私刑
連喜
第1話 作家志望
俺は中学時代作家になりたいと思っていた。
こんな酷い文章で?と思われるかもしれないけど、普通の女の子がアイドルになりたいと思うくらいの現実味のないものだ。
それからずっと書き続けていたけど、人に見せたことはなかった。
50になって、将来役に立たないことでも何でもいいから、好きなことをすることに決めた。それで、毎日エンドレスで小説を書いている。一個書き終わったら次を考える。出来不出来はともかく、いくらでも書ける。脳内が支離滅裂だからだ。
やっぱり自分のために、自分が書きたいように書くから楽しいし、自由になれる。それに、創作活動のお陰で、俺を長年苦しめて来た雑念を払うことができている。世界中で、メディテーション(瞑想)ブームだが、瞑想が必要なのは、頭を空っぽにして、苦悩から解放される瞬間が必要だからだ。
俺の拙い文章でも読んでくれる人がいるのが、大変にありがたい。
と、ここでお礼を申し上げたい。
作家というのは、いつの時代も人気の職業だろうと思う。
しかし、作家であり続けるのは難しいと思う。もし、デビューできたとしても、話題作を書き続けなくてはいけないからだ(想像)。
さて、俺の知ってる女性の旦那さんが作家志望だった。どんな話を書いているかは知らない。賞の最終候補などに何度か挙がっていたが、受賞したのは金賞が記念品等の小規模な企画だけだったようだ。それでもすごいことなのだが、やはり、本人は満足していなかった。
その人は家が裕福だったから、自営業という建前でずっと家にいて、小説家を目指していたそうだ。大学院卒と聞いたけど、全く社会人経験がない人だったらしい。大学生でも作家デビューする人がいるから、別にいいんだろう。
それで、奥さんはかなりの美人。お嬢様で苦労知らず。コネで大企業に就職して、寿退社した人だ。付き合っていた頃は、旦那はインテリ風で素敵に見えたらしい。
俺は奥さんと付き合っていたから、旦那の愚痴をよく聞いていた。奥さんは俺が前に勤めていた会社で派遣で働いていたんだ。子どももいないし、やることがないと言っていた。
旦那はいつも書斎に籠りきり。奥さんには出かけてて欲しいというタイプだったらしい。すれ違いが続いたせいか、奥さんはもう旦那を愛してなかった。彼女は本気で離婚を考えていて、再婚相手として、俺を当てにしていた。
当然、俺はそんな女はごめんだった。
まず、顔がそれほど好みではなかった。
美人はどんな男でも落とせると思っているだろうが、やはり好みがある。
体型もイマイチ。相性も普通。
金遣いが荒くて、デパートで服や化粧品を買い、買物は高級スーパーに行く。
俺の給料じゃ絶対に養えない。
こういうのをやろうと思ったら、年収2千万くらいで、子供がいないという家計じゃないと無理だと思う。または、貯金がほとんどない家かだ。
子どもが嫌いというのも、俺にはマイナスポイントだった。
結婚するならやはり子どもが欲しい。
そうでなかったら、俺は独身でもいいと思うくらいだ。
こんな感じだから、彼女のことは嫌いだった。
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