目指せ!ダンジョン
冒険者ギルドを出ると、
「さすがだね。ウィルがあんなに動けるなんて知らなかった。」
「たかが酔っ払いの相手なんて楽勝だよ。
見直した?」
「あれだけ動けるなら、モンスターとも戦えるんじゃない?」
「ソニア、モンスターを甘く見てはいけないよ。モンスターはこちらを殺しにくるからね。」
「カシムの言う通りだね。
本当の戦闘はあんなに簡単には行かないよね。」
「ええ。ですが、ウィルの今までの鍛練はしっかりと身に付いていますね。」
「カシムにそう言われると嬉しいよ。
さてと、ようやく冒険者になれたし、次は目指すダンジョンを決めようか。」
「領内にあるカロンゾダンジョンではないのですか?」
「少なくとも領内は出ようと思ってる。さすがに偉そうに家を出て、ずっと領内にいるのは格好がつかないからね。
カシム、国内のダンジョンで最も強いモンスターが出るのはどこだい?」
「そうですね。2つある未踏破ダンジョンのどちらかになるのではないですか。」
「未踏破ダンジョン?なんだいそれは?」
「モンスターのレベルが高く、最深部の攻略がまだのダンジョンのことです。国内にあるのは『見果てぬ塔』と『帰らずの回廊』です。」
「面白い名前だね。それぞれの特徴を教えてよ。」
「通常のダンジョンはそのまま地名で呼ばれますが、知名度が上がると、別名がつけられる場合があるんです。
『見果てぬ塔』はそのまま高い塔のダンジョンです。国内で最も人気のあるダンジョンです。
各階毎に多彩なモンスターが出てくるダンジョンでドロップアイテムの種類も豊富。
更に一度到達した階には入口にある魔法陣を使えば、一瞬で転移ができるのも人気の理由です。
塔のそばにあるホランの街は別名『冒険者の街』とも呼ばれています。」
「確かに冒険者にとっても、商人にとっても理想的な環境だね。
もう1つの『帰らずの回廊』はどうなの?」
「こちらは全くの不人気ダンジョンです。
冒険者はほとんどいません。
ダンジョンに出てくるのがアンデッドばっかりで、しかもドロップアイテムが魔石だけ。
わざわざ、ここで稼ぐ冒険者はおりません。プリースト等、一部の対アンデッドに特化した職業を持つ者が挑戦する程度です。」
「よし!それじゃ、『帰らずの回廊』に行こう!」
「えぇっ!カシムの話、聞いてました?」
「もちろん。僕らの目的は小銭稼ぎじゃない。
まずは他の冒険者の少ないダンジョンで肩慣らしだ。」
「確かにトラブル回避にはなるかもしれません。」
カシムはだいたい反対しないね。
僕の意見を尊重するように父上に言われているのかもしれないな。
「よし、目的地も決まったし、次は冒険者の必需品などを買い揃えようか。」
家を出る時、父上からショートソードと準備金を頂いた。
初級冒険者が持つには良過ぎる代物だ。
準備金も、節約すれば1年ぐらい生活できそうな額だった。
父上も母上も僕に甘いね。
「そう言えば、カシムやソニアの荷物はどうしてるの?」
「街の門にいる衛兵に預けています。」
「オデロ様のおかげです。
普通の冒険者は、泊まっている宿屋等に預かってもらいます。」
「そうなんだ。じゃあ買い物をしようか。」
カシムやソニアの案内で色々お店を回りました。
そして、ようやく街の門に到着。
3人とも荷物でいっぱいだ。
「ウィル、買い過ぎです。これでは私とソニアの荷物が持てません。
荷物を少なくまとめるのも冒険者に求められる技術ですよ。」
カシムは優秀だね。あえて僕の買い物を止めず、持てないようになってから注意する。
失敗した方が身に付くからね。
「カシム、ソニア、これから見ることは口外しないでね。」
そう言うと僕は荷物をすべて『アイテムボックス』に入れてしまった。
「えっ、えっ~。荷物が消えちゃった?」
「『アイテムボックス』のスキルを持っているのですか!」
カシムはわかったみたい。
「内緒だよ。」僕はにっこり笑う。
カシムは頭をおさえてしまった。
「ウィル、これはおおごとですよ!
『アイテムボックス』は非常に貴重なスキルです。特に戦争への参加の多いドラクロア家にとっては兵站確保の上で、非常に重要です。今すぐ邸に戻りませんか?」
「まあまあ、そう興奮しないでよ。
『アイテムボックス』を持つ僕が、これからダンジョンに行ってレベルアップを繰り返す。悪くない選択だと思うけど。」
『アイテムボックス』は異空間にアイテムを保管できるスキルだ。
スキルレベルが上がれば、保管できる容量がアップしていく。
レベル1だと大きな鞄1つ分程度だが、最大値のレベル10まで上がると、大きな倉庫2~3個分になる。
そして、すべてのスキルはレベルアップの時に、運が良ければ、スキルレベルもアップすることもあるのだ。
『フリーター』はレベルアップのチャンスが多い。
『アイテムボックス』レベル10ともなれば、貴族や豪商等から引っ張りだこになる。
カシムはしばらく考えてから、
「わかりました。ウィルの考えに従います。ただし、オデロ様に報告する際は、このスキルのこともしっかりと報告して下さいね。」
「わかったよ。」
門の衛兵から荷物を受け取り、人目の無い場所でアイテムボックスに放り込んだ。
「さてと、今日はどの宿になさいますか?」
「いや、アデードを出るよ。」
「お待ちください。今から街を出ると、日没までに野営地までたどり着けません。
街を出る時は次の街や野営地までの時間を考える必要がございます。日没までに間に合わない場合は出発を改めましょう。」
「いいから、いいから。僕に考えがあるから、街を出る準備をしてよ。」
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