旅立ちの日

翌日、父上から呼び出された。

部屋をノック、

「ウィリアムです。」

「入れ。」

中に入ると、父上と母上が待っていた。


「ウィリアム。昨日の話だが、もう一度お前の決意を聞かせてくれ。」

「はい。僕はドラクロアの名を捨て、家を出て独立しようと考えています。」

「その言葉に二言はないな。」

「はい。」


暫しの沈黙

母上は黙ったままだ。

「ウィリアム、まずドラクロアの名を捨てることは許さん。お前がドラクロアの名を捨てて良いのは、私を超えた時だけだ。」

「でも、宜しいのですか!」

「反論は許さん。家を出たとしてもドラクロアの名に恥じぬ生き方をせよ。」

「わかりました。ウィリアム=ドラクロアとして、恥ずかしくない生き様をお見せします!」


ドラクロア伯爵家の名前は大きい。

エール王国内ならだいたいの問題を名前を出すだけで解決できる力を持つ。

悪用しようとすれば、色々悪用できてしまう。

それを名乗らせるということは、

僕の行いの責任を負う覚悟があるという父上の宣言だ。



「よし。では連れてこい。」

執事のバルデスが部屋を出て行く。


「連れて参りました。」

バルデスの後ろには2人がついて来ていた。

「この2人をお前に預ける。

『ナイト』のカシムと、『メイド』のソニアだ。2人の経費はこちらが持つ、2年間お前に貸す。2人を有効に使え。

2年で結果を出せ。そして2年後返しに来い。その時、結果を報告しろ。」

「わかりました。ドラクロアの名に恥じぬ結果を報告致します。」



父上、優し過ぎるよ。

カシムもソニアももちろん知っている。


カシムは我が家に仕える庭師の息子だ。エリック兄さんと同い年の親友だから、昔から知っている。

たまたま『就職の儀』で戦闘系の標準職『ナイト』になれたから、昔から憧れていた騎士になろうと頑張っている努力家だ。

真面目で努力家、エリック兄さんの親友、父上もとても気にかけている。

現在、レベルアップに取り組み、中級職に転職できれば、騎士に取り立てると内定も出ている。


ソニアは執事バルデスの娘だ。

彼女も『就職の儀』で『メイド』になり、ドラクロア家でメイド修行中だ。

執事バルデスの娘という身元のしっかりした彼女は貴重な人材だ。

まだメイド修行を始めて2年だから、まだまだ見習いだが、真面目に頑張っている姿から、母上が気にかけている。


父上と母上のイチオシの若手をつけてくれたんだね。



「父上、母上のご期待に添えるように頑張って参ります!」

僕はカシムとソニアを連れてそのまま屋敷を出た。



屋敷を出てすぐに、

「ウィリアム様、これからどうされるおつもりですか?」

「カシム、僕のことはウィルと呼んでくれ。さすがに街中で目立ち過ぎる。敬語も無しだ。」


「わかりました。

では、ウィル、どうする?」

「まずは冒険者登録だね。それからダンジョンにチャレンジしようと考えてる。

カシムは冒険者について詳しいの?」


冒険者ギルドを目指し歩きながら話を続ける。ドラクロア伯爵領の領都はかなり大きいからね、勿論冒険者ギルドはある。


「私も一応、冒険者なんですよ。Dランクなので、高くも低くもないぐらいでしょうか。」

「現役冒険者の生の声を聞かせて欲しいな。冒険者のシステムとかを一から教えてもらえると嬉しいな。」


「わかりました。簡単に説明致します。

冒険者の主な仕事はダンジョンに入ってモンスターを倒し、そのドロップアイテムを持ち帰ることです。

モンスターを倒すとアイテムがドロップするのはご存知ですか?」

「魔石とかだよね。」

「そうです。魔石やモンスターの素材、装備品など、様々なアイテムをドロップします。ただし、モンスターを倒すと必ずドロップする訳ではないので注意が必要です。

そのドロップアイテムを冒険者ギルドに渡すと、冒険者ポイントとお金が貰えます。

アイテム毎に全て決まっています。ただし、状態が悪い場合等はお金を減額される場合もあります。

冒険者はドロップアイテムとの換金で生活しています。その繰り返しの中で冒険者ポイントを貯めて冒険者ランクを上げていくのです。」


「ありがとう、カシム。

そのまま冒険者ランクを教えてくれる?」

「はい。

冒険者ランクはS~Gまであります。

ただし、Sランクは歴史的な快挙を成した人への栄誉みたいな位置付けですので、実際はAランクが最上位です。

冒険者登録をすると、Gランクからスタートします。そして、冒険者ポイントが貯まるとランクアップしていきます。

ただし、ポイントだけでアップできるのはDランクまでです。

それ以降は試験があります。

Cランク以上は能力、人間性ともに冒険者ギルドが認めた人物ということになります。

B ランク以上になれば、成功者として、冒険者の憧れの存在になります。」

「なるほどね。

じゃあ、父上や母上を安心させるためにもBランクを目指そうかな。」

「素晴らしい目標かと。

目標は高い方が良いですからね。」


カシム、それ、無理だと思っている人の反応だからね。。。

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