第2章 とんでもない異変!編

26.プロローグ:お伽噺

 

 むかーしむかし。何千年もむかし。


 朝をもたらす大きな神様と夜をもたらす三つ子の神様、二柱の神様が見守っているこの星には、人間が半分と魔物が半分ずつ暮らしていました。


 人間には知恵を与え、魔物には力を与え、この星がどうなるのかを見ているのです。


 魔物には王様がいて、魔物たちに人間や人間が作った食べ物を集めさせます。


 自分達がお腹一杯になる為に、人間も食べ物も食べてしまうのです。


 人間にも王様がいて、知恵を絞って武器を作ってみんなで魔物たちから人間を守ろうとしますが、力の弱い人間達は魔物に負けてしまいます。


 人間は少し、また少しと数が減っていき、『このままではみんないなくなってしまう』と、困り果てていました。


 その時、この星の様子を見ていた二柱の神様が――


「このままでは人間たちがいなくなって、魔物だらけの星になってしまう」


 二柱の神様は力を合わせて、人間の為に魔物と戦える七体の動物の姿をした強い魔法使いを創りました。


 火の魔法が上手な熊。

 水の魔法が上手な亀。

 風の魔法が上手な鳥。

 土の魔法が上手な土竜もぐら

 光の魔法が上手な狼。

 闇の魔法が上手な蝙蝠こうもり

 のろいの魔法が上手な蜘蛛くも


 七体の強い魔法使いは、得意な魔法で魔物たちと戦いました。


 火の魔法で魔物を焼き払い――

 水の魔法で魔物を沼に沈め――

 風の魔法で魔物を切り裂き――

 土の魔法で魔物を圧し潰し――

 光の魔法で魔物を串刺しにし――

 闇の魔法で魔物を影に閉じ込め――

 呪の魔法で魔物を狂わせ――


 どんどん魔物の数を減らしていきます。


 魔物の数が減ってきて、魔物の王様は魔物たちと一緒に人間のいない遠い遠いところへ逃げて行きました。


 この星は、争いが減って少しずつ平和になっていきました。


 人間は七体の魔法使いに感謝し、七体の魔法使いを大切に大切にお世話します。


 人間の住む場所が平和になると、少しずつ人間の数が増えて、住む場所も新しい場所へと少しずつ広がっていきます。


 魔物たちも、逃げた場所で少しずつ数を増やしていきました。住む場所も広がっていきます。


 人間の住む場所が広がり、魔物の住む場所も広がると、人間と魔物の距離が近くなって、また争うようになりました。


 でも、今度は人間の住む場所が広くなりすぎて、七体の魔法使いだけでは守れなくなっていました。


 七体の魔法使いも、魔法使いではない人間も困ってしまいました。


 人間の王様は、七体の魔法使いにばかり頼らないで、自分達も戦おうと決意します。


 でも、自分たちは力が弱く、前も魔物に勝てなかったので、人間の王様は七体の魔法使いにお願いをします。


「私たちにも魔法を教えてくれないでしょうか?」


 七体の魔法使いは答えます。


「私たち以外の人間も魔法を使える方法を考えましょう」


 七体の魔法使いと人間は、知恵を出し合って、人間が魔法を使える方法を作りました。


 それが、魔術です。


 七体の魔法使いは、それぞれの魔法を他の人間も使えるようにした魔術を教え、人間に魔術師ができました。


 魔術は魔法よりも弱いけれど、人間みんなが魔術を使えるわけではなかったけれど、魔術を使える人間ができました。


 七体の魔法使いと人間の魔術師は、武器を持った人間を連れて自分たちの場所を守る為に戦いに行き、魔物たちを倒していきました。


 魔物たちはまた遠く遠くへ逃げ、人間達は数を増やして住む場所も広くなっていきました。


 魔物たちは、人間と出会わないようにひっそりと暮らすようになり、人間たちは平和を取り戻します。


 でも――


 人間たちの平和は、崩れました。


 魔術を覚えた人間が、魔術を使えない人間をいじめるようになったからです。


 火の魔術を使って、みんなを困らせる人。

 水の魔術を使って、みんなを困らせる人。

 風の魔術を使って、みんなを困らせる人。

 土の魔術を使って、みんなを困らせる人。

 光の魔術を使って、みんなを困らせる人。

 闇の魔術を使って、みんなを困らせる人。

 のろいの魔術を使って、みんなを困らせる人。


 魔術を使えない人間は怒りました。


 魔術を使えない人間は、魔術を使える人間よりもたくさんいたので、武器を手にみんなで魔術を使える人間と戦うことにしました。


 七体の魔法使いは困りました。


 自分たちは、神様から魔物と戦う為に作られたので、人間たち同士の争いに手を出せないのです。


 七体の魔法使いが手を出せないので、人間同士の争いは激しくなっていきました。


 光の魔法使いだけは、人間たちに争いをやめるように説得しますが、言うことを聞く人間はいませんでした。


 人間同士が争っているのを見た魔物たちも、この隙にまた人間を食べようとしてきます。


 魔術を使えない人間と魔術を使える人間、そして魔物たちがいたる所で戦いをするようになりました。


 この星が、以前よりも酷い争いになったことを悲しんだ神様は、何とかしようと考えます。


 神様が七体の魔法使いを創り、その魔法使いが人間の中に魔術師を作って、人間たちに争いが生まれた。


 人間たちが魔術を使えなくなれば、また人間同士で協力するのではと考えたけれど、魔術は七体の魔法使いと人間が知恵を絞って考えた物。神様が手を出せないのです。


 そこで二柱の神様はもう一度協力して、この星から魔法使いを消そうとします。

 七体の動物を消すことは出来ませんでしたが、魔法を消すことは出来ました。


 そして、これ以上人間達に魔術が継承されないように、人間の知恵を少し減らしました。



 魔法使いが消えた後、人間たちは、魔物の脅威に対抗するために再び協力して戦い、追い払いました。


 人間と魔物は、また離れ離れになり、人間たちも魔術を失っていき、この星に平和が戻ります。


 この星に魔法使いはいなくなったけれど、七種類の動物はこの星に残り、種類も数も増えていき、この星は人間と動物と魔物が住む星になりました。

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