宇宙艦隊オッパリオン
YOMと桐生スケキヨ
【第1章】宇宙艦隊オッパリオン「オッパリオン編」
【第1章】宇宙艦隊オッパリオン000話「プロローグ」001話「木星遊覧へ向かう翔平と奈菜」
【〇〇〇 プロローグ】
宇宙は一滴の母乳からはじまった。
母乳をもたらす者と母乳を受ける者。
そこには無限のエネルギーがあった。
遙か銀河の果てで今、新たなる母乳が生まれる。そしてその母乳は母乳を受ける者を求めた。
この星を救うため、遙か彼方の救世主を。
【〇〇一 木星遊覧へ向かう翔平と奈菜】
『本日は当宇宙空港をご利用いただき、ありがとうございます。ご搭乗をお待ちのお客さまにお知らせします。木星遊覧便の搭乗準備が整いました。チケットをお持ちのお客さまは順次ご搭乗いただけます。繰り返しお知らせします――』
「翔平、もう乗れるみたい。行こう行こう」
「そうだな。でも奈菜、そんなに慌てなくても大丈夫だって」
夏休みもはじまったばかりの日本の宇宙空港には多くの人が集まっていた。
その中でアナウンスを聞いた翔平と奈菜は大きなスーツケースを手に取るとゆっくりと搭乗口へ向かいはじめる。
「未だに信じられない。本当に木星遊覧に行けるなんて」
歩きながら奈菜は楽しそうに言う。
「俺もまさかこんな機会で木星を見に行けるなんて思ってもみなかったよ。ありがとうな、奈菜」
「ふふっ、わたしの運も捨てたものじゃないでしょ?」
「ああ、すごい幸運を持ってるよ、奈菜は」
人類が宇宙進出をして数十年。月や火星にプラントを建設し、人が生活をするようになっている。
宇宙旅行も一般的になってきたとは言え、翔平や奈菜のような平凡な大学生が気軽に行けるというほどの価格ではなかった。
ふたりがこうして木星遊覧に行けるようになったのはひとえに奈菜の幸運によるものだった。
「商店街の福引きで特賞を当てるなんてな。すごいよ奈菜」
「自分でもびっくり」
「でもよかったのか? せっかくのペアなんだろう? 俺なんかが一緒で」
「それは……い、いいじゃない。翔平、昔から地球を離れて木星まで行ってみたいって言ってたし」
「そうだけどさ」
「でしょ? それに往復で一ヶ月もかかるんだもの。夏休みでもなければ行けないし」
「タイミングもよかったよな」
「うん。それに……」
「ん? それに?」
「な、なんでもないっ。とにかく、翔平にとってもラッキーだったってこと」
「はは、それはそうだな。ありがとうな、奈菜。念願の木星を直接見られるよ」
技術の進歩で木星遊覧も可能になり、その巨大な姿をひと目見ようという人たちは多い。
翔平もそんな中のひとりであるのだが、なぜ自分がこんなにも木星を見たいのかということはよくわかっていなかった。
その大きさに憧れたのか、または遠くの場所だからなのか。
とにかく心惹かれるものが木星にはあった。
「一ヶ月か……その間にがんばらないと」
ふととなりの奈菜を見ると、そんなことをつぶやきながらこぶしを握っている。
「なにをがんばるんだ?」
「えっ、あ、こ、こっちの話! わたしだって木星楽しみなんだからね」
「おう。奈菜、一ヶ月の船旅だからって食べて寝てばかりじゃダメだからな」
「言われなくてもわかってるわよ、そんなことくらいっ。ちゃんと運動もするもん」
翔平も奈菜も、宇宙に出るのははじめてのこと。
これからの旅への期待に胸を膨らませながら、窓の外のシャトルに目をやっていた。
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