いよいよ新世界

僕が頭を押さえているのをウィルツーは完全に無視しながら話を続ける。


「これから、この世界に転移してもらうけど、その前に軽く説明とプレゼントがあるんだ。」


「プレゼント?」


「そう。

ウィルからいつでも元の世界に戻れるようにして欲しいって言われたからね。

まずはこれ。

『神域の鍵』

これを使えば、いつでも、どこからでも、ここに来られる。

私が元の世界に戻ったり、元の世界からこっちの世界に来たりが自由に出来るよ。」


手のひらサイズの鍵を渡される。

不思議な感触。

小さくなって首にぶら下げられるようになった。


「失くさないように肌身離さず持っといて。

それと、次はこれ。」


ウィルツーは白いティーシャツを差し出した。


「これは何ですか?」


「私特製のティーシャツだよ。

かなり特殊な性能になってる。

まずはレックスの能力を制限する。

この世界ではレックスの能力は高過ぎる。

だから、この世界の人間の範疇におさまるように能力を制限する効果を付与している。

その代わり、防具としてはただのシャツとは思えない性能にしてある。

防汚防臭加工だし、多少の損傷は自動で修復してくれる。

悪いんだけど、基本的にはこれをずっと着ておいて。」


「わかりました。」

まさか僕が強過ぎると言われるとは。

元の世界との違いに驚いた。

落ちこぼれなんて言われていた僕が強過ぎる。。。



「次はこれ。」


ウィルツーが剣を出した。


「レックス用に作った剣だ。

元の世界の武器はスキルストーンがセット出来ないからね。

これを使ってみて。」


手に持つと軽いけど、しっくりくる。

見た目は普通の鉄の剣に見えるけど、絶対鉄じゃない。


「セット出来るストーンは7つ。

これはこの世界で手に入れたスキルストーンを自分で好きにセットしてみて。

ただ、裏設定で3つのスキルが設定されている。

1つ目は自動修復。

刃こぼれしたり、刀身が折れても自動で修復される。粉々に粉砕でもされない限り復活するから、長く使える。

2つ目は召喚。

レックス専用装備にするために、レックスが手もとに欲しいと思えば、いつでも現れる。盗まれたり、失くしたりしても安心だね。

最後は戦鬼解放。

これはさっき渡したシャツと連動しているスキルなんだ。強いモンスターと出会った時に、シャツによる能力制限を解除するスキルだよ。更にシャツが本気の防具に変身する。

まぁ、ピンチの時に使ってみて。」


「凄い!

ありがとうございます。

使わせて頂きます。」


「うん、気に入ってもらえて良かったよ。

レックスはウィルから色々もらっているからね、私からはこの3つだよ。」


「ありがとうございます。」

レックスが深々と頭を下げる。


「それじゃ、そろそろ行こうか。

転移しているところを見られるとまずいから、ダンジョンの中に転移させるよ。

準備はいいね。」


「はい。」


「あっ、そうだ!

忘れてた。

これ身分証。

これから転移する国では16歳にならないとダンジョンに入れないからね。

ちょっとサバ読んどくね。

弱くなってるから、最初は無理せず調整した方がいいよ。」


「わかりました。」


「それじゃ、

シナガワダンジョン地下5階に転移だよ。

いってらっしゃ~い。」


「いってきます!」



視界が歪む。

次に見えたのは岩壁だった。

3方向を岩壁に囲まれた行き止まり。

そんな場所に出てきた。

照明がないのに十分明るい。

不思議だね。


ダンジョンは資源の宝庫。

中に入る人は後を絶たない。

そんな人たちのことをこの世界では、

『ダイバー』と呼ぶらしい。


特にダンジョンでの収入で生計を立てている人たちをプロダイバーと呼ぶらしい。

当面、僕が目指すのもこのプロダイバーだ。


ダンジョンに気軽に入る人たちもたくさんいる。上層部のモンスターは弱い。ちょっとした武器を持っていれば簡単に倒せる。

だから、小遣い稼ぎや暇潰し、ストレス発散に来る人も多い。


地下5階は気軽に来るには深いし、

プロダイバーが稼ぐには浅い。

そんな場所だから人は少ないはず。

まずはじっくりモンスターを倒しながら地上を目指そう。

この世界のお金を持ってないからね。

少しぐらい売れる物を稼がないと地上に出ても何も出来ない。


さあ、出発だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る