニティシールのどちらかだね」

「どっちにしても僕たち2人は強くならないといけないってことか。でも、僕は封印がいいと思う」

「私もそう思う。けど、オズが死んじゃう可能性もあるから……」


 封印魔法は相手によって、魔力の消費が変わる。

 今回のバハムートとなると、流石にオズでも魔力が尽きてしまい、命を失う可能性がある。


「これは、世界の平和も掛かっているから仕方のない犠牲だよ」

「私は、オズが死ぬのは嫌だ。だから、倒したいの」

「本気で言っているのか?」

「うん。やって見せる。そのためにも、オズの魔法が必要なの」

「仕方ない奴だな。やってやろうじゃねぇか」

「ありがとう、オズ」

「ただし、勝てないと思ったら、すぐに封印魔法を使うからな」

「わかってるよ」

「じゃあ、そろそろ村に戻ろうか」

「そうだね。急がないと、お母さんに怒られちゃうよー」


 そうして、2人は戦うことを決め、村へと戻っていった。

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