4.43
畳の上で寝転がって改めて先のでき事を振り返ってみると、どうしてあんな風に二人を謀ってしまったのだろうと少しばかり後悔した。彼らに対する罪悪感からではない。つまらない催しの主催者となってしまったという自己否定の念が湧いてきたのだ。
企画した当初はさぞ愉快なショーになるだろうと思った。
二人が相対した際にどういったやり取りをするのかわくわくとした一方、お互い落ち着いた年齢なんだから、形だけでも荒立てず穏便に済ませて、影で一方的に批判するくらいなものだろうといった予想も立てていて、それはそれで面白そうだなと笑みが溢れていた。その際は私自身二度と彼らと顔を合わせるつもりはなかったからきっと恨み言は聞けずに生涯を会えるだろうななんて考えていて、いずれにせよ小競り合い程度に終わるだろうなんて想像していたのに、意に反して極端に暴力的な趣となってしまって一歩引いてしまい、それ以上に衆人の加熱していく興奮に嫌気が差し、馬鹿馬鹿しく思え、潮が引いていくみたいに距離が遠くなっていくのを感じた。私だけが知る両者の背景が急に人に伝わり、私以上に熱気を帯びていくのがつまらなかった。それは大切にしていたおもちゃが人手に渡り壊されていく感覚に近く、悲しさと怒りと虚しさが混ざり合って、決別を選択せざるを得ない精神状態に追い込まれてしまったのである。
数多の群衆が大木と同僚を取り囲んで騒ぎ立てるのを遠くより観察する口惜しさ。私が仕掛けた余興がたちまち大衆演劇に落ちぶれてしまった情けなさ。分かるかね。貴方に。分かるだろう。そうさ、貴方には分かるはずだ。これまで心を通わせてくれた貴方ならば!
もう一つ、貴方は分かってしまった事があるだろう。私が、いかにも世捨て人を気取り他者への関心なく暇を持て余す必要のない程の神秘を持っていると、高潔な心をしているかのように装っていた事を。
そうだとも。私はこれまで出会ってきた愚者共に対して苛烈な批判を繰り返してきた。けれどそれは、裏を返せば、彼らへの依存、執着があると伝えているのと同義なのである。私は彼らを偶像として心の側に置き、絶えず祝詞を捧げていたのだ。恥ずべきは、私である。
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