仕上げ

「どこに行っていたのですか!

大変なことになってきたんですよ!」

いきなり、オスカーが戻ってきたウィルに詰め寄る。

「ごめん、ごめん。ホセイ鉱山に行ってたんだ。何かあったの?」

「ホセイ鉱山?そんな遠くに行く時間は無かったでしょう。何をおっしゃってるんです?」

「ウィリアム、わざわざホセイ鉱山まで行ったということは、鉱山解放の作戦が整ったのか?」

ウィリアム王子はウィルの行動に慣れたのか、いちいち驚かない。

「準備が整ったって言うか、もう解放してきたって感じかな。」

「なっ!?」

「どの程度のモンスターを退治してきたんだ?」

「周辺と坑道内部のマーダーアントはほぼ全滅させたよ。それと坑道奥の巣にいたマーダーアントも全滅。女王蟻も仕留めたし、モンスターが増えないようにゴーレムを設置しておいたから、いつの間にかモンスターが増えているってことはないと思うよ。」

「さすがウィリアム!

まさか、これ程の短期間にホセイ鉱山を解放するとは!

最強軍団を配下に多数持つウィリアムだ!」

「本当なのか?」

「オスカーよ、もうウィリアムを疑うのはやめておけ。もうウィリアムの異常さには慣れただろう。

すぐにブライト伯爵に伝え、坑夫を集めさせろ。鉱山を運用できるようになってから、陛下にお伝えすればよい。」

「承知しました。」


「さてと、ウィリアム。

オスカーが伝えようとしていたことを伝えておこう。

ミライ侯爵がもうすぐ王都に到着する。

なかなか辣腕として知られた男だ。窮地を打開するために何をしてくるかわからん。

お前のことだから大丈夫だとは思うが警戒しておいてくれ。」

「承知しました。そろそろ決着をつけたかったから、ちょうどいいじゃない。」

「確かにな。こんな争いは早く終わらせたいのは私も同感だ。だが、ミライ侯爵がどんな汚い手を使ってくるかわからない。単純な力業ならお前には通用しないだろうが、搦め手もあるだろう。常に注意してくれ。」

「そうですね。十分注意しておきます。」


さあ、勝負の時間だね。

もうすぐミライ侯爵が王都に到着する。

ここで決着をつけたい。

そろそろロンム王国の生活にも飽きてきたし。

ミライ侯爵、ライラ王女、ロビン王子たちにここで再起不能な致命傷を与えたい。

もう罠は張っている。

後は仕上げだ。どこまで上手くいくかはやってみてのお楽しみだね。




ミライ侯爵サイド

自領を出発してかなり日付が経過した。

もうすぐ王都に到着する。

早馬を走らせてライラには連絡を入れている。

これから立て直す。

ウィリアム王子にはしてやられた。正直に想像を超える攻勢だった。もしかしたら先日のフィガロでの戦いで一皮むけたのかもしれない。

だが、まだ勝機はある!

国王が王位にしがみついている間に、また流れを戻せばいい。

まだまだ後継指名をしないだろう。

私が王都に入れば王子に好き勝手はさせない。

待っていろよ!


夕方、もうすぐ王都に入るというタイミングで、ミライ侯爵の馬車の前に騎馬が2騎近寄ってきた。

「殿下、女王陛下がお待ちです。

こちらへどうぞ。」

「どういうことだ?」

「女王陛下より殿下をお連れするようにご指示を受けております。」

「わかった。」

騎士の先導に従い進んで行くと、目を疑う光景があった。

数千の兵士が待機していた。

「何事だ!?」

そのまま進んで行くと、ライラ女王とロビン王子が待っていた。

「お父様、お待ちしておりました。」

「こんなところで何をしているんだ!?」

「???。お父様のご指示通りにしているだけですが?」

「私の指示?どんな指示だ。」

「『王都西の森に集められるだけの手勢を集め、私が到着するまで息を潜めて待機せよ』とのご指示を頂きました。」

「バカな!

私はそんな指示などしておらん!

こんなところに大軍を潜ませるなど、まるで、、、

はっ!?しまった!ハメられた!

くそっ、すぐに兵士を解散させろ!

今すぐだ!」

「どういうことですの?」

「ハメられたんだ!

こんなところに大軍を潜ませているのがバレてみろ!クーデターをしようとしていたなどと言われてしまうぞ!」

「そんなっ!?私は王女ですよ。王女がクーデターなど、あり得ませんわ!」

「そんなことはわかっている!だが、ウィリアムは我々がロビンを王にするために強行手段に出たという筋書きを書いたんだろう。

謀反の疑いは簡単には晴らせん。それも王都のすぐそばで伏兵をしていたという証拠を出されると、逃げきれんぞ!」

「わ、わかりました。すぐに兵士を解散させますわ。」


その時、

「貴様らはどこの軍勢だ!

ロンム王国の王都付近に兵を潜ませるなど言語道断!

あの世で後悔させてやろう!」

ウィリアム王子の声が響いた。


「ウィリアム!?

くそっ!早過ぎる。

ヤツめ、謀ったな!」

「私です!ライラです!王女に槍を向けるとは何事ですか!」

ライラ王女が大きな声を張り上げて反論する。


「バカな!

王女が王都のすぐそばで兵を潜ませるはずが無いだろう!

吐くなら、もう少しマシな嘘を吐くんだな。」

ウィリアム王子が一蹴する。

「ウィリアム王子!私の声がわからないのですか!」

「真偽は捕まえてから調べればよい。もし本物の王女なら、こんなところに兵を集めた理由を聞かせてもらいたいものだな。

隠れて兵を集めるなど、クーデター以外何物でもないだろう。

かかれ!」

ウィリアム王子の指揮に従い兵士たちが一斉に攻めかかる。

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