冒険者ギルド

僕らはカシムから冒険者の情報を聞きながら、冒険者ギルドを目指した。


エール王国ドラクロア領の領都アデード。

大都市のため、冒険者ギルドの支部はあるが、ダンジョンがあるわけではないので、それほど大きくはない。


そんな冒険者ギルドに到着した。

入口には剣と杖のマークが書かれていた。

「ここが冒険者ギルドのアデード支部です。

冒険者ギルドの支部としては小さい方です。

ダンジョンの近くにある支部だと、ドロップアイテムを売りに来る冒険者と、それを仕入れに来る商人のために、複数の窓口が用意されるのですが、

アデード支部ほダンジョンが無いので、冒険者の登録や護衛等の依頼の斡旋だけに限られています。」


早速カシムの説明キャラが板についてきたね。

「ありがとう。

僕とソニアの冒険者登録をしてしまおう。」

「私もですか!」

「そうだよ。全員冒険者登録しておいた方が何かと便利でしょ。」

「そういうものなんですか?」

「ウィルの言う通りだね。登録しておいて損は無いよ。」

「わかりました。ではお願い致します。」


アデード支部に入った。

奥に窓口が3つ。

左手には冒険者向けの消耗品等の販売スペース。

右手には飲食スペースが用意されていた。


僕らが奥の窓口に向かって歩いていると、右手の飲食スペースにいた冒険者から、

「おいおい、ガキの冒険者ごっこは他所でやりな!ここは本物の冒険者が来る場所だぜ!ヒャッハッハハ。」


馬鹿がいた。

相当呑んでいるみたいだね。

周辺にいた冒険者は関わりたくない、と離れていった。

そんな周囲の変化にも気付かない2人組。


「メイドのねーちゃん、ガキの世話より、俺達と楽しく飲まねぇか。ガハハハ。」


カシムが出ようとするのを僕は手で制する。

「どこの世界にも救いようの無い愚か者というのはいるものだな。」

僕の声を聞いて、さっきまで下品に笑っていた2人組は真っ赤になって怒り出した。


「おいボウズ、大人をナメるなよ!」

「教育が必要なようだな!身体でわからせてやるよ!」

2人組がこちらに近付いてくる。


僕はカシムに周囲に聞こえる声で、

「雑魚が相手だ。手を出すな。」


「「テメェ!!」」

完全にキレた2人組が襲いかかってくる。

僕は2人の頭を掴み、地面に勢いよくキスさせ、そのまま押さえ付けた。


「「グハッ」」

よく声の揃う2人組だね。


僕はそのままの姿勢で、

「10歳に満たない子供が、護衛の騎士とメイドを連れてやってきた。

それがただの平民の子供のごっこ遊びな訳が無いだろう。

少しは冷静に僕がどういう存在かを考えてみろ。」


そこまで話をすると、2人組の抵抗が無くなった。


そのまま奥の窓口に行く。

固まった受付嬢が、

「えっ、あっ、えっと、今日はどういったご用件でしょうか?」

なんとか正気を取り戻したみたい。


横の窓口のおばさんが、若い受付嬢の横に立ち、

「申し訳ございません。現在フロアが騒がしくなっております。ご用件は奥の部屋で承ります。どうぞこちらへ。」


おばさんに連れられて、応接室に通された。

僕は座り、後ろにカシムとソニアが立っている。

しばらくすると、初老のおじさんがさっきのおばさんと一緒に入ってきた。

「お初にお目にかかります。アデード支部の支部長、ヘンデリークと申します。」

「ウィリアムだ。今日は僕と後ろのソニアの冒険者登録をするために来た。すぐに頼む。」

「承知しました。すぐに準備を。」

それからおばさんが書類を持って来たりと動き回っていた。


「先ほどはご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。」

ヘンデリークが謝罪をしてきた。

「冒険者への教育が為されていないようだな。」

「申し訳ございません。あの者達には然るべき罰を与え、再発防止に努めます。」


「再発防止は当たり前だ。これは貸しだ。

いずれ必要な事案があった際に返してもらうぞ。」

「承知致しました。ウィリアム様のご厚配に感謝致します。」


その後、無事に僕とソニアの冒険者登録が完了した。

渡された冒険者カードには血を垂らし、本人登録を行った。これで僕以外が使うことはできない。

冒険者カードには名前が書かれているだけで、他には何も書かれていない。

ギルドにある専用の魔道具を使うことで情報を読み出したり、書き込んだり、できるらしい。

すごいシステムだね。

ワクワクしてきた!

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