連戦

先に気配を感じたのはガラリアだった。

斧を握りなおし、

「来る!」

とだけ口にした。


ローザリアはそれだけで察した。

そして入口にローザリアとガラリアが並び立った。

「あなたたち、、、」

負傷し動けないマリアンヌ。


「ご安心ください。相手の動きに慣れてきました。もう遅れはとりません。」

「準備運動も済ませたところです。そろそろ体が温まってきました。」

2人はにっこりと微笑みながら余裕を見せる。


そして敵の足音がメイドたちにも聞こえてきた。

「くっ、3体!?」

「ふー、やるしかない!」

動揺するローザリアと覚悟を決めるガラリア。実戦経験の差が出る。


ガラリアは前に出て、

「斧無双!」

ガラリアは自身の最大の技を先頭の敵に放つ。モンスターは防御姿勢をとるが吹き飛ばされる。2体目のモンスターと接触しもたつく。しかし、3体目はすり抜けて、技を放って隙だらけのガラリアを殴り飛ばす。

ガラリアは吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がり壁にぶつかる。それを無視してモンスターたちはローザリアに殺到する。

1体目の攻撃をサイドステップでかわす。

しかし、そこに2体目が腕を伸ばす。

なんとかその腕をショートソードで弾いたが、3体目の手がローザリアの首を掴んだ。


「ぐっ、、が、、」

首を掴まれまともに声も出せないローザリアをモンスターはそのまま持ち上げる。

腕を掴み、足をバタつかせることしかできない。

モンスターが悪辣な笑みを見せる。


マリアンヌが杖から炎を撃ち出す。

しかし、仲間のモンスターが叩き潰して、ローザリアの救出には至らない。

炎を潰したモンスターがマリアンヌに向かって来る。

バルデスが守りに行こうとするがまともに動けない。

マリアンヌの目前に迫り、モンスターは腕を伸ばす。

その手は空振り、地面につく。

モンスターは頭を失っていた。

ローザリアを掴んでいたモンスターも首を失って倒れこむ。

もう1体のモンスターもいつの間にか首を失い倒れていた。

ローザリアは地面に倒れながら、

「コホッ、コホッ、コホッ、何があったの?」


そこにはウィルがいた。

「母上、遅くなって申し訳ございません。」

ウィルの手から光がマリアンヌの左手に届く。

瞬く間にマリアンヌの左手が美しい姿に戻る。

「ウィル、ありがとう。」

「母上、少々お待ちください。」

ウィルの姿が欠き消える。


いつの間にか屋敷から戦いの音が消える。

次の瞬間、屋敷の外で爆発音が鳴り響く。


しばらくして、ウィルが戻って来た。

ソニアを連れている。

「お待たせしました。周辺の敵は殲滅してきました。カリーナ、手分けしてこの回復薬を怪我人たちに飲ませてあげて。飲めなければかけるだけでも効果あるから。」

「承知しました。」

ウィルがカリーナに大量の回復薬を渡す。

次にウィルはバルデス、ガラリア、ローザリアと回復していく。


「改めてありがとう。ウィル。」

「助かりました。ありがとうございます、ウィル。」

「命の恩人です。ありがとうございます。」

口々にお礼を言う。


「ご無事でなによりです。ですがドラクロア家に喧嘩を売った愚か者に罰を与えねばなりません。」

「行くのですか?」

「はい。屋敷内の怪我人の治療が終われば行きます。また襲撃の可能性があるのでソニアを残します。ソニアがいれば多少の襲撃があっても大丈夫です。任せるぞ、ソニア。」

「ご安心ください。ウィリアム様が戻られるまでお守り致します。」


今回の襲撃により、ドラクロア家では4名の騎士が亡くなるという被害が出た。ウィルが来なければ全滅もあり得たことを考えれば、最小限の被害で済んだとも言える。モンスターたちが確実にトドメをさすことよりもドラクロア家の面々を先に殺すことを優先したことも影響しているだろう。ウィルが大量にばらまいた回復薬、エリクサーは超高級品。体の部分欠損程度なら修復し、瀕死の状態でも瞬く間に傷口を塞ぎ、一命を取り留めさせる効果を持つ。


ウィルはまずウィリアムの街に転移した。

「慌ててどうしたんだ?」

ディーンは急に転移してきたウィルに慣れた様子で問いかけた。

「ドラクロア家が襲撃された。相手は人とモンスターの中間のような奇妙な姿をしていた。詳細はこれから調べる。まずは警備を強化してくれ。」

「わかった。至急連絡を回して対策をうつ。」

「頼んだよ。追加の情報がわかれば報せるから。」

そう言い残すと再びウィルは消えた。

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