初恋リスタート
黒い猫
第1話
「初恋って、叶わないよね」
高校の昼休み。何人かの女子たちが集まってそんな話をしているのが偶然耳に届いた。どうやら昨日放送されたドラマでそういった場面があったらしい。
――ドラマ……か。そういえば……。
ふと思い返してみると、私はこの言葉をどこで聞いた様な事があった。
――でも。
ただ、具体的な事は何一つ覚えていない。
そもそも今の様に誰かが話しているのを又聞きしたのかも、誰かと話している時に聞いたのかも、はたまたテレビで聞いたのかも、漫画や雑誌で見たのかすら覚えていない。
でも、この「叶わない」という要因は様々だと思う。
例えば、その相手が「既婚者」という場合や「友達だと思っていて、恋愛対象と見られていなかった」というのが上げられる。
――まぁ、ほとんどの場合は小さい子供の頃だろうから、保育園の先生とか近所の年の離れたお兄さんやお姉さんだろうけど。
そのため、大体失恋の原因は前者だろう。
ちなみに私『
――ああでも『初恋』を意識したのは……あいつの一言だったっけ。
「香里ちゃん。これからもずっと僕と仲良くしてくれる?」
そんな事を言われたあれは……確か小学校の頃だったと思う。
――放課後だったとは思うけど、明確に「いつ」とは覚えていなのよね。
しかし、湿気で蒸し暑くなり始めて当時お気に入りの傘を持っていたから、季節としては梅雨だったかも知れない。
――あれ、私。この言葉になんて答えたっけ。まぁ、多分普通に「うん」って言ったとは思……あー、でもあの時の私。素直じゃなかったからなぁ。
そんな少し懐かしい記憶を思い出しながら教室の窓に視線を向けると、そこにはあの日と同じ青い空が広がっていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
私の家庭はいわゆる「転勤族」というヤツで、保育園の時もそうだったけれど小学校は二回転校をしている。
――最後の転校は……中学の二年の時だったわよね。
そしてあっという間に高校生になり、今では家から一番近い高校に通っている高校三年生だ。
――まぁ、もうすぐ卒業だけど。
私には「友人」と呼べる人はなかった。
――結局「友達」なんて、今のところ「あいつ」だけだったなぁ。
高校を卒業した後の事は……実はあまり考えていない。でも、とりあえず近所の大学に通う事になっている。
ただ正直なところ、こうまで転校が多いと「友達」を作る気力も失われてしまうのも事実で「あいつ」とも私が転校して最初の頃は連絡を取っていたけれど、それも次第に少なくなっていった。
――ああ、正確には「取れない」か。
チラッとさっきの女子のグループに視線を向けると、何やらスマートフォンを見せ合いながら楽しそうに話している。
「ねぇねぇ! かっこいいよね!」
「そうそう! 昨日のドラマもよかった!」
「……」
そんな時、一人の男性の姿が写っている画像が見えた。
「ねぇ! ゆきと! 超かっこいい!」
「モチ! 今売り出し中の俳優じゃん!」
――へぇ、忙しそうだけど元気そうにやっているじゃん。
そう、今話題に上がっていた俳優の名前。それが私の唯一の「友人」だった『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます