第16話 また穴を空ける?

俺が『模倣変身』で色々試している頃、

美香達は40階層を目指していた。


美香は襲ってくるモンスターを埃のように

払いながら浩介と話していた。

「このダンジョン不思議よね。壁とか壊してもしばらくすると元に戻ってるよね。」

「ああ、どんな仕組みなんだろうな。」


脳筋パーティーには知る由もなかった。

この世界におけるダンジョンは、レベル上げや魔鉱石などの材料入手ができる生活に身近な場所だった。

なぜ作られたかは学者達の間でも学説が分かれている。

魔王が作った、自然と現れた、古代の科学技術など

様々である。

ダンジョンは常に内部構造が変化し、壁などが破壊されても元に戻る。

まるで生き物のようだった。


ダンジョンでは人やモンスターが死にしばらくすると地面に吸収される。

一説にはダンジョンが栄養補給をしてると言われているが、その仕組みは未だ不明のままだった。

ダンジョンは世界中の至る所にあったが、共通して100階層が行き止まりと言われていた。


現在100階層まで到達できるパーティーは限られており、

100階層到着したパーティーは戦略魔法級の力を有しているといる。

これは、すなわち街一つを消し去るほどの破壊力を

持ったパーティーという事になる。


美香達パーティーは気づいていないが、攻撃だけみれば既に戦略魔法級の威力に匹敵するくらいになっていた。

彼女達脳筋パーティーは、そんな強大な力を持ってしまっている事を理解できるはずもなかった。


美香はうさぎ型のモンスターを刀で串刺しに

しながら笑顔で阿部を見た。

「この階層面倒くさいからまた地面に穴を開けれる?」

阿部は無言で頷いた。

阿部は専用スキルで拳にオーラを纏わせて

力いっぱい地面にぶつけた。

地面にあった土や石は四方に飛び散り、その石でモンスターが倒せるほどだった。

土煙が酷く阿部の姿がしばらくは見えなかったが、数秒後に

焼けたような地面が見え、その真ん中には大きな穴が空いていた。

美香達はその穴を覗き込んでみたが、貫通している様子はなかった。

「うーん、だめみたいだね。最初の方はよかったんだけどねー。階層が深くなったせいかしら?」

話しているうちに地面は再生し元に戻っていた。

寺田が美香の方に顔を向けた。

「ズルできないように対策されたんじゃね?」

「まさか。ダンジョンが生きてるとか? まあ

いいわ。真面目に下にいく階段を見つけましょう。

もぅ、バカ流星どこまで行ってるのよ!」


優奈は心で呟いた。

(最初から真面目に行けば良かったのに、美香ちゃんいつも面倒くさがるからなあ)

阿部は無言で優奈の肩をポンポンと叩いた。

彼には言葉に出さなくても優奈の気持ちがわかっていた。

「はぁ」と優奈はため息をついた。

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