披露宴 1

披露宴はとにかく広い会場で自由に楽しんでもらうことにした。


ダンジョン街のみんなにも参加してもらって大宴会だ。

ウラドラ商会の関係で、多数の商人も参加している。

王族、貴族、商人、平民。

雑多な参加者が入り乱れてのパーティー。

警備担当のディーンは頭を抱えていたけど、ウィリアム=ドラクロアらしい結婚式になったと思う。


タチアナが親族たちといた。

父親は大臣。

祖父のヘンケンは元宰相にして、今はウィリアムの街の主要メンバー。


「タチアナ、

今日の結婚式が行えたのはタチアナのおかげだよ。

ありがとう。」


「私も皆さまに楽しんで頂けているようで、嬉しく思います。」


「タチアナはしっかり者だから、本当に助かるよ。これからも私のことを公私共に支えて欲しい。」


「もちろんです。

ウィル様のサポートをするのはとても楽しく、私に合っています。

今後とも、宜しくお願い致します。」


「ありがとう。こちらこそ宜しくね。」


ヘンケン

「孫のこと、これからも宜しくお願い致します。」


「もちろんだよ。

ヘンケンとタチアナはうちのチームには欠かせない人材だからね。」


「ありがとうございます。

それではウィル様、皆さまへの挨拶回りをお願い致します。

花嫁はもちろん、関係各所への挨拶もお忘れなく。」


「任せといてよ。

退屈な挨拶は分身に任せてるから。」


タチアナ

「そういうことを胸を張って仰らないでください。」


「ハハハッ、それじゃ行ってくるね。」


「行ってらっしゃいませ。」

頭を下げ、見送るタチアナ。




次にいたのはミレーヌ。

キャナルと共に招待客の商人たちの相手をしていた。

「あの子どもたちの服は何ですか?

素材が異常に良い。

お売り頂けませんか!」


「あの料理の温度を維持する魔道具。

おいくらならお売り頂けますか!」


「新婦のドレスもウラドラ商会さんが用意されたのですよね。

我々にも、提供頂けませんか!」


なんか凄い熱量で商人たちが詰め寄っている。

ミレーヌとキャナルはあしらっているが、商人たちも引き下がらない。


「あまりしつこいのはご遠慮ください。」

ウィルが優しい口調で声をかける。


大半の商人は下がったが、一部粘る商人もいた。

特にしつこい2人が、

「せっかくのチャンス、無駄には出来ん!」

「邪魔しないでくれ!」


「ほう、、、

この私に邪魔するな、と?」

ウィルが威圧する。


「あわあわ、あわ、、、」

「ひ、ひぃぃぃ~」

途端に腰を抜かして、まともに話せなくなってしまう。


ウィルは目の前に立ち睨みつける。

失禁して、気を失ってしまう2人。


「どうやらお客様は飲み過ぎて、気を失ってしまったらしい。

会場の外まで送って差し上げてくれ。」

会場スタッフが運び出す。


汚れた会場をウィルが魔法で瞬時に浄化する。商人たちを見回し、

「皆さま、節度を持って結婚式をお楽しみくださいませ。

私の花嫁を披露宴会場で困らせるようなことはございませんように。」


「も、もちろんでございます。」


「ご理解有難うございます。

キャナル、皆さまが料理やお酒を楽しめるようにアテンドしてくれるかい。」


「承知致しました。」


「キャナルもしっかり楽しんでくれ。

私のオススメはムラーノ特製のチョコレートケーキだ。

過去最高の傑作だよ。」


「有難うございます。後程頂いて参ります。」


「ミレーヌ、少し歩こうか。」

「はい。」



商人たちのいた場所を少し離れて、

「やり過ぎだったかな?」


「大丈夫です。披露宴で新婦に詰め寄るようなお馬鹿には良い薬です。」


「そうだね。

これから披露宴を楽しもう。」


「そうね。

楽しませてもらうわ。

でも、不思議なものね。

駆け出しの頃は将来お店の1つでも持てたら最高だと思ってたのに。

そんな私が伯爵様のお嫁さんだもんね。」


「出会いって不思議だよね。

でも、面白い。」


「本当ね。

でもいいの?

私なんかを花嫁にして?

王女様や勇者様とは格が違うわよ。」


「格ね~。

私にとってもクラリスもカレンもミレーヌも、みんな大切だよ。

違いがあるとは思わないけど。」


「そういうところがウィル様ね。」


「当たり前だろ。

ミレーヌの代わりなんていないんだから。」


「そう思うなら大事にしてね。」


「もちろん。

生涯大事にするよ。」

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