スクナビコナとアマカニ合戦②―母ガニを襲った悲劇!無法なるアマノジャクの標的に!!―
僕たちは柿の種を持ち帰って、川から少し離れた地面に植えました。
そしてその日から僕たちは柿の種の近くで
『早く芽を出せ柿の種』
『早く芽を出せ柿の種』
と歌いながら、くるくると踊り回りました。
するとなんと種を植えた数日後には種は芽を出したのです!
そこで今度は、
『大きくならないとはさみでちょん切るぞ』
『大きくならないとはさみでちょん切るぞ』
と歌いながら、くるくると踊り回りました。
するとさらに数日後には芽はどんどん成長してついには木になり、柿の実もたくさんなったのです!
僕たちが大喜びしたのは言うまでもありません。
しかしそのすぐあとに僕たちはある〝問題〟に気がつきました。
カニである自分たちは自力で木に登って柿の実を取ることができないのです。
そのために僕たちはすっかり途方に暮れてしまいました。
すると、どこからか大きく成長した柿の木の噂を聞きつけたのか、あるいは実際に大きな柿の木を見たのか、とにかく再びアマノジャクとドブヒコが僕たちの前に姿を現しました。
「ハッハッハッ、こりゃ驚いた!まさか柿の種がほんの短い間にここまで立派な木になるとはな!」
『クックックッ、それに柿の実もずいぶんと大きいのがなってやすぜ!』
『…あ、あの、…お二方にお願いしたいことが……』
『僕たちは木の上にある柿を自分たちの力では取ることができないんです!』
「ほう、そうなのか?それは気の毒なことだなあ」
『クックックッ、確かにそれはかわいそうですぜ』
アマノジャクとドブヒコはニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべながら言いました。
『だからお願いです!柿の木の上に登って、私たちに柿の実を取っていただけないでしょうか?』
『あんたたちは木の上に登れるんでしょう?』
「フッハッハッハッ!もちろん登れるとも!」
『木登りはこの世で一番得意ですぜ!』
『じゃ、じゃあ!』
『やってくれるんだね!』
「無論、やるさ!」
『ククッ、お安い御用ですぜ!』
『あ、ありがとうございます!』
『お願いします!』
「ハーッハッハッハッ!お前たちは知らないんだろうが、俺たちはこのあたりじゃあ親切なことで有名なんだ!」
『クーックックックッ!俺たちはこの辺じゃあ一番優しいっていう評判をとってやすぜ!』
こうしてアマノジャクとドブヒコが僕たちのために柿の実を取ってくれるということになったのです。
「ヒャッハー!この柿の実は本当にうまいぜ!」
『クククッ、こっちもいい感じで熟れてやすぜ!』
アマノジャクとドブヒコは器用に柿の木を登っていくと、おいしそうな柿の実に近づき、次々と食べていきました。
そのために僕たちはしばらくの間完全に〝放置〟されてしまいました。
『…あのー……!』
『…ちょっと、ちょっと!』
僕たちは柿の実を食べることに夢中になっているアマノジャクたちに必死に呼びかけました。
「…ん?」
『…なんだ?』
ようやくアマノジャクとドブヒコは僕たちの声に気づきました。
『私たちにも柿の実を取ってくれませんか?』
『自分たちばっかり食べるなんてずるいよー』
「…ふん、そんなに柿が食べたいのか?」
『…ククッ、こっちは柿を食べるのに忙しいってのに……』
『そんなこと言わないで!』
『僕たちにも柿を食べさせてよ!』
僕たちはアマノジャクたちに必死に食い下がりました。
「…やれやれ、そんなにも柿を食べたいのかね?」
アマノジャクは呆れたような様子を見せながら言い放ちました。
『ククッ、俺たちが死ぬほどうらやましいみたいですぜ』
『はい、柿を食べたいですよ!』
『少しくらいいいじゃないか!』
「…やれやれ……」
そうつぶやくように言うと、アマノジャクは別の場所に移動し始めました。
『やっ、やっと私たちにも柿をくれる気になったんですか!』
『早く柿の実をちょうだいよー!』
僕たちはアマノジャクが柿を渡してくれる気になったと思って、喜びました。
「…そんなにほしいなら……」
アマノジャクはまだ青くて硬い柿の実のそばに近寄りむしり取ると、僕たちのほうを向きながら言いました。
「…くれてやるよ!」
そしてそう叫ぶと同時に、柿の実を僕の母に向かって全力で投げつけました。
『あ、あわわわわわ!』
柿はものすごい速さで母のほうへ向かっていき、戸惑う母の体を直撃しました。
『は、母上ーっ!』
僕は驚いて、すぐに倒れている母のそばに近寄りました。母は口から泡を吹いて、気絶していました。
『なんてことするんだよ!そんな速さで硬い柿を投げたら危ないに決まってるじゃないか!』
僕はアマノジャクに対して文句を言いました。
『ハッ、何甘えたことを抜かしてるんだ、ガキが!』
『そうですぜ!せっかくアマノジャク様が取ってくれた柿を自分の体にぶつけちまうなんざ、こんなクソみたいな話もありゃしないぜ!』
アマノジャクもドブヒコも僕の言葉を一蹴しました。
そして一人と一匹は、そのあともまるで母のことなどなかったかのように、夢中になって熟れている柿を腹がよじれるかと思うほど食い尽くしたあと、満足げに帰っていったのです。
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