スクナビコナとネズミ馬⑦―クエビコの妙案!…ナスを探す…?―
「クエビコ様!」
スクナビコナはクエビコの元にたどり着くと同時に声をかける。
『…うむ、スクナか?なんの用じゃ?』
「…とその前に……」
そう言いながら、スクナビコナはクエビコの〝足もと〟に供えられているおにぎりに目を留める。
「…クエビコ様。実は僕、昨日からずっと何も食べてなくて、猛烈に腹が減ってるんだ。だからそのおにぎり、もらっちゃってもいいかな?」
『…ふむ、そういう事情があるならやむを得まい。食べてもいいぞ……』
「やった!いただきまーす!」
スクナビコナはクエビコの言葉を聞くやいなや、自分の体と同じくらいの大きさのおにぎりに飛びつき、凄まじい勢いでかぶりつき始める。
「…モグモグモグモグ……」
そして一心不乱におにぎりを食べ続ける。
「…プハー、…食った食った……」
そうしてついにはおにぎり三つを全て胃袋の中に収めてしまう。
『…まさか、三つのおにぎりを完食するとはな……』
クエビコはスクナビコナのあまりの食欲に呆れ果てる。
「…ごめん、クエビコ様。この埋め合わせは必ずする」
『…うむ、まあいいじゃろう…。ところでこのクエビコに何か話があるのではないのか?』
「…そうだ!食べることに夢中ですっかり忘れてた!」
『…用件を忘れるとは。しょうがないやつじゃのう……』
クエビコはスクナビコナの物忘れの酷さに再び呆れる。
「…クエビコ様。実は……」
スクナビコナは昨日クエビコと別れたあとに、自分たちの身に起こった出来事を全て話す。
「…僕はこれからどうやってチュルヒコを助け出せばいいのか…?もう頼れるのはクエビコ様しかいないんだ!」
スクナビコナはすがるような思いでクエビコに懇願する。
『…うむ、スクナよ。これからこのこのクエビコの話すことをよーくおぼえておけよ……』
クエビコはゆっくりと話を切り出す。
「…うん、わかったよ……」
『ここから老婆の家に向かう道の脇に一面ナスばかり植えられている畑かあるはずじゃ。その中に〝一本の茎に七つの実が東を向いた状態〟でなっているナスがあるはずじゃ。それを見つけ出しチュルヒコに食べさせればたちどころにチュルヒコは元の姿に戻るはずじゃ』
「そうか、わかったよ!」
『うむ、スクナよ!必ずチュルヒコは救い出してやるんじゃぞ!』
「うん。ありがとう、クエビコ様!」
スクナビコナはクエビコに礼を言うと、急いでチュルヒコが捕まっている老婆の家へと向かって走り出すのだった。
「…一面ナスばかり植えられている畑か…?…なかなか見つからないな……?」
スクナビコナは急いで老婆の家へ向かいつつも、道中の脇にあるという畑を絶えず探してみた。
しかし〝一面ナスばかり植えられている畑〟などというものは影も形も見つからず、気がつけば老婆の家がある山まで来てしまっていた。
もうすでに日は傾き、辺りは暗くなりつつある。
「…くそっ、急いでナスを探さないとまずいな……」
徐々に茜色に染まっていく西の空を見ながら、スクナビコナの気はいよいよ焦ってくる。
こうしている間にも、チュルヒコはあの老婆によってどんな目に会わされているのかわからない。
もはやチュルヒコが馬の姿に変えられて半日がたってしまったのだ。
こうなるとスクナビコナの頭には最悪の事態さえ頭をよぎるほどである。
「…いや、チュルヒコは生きてる!生きて僕が来るのを待っているはずだ!」
スクナビコナは頭によぎった悪夢を振り払うと、再びナスの畑を探し始める。
そのときである。
「…あれは、ひょっとして……」
スクナビコナはすでに周囲が薄暗くなっている中、視線の先に気になるものを見つける。スクナビコナはその〝気になるもの〟に近づいてみる。
「…やっぱり、これはナスだ!」
スクナビコナはついに一面にナスが植えられている畑を見つける。
「やったー!ついに見つけたぞ!」
スクナビコナはナスの畑を見つけたことににわかに興奮し始める。
「さあて、あとは〝七つのナスの実が全部東を向いてなっている茎〟を見つけるだけだ!」
そう言うと、スクナビコナは張り切って畑にあるナスの茎を一本一本調べ始める。
「…あれ、おかしいな……?」
スクナビコナは調べ始めてからしばらくすると、再び焦り始める。
「…ない、ないぞ……」
スクナビコナは必死になって茎を調べるが、一本の茎に四つ、五つ、六つなっているものはあっても、七つなっているものは一本もないのである!
「…もうナスの茎はないみたいだぞ……」
とうとうスクナビコナは畑にある全ての茎を調べ終わってしまう。
「…もうナスの畑はないのか!」
スクナビコナは慌てて周囲を見回してみる。
「…あった……」
スクナビコナは今まで調べていたナスの畑のすぐ隣に、別のナスの畑を見つけるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます