主婦マリヱの異世界性遍歴💕

Peeping Dom

第1話 主婦マリヱの細やかな幸せが崩れるまで

 私はマリヱ、ありふれた主婦です。自分で言うのも何ですが、三十五才にしては綺麗な方だと思います。街を歩けば男の人の視線を感じます。若い頃はけっこうモテてました。夫と結婚する前、恋人も沢山いました。でも、今は夫一筋です。

 夫の名前はヨシヲさんといいます。私より一回り上です。高校の教師しています。私が高校生の時、非常勤講師として赴任しました。その時、知り合いました。夫は超一流国立大学の大学院生でした。理科と数学の担当です。私は理科も数学も苦手でした。卒業も危ぶまれました。それでも親切に手厚い指導してくれました。お蔭様で、私も何とか卒業できました。それが清い交際の始りでした。高校卒業と同時にプロポーズされました。

 夫は大学院の研究を諦め、高校の教諭になりました。とても生真面目で品行方正な人でした。結婚初夜の日まで、私を抱こうとしませんでした。どうやら私が初めての女の人だったようです。私も遊び好きなチャラい男にはこりごりでした。そして夫との間に娘シモンが生まれました。今年で中学生になります。来年の高校進学に備えて大わらわです。


 ある日、大昔の元彼チャラヲと出遭いました。その日から、穏やかで幸せな毎日が崩れていきました。

 チャラヲは不良でしたが、不良の中ではマシな方でした。弱い者苛めやカツアゲとかはしてなかった筈です。昔は優しく、どこか憎めない所が有りました。だから好きになりました。でも今は、とっても嫌な感じがします。へらへらした笑顔は怪しさプンプンです。

 とっても嫌な予感がしましたが、無視もできませんでした。生真面目な夫と違い、人の心に踏み込むのが巧いのです。恐らく仕事はホストとかでしょう。きっと沢山の女を騙して泣かせているのでしょう。

 喫茶店に入ると、昔話に花を咲かせました。笑顔で聞き流しましたが、心は身構えていました。次の一言に凍り付きました。

「マリエちゃん。あの時の子供はどうしたのかな?」

「何故あなたが知っているの? 妊娠が判る前に、あなたは私の前から去ったじゃない?」


 きっと、お金が目当てだわ。強請るつもりね。何不自由ない生活を送っているけど、我が家には余分なお金は無いわ。お金で済ませたら、これからも強請られ続けちゃう。今の幸せを壊したくない。どうしよう、どうしよう、本当にどうしよう?


「マリエちゃん、ナニをそんなに熱くなってるの? 別に俺は取って喰おうって訳じゃないんだよ。ただ昔に事思い出しただけだよ」

「夫は知ってるわよ。知ってる上で私と結婚したの。『僕の子として大切にする』とまで、言ってくれたわ」

「へぇ~、マリちゃん、好い男捕まえるの巧いよね。そりゃーそれで好かったね。俺も、そろそろ時間だから、おいとまするよ。それじゃーな!」


 これで切り抜けられたと思いました。ハッタリが効いたみたい。夫が承知と言うのは嘘です。生き別れた息子のことは、夫には秘密でした。改めて罪の意識に苛まれます。

 私は十五歳の時、チャラヲと付き合っていました。始めての相手は別の人でした。二人目の彼氏がチャラヲです。チャラヲは情熱的でした。

「俺の子供を産んでほしい。大切にするよ!」

 私もついつい真に受けてしまいました。

 でも、ある日突然、私の前から去りました。彼の母親やワル仲間たちも知らないようでした。私も別の彼氏でも探そうと思っていました。でも、暫くして異変に気が付きました。時折、吐き気を催しました。彼の子を身籠っていたのです。

 周りからは中絶を勧められました。中絶は人殺しだと思っています。そんな悲しいことはできない。私は周りの反対を押し切って男の子を産みました。女一人で育てるつもりでした。しばらくの間、お腹を痛めて産んだ子に乳を与えていました。

 今度は、周りから里子に出すように勧められました。結局、丸め込まれてしまいました。息子の幸せの為、身が引き裂かれるような思いで手放しました。

 それから私は高校に入り直しました。転校したので、私のことは誰も知りません。新しい高校でも、同級生や先輩、後輩とも、お付合いしました。勿論、きちんと避妊しました。それから暫くフリーだった頃、今の夫ヨシヲさんと出遭ったのです。それからは夫一筋です。一度も浮気をしたことはありません。結婚前だって、お付合い中は浮気なんてしてません。


 喫茶店を出ると、まっすぐ家に帰りました。暫く平穏な日々を過ごしました。やがて、ある異変に気が付きました。

 夫と娘が、私を疎んじている様なのです。

 娘のシモンは幼い頃からパパっ娘でした。

「わたしパパと結婚する♡」

 幼い頃、夫とお風呂に入りながら言ってました。他の家では、娘さんは父親を毛嫌いするそうです。娘シモンは父親を毛嫌いする素振りは有りません。それどころか、娘は以前よりも夫と親しげです。夫のヨシヲさんは、まるで娘の彼氏みたいです。初めは微笑ましく思ってました。

 しかし、夫と仲良くなる替りに、娘シモンは私を疎んじ始めたのです。露骨に毛嫌いしませんが、私に対する視線は冷たくなりました。

 夫もナニか妙に気を使っている感じです。夫との営みも無くなりました。

 家族団らんの時も、私だけ話の輪に入れません。仲間はずれでにされた気分です。家の中に私の居場所が無くなりそうです。


 ある日、買い物から帰ると家には誰も居ません。夕方になっても、夫や娘も戻ってきません。どうしたのかしら?

 一人で夕食を済ましても未だ帰りません。寝室に入ると、ナニかがおかしい。服が脱ぎ捨てらています。夫は几帳面に服を畳む人です。ベッドの布団もシーツも乱れています。そしてシーツには濃い染みがついていました。明かりを付けて驚きました。それは血痕だったのです。シーツの上には、夫の眼鏡に、結婚指輪までが転がっていました。

 脱ぎ捨てられていたの夫の服だけじゃありません。娘の下着まで混ざっていたのです。えっナニ?

 まさか実の父と娘が?

 結婚指輪をベッドの上に投げ捨てるなんて、私を捨てて実の娘と駆け落ちしたの?

 そんなことはないわよね。私はオロオロしながら家の中を彷徨いました。そうしながら娘の部屋に流れ着きました。

 娘の机の上には差出人不明の封筒が置かれています。封は切られています。私は中身を改めました。何枚も写真が入ってました。私は息が詰まり、涙が流れました。

 それは私の若い頃の写真でした。彼氏たちとHをしてる写真でした。若気の至りとはいえ、若い頃の私って何て馬鹿なの?

 彼氏とひとつになって、笑顔でピースサインしている。それに夫にも、したことがない、あなことやこんなことまで、写真に撮られていました。私は、おだてられて頼まれると断れない性分なのです。

 中には手紙も入っていました。汚い字です。ところどころ誤字もあります。先ず、私の隠し子、更に若い頃の性遍歴が綴られています。そして極めつけは、私の夫つまりヨシヲさんは、娘シモンの実の父親でないと言うのです。ここだけは、とんでもない出鱈目です。シモンの父親はヨシヲさん以外にありえません。産んだ私が言うのです。間違いはありません。

 でも、娘が真に受けるのも無理も有りません。あんな恥ずかしい写真を見せられたら、私を信じられないでしょう。娘の考えは察しがつきます。私に裏切られたパパはかわいそう。でも血のつながりが無い。だから男女の関係に成っても好い。何という早とちりでしょう。でも、夫と娘を憎めない。全部、私が悪いのよ。詫びて許されるのなら、何でもするわ。私は泣き崩れたまま朝を迎えました。

 夜が明けても、夫と娘は帰ってきません。

 悪いのは私なのよ。私を追い出せばいいじゃない!

 私は家の中で呆然としていました。

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