魔王討伐編
予選会
「武道会の準備はどんな感じ?」
ウィルの確認にミルが答える。
「今日から予選会を開始します。本選の観覧席のチケットは完売。宿も既に満員になっています。街の外からもかなりの人が集まっています。」
「そうか、大会が楽しみだね。」
「武道会と並行してマーケットやメルのライブなんかのイベントも開催予定なのでそちらも盛り上がっています。」
「マーケットか~」
「ウィル様は絶対に出店しないでくださいね。ミレーヌからも釘を刺すように言われております。」
「うぅ、仕方ない、武道会とメルのライブで満足しとくよ。」
「ウィル様、ご友人のレオン様に大会の実況をお願いしております。宜しいですか。」
「もちろん。レオンはそういうの得意だからね。」
そして予選会。
予選会は非常に狭き門となった。
5つの会場に分け、それぞれの会場で最後の1人になった人が予選突破。
各会場には100人ほどの参加者。
倍率100倍の狭き門の突破に向けて参加者たちが大乱戦を繰り広げることになる。
それぞれの会場は全てカメラが設置され、観覧席は全ての予選会場が見られるようになっている。
なおカメラやモニターはウィルが作った魔道具である。普通はこんなシステムはない。
本選も観客の安全確保のため、このモニターシステムを使用することになっている。
観覧席にレオンの声が響く。
「予選会の実況はレオン、解説はウィリアムの街の警備隊隊長、ディーンさんでお送り致します。
ディーンさん、よろしくお願い致します。」
「俺でいいのか?」
「もちろんです。ディーンさんは武道会初代王者ですから。
さぁ第一会場は一方的な状況のようです。」
「あれはウィリアム騎士団だな。」
第一会場では赤い集団が周囲の参加者を蹂躙していく。
「『赤い悪魔』の異名は伊達じゃない!
周囲の参加者も連携し始めた。」
「ウィリアム騎士団の練度が違う。集団戦闘のプロだからな。素人が束になっても勝てんだろう。」
「これは勝負がすぐに決まりそうですね。」
「第二会場でも動きがあったようです。こちらも1つの集団が周囲を圧倒しているようです。」
「先頭にいらっしゃるのはアルガス=ドラクロア様だな。
ということはあれはドラクロア軍の精鋭ってところかな。」
「なるほど、アルガス様の武勇はエール王国で知らない者はいないほど。普通なら本選から参加になるランクの方ですね。」
「ドラクロア軍はエール王国最強。子どもでも知っている。」
「第二会場も順当に進みそうですね。」
「さぁ第三会場です。こちらは大乱戦です。」
「こっちは団体戦じゃなく、個人戦って感じだな。」
「注目の選手はいますか?」
「そうだな。Aランク冒険者のガーランドとコズン、凄腕傭兵のガダル、賞金稼ぎのヤリッチ、道場荒しのグスタフ、そこら辺が有名だな。」
「なるほど、実力者揃いということですね。」
「誰が勝ってもおかしくないな。」
「第四会場も大所帯のチームを中心に動いているようです。」
「あれはバルベンの『悠久の栄光』。冒険者の街を代表するパーティーだ。さすがに強いと思うぞ。」
「なんだ?竜巻!?」
第四会場で突如現れた巨大な竜巻が暴れる。
次々に参加者が吹き飛ばされていく。
「何かのスキルか?
威力が凄い!
これだけで勝負が決まりそうだな。」
「『悠久の栄光』が壊滅。あっという間の出来事です。」
「そろそろ竜巻がおさまりそうだぞ。」
「中から出てきたのは斧を担いだ大男!」
「誰だ?」
「え~っと、ゴドウィン選手です。他にはなんの情報もありません。」
「もう勝負は決まっただろうな。」
「さぁ第五会場も見てみましょう。残りは2人になっています。」
「ハンスとマイリーか。ハンスも運が悪いな。マイリーが相手だと厳しいだろうな。」
「ハンスさんも強いけど、やられ役感が拭えないよね。」
第五会場ではハンスの悲鳴が響いていた。
「なんでだよ~~~!
マイリーの参加は反則だろ!
ギャァァァ~!」
「こそこそ逃げ回るな!戦え!」
「ノ~!!!
俺だって強いんだよ!
普通の大会なら優勝できるレベルなんだよ!
本当なら本選出場して、有名になって、結婚するはずなんだよ~!!」
「あのバカは何を叫んでいるんだ。」
頭を抱えるディーン。
「本当に残念な人だよね。強いし、器用だし、なんでだろうね。」
「あっ!マイリーの蹴りが入ったぞ。」
「あ~、情けない悲鳴上げてるな~。」
「致命傷にならないようにガードするのも高等技術なのに、なぜ尊敬できないんだ?」
「あの情けない悲鳴と顔のせいだろう。」
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