山田くんの絶望?しかない急展開マーダーラブコメ

伝統的建造物群保存地区在住ククルパン三世

リア充は死ね

山田くんは、わたしの手をそっと握った。

「おれがずっと側にいるから」

それはまるでプロポーズみたいで、わたしは泣きそうになった。

「うん……ありがとう」

涙をこらえて、精一杯微笑むと、彼は照れたように笑った。

「もうすぐだね……」

「うん」

「来年は受験だし、再来年には卒業しちゃうんだよね」

「そうだな」

「こうしていられるのもあと少しかぁ」

「でも、卒業したって会えるよ。今まで通り、毎日会う」

「そうだけどさ……。なんか寂しいなって思って」

「…………」

彼の表情に影が差した気がして、ハッとする。




しまった。

これじゃあまるで別れ話を切り出しているみたいじゃないか。

「あっ、あのっ!別にお付き合いをやめたいわけじゃないんだよ?ただなんというか、その……」

慌てて言い訳をしていると、彼がふっと笑う気配を感じた。

「わかってるよ。そんな慌てんなって」

見上げると、彼は優しく笑っていて、胸がきゅんとなる。

「不安なんだろ?」


「えっ!?」

図星だった。

どうしてわかったんだろう。

驚いて目を丸くしていると、彼はくすりと笑いながら言った。

「おれも同じだからわかるよ」

「同じ?」

「ああ。今の関係が終わったらどうなるのかなって考えたりすることない?」

「あるかも……」

「おれもだよ。不安になる時もある。だからさ、その時が来た時に後悔しないようにしようと思ってるんだ」

どういう意味だろう? 真意がわからずに黙っていると、山田くんは再び前を見て歩き出した。






「嗚呼、しんどかった。今日で一年間のお試し交際も終わりだな。さよなら。」



次回予告

「一秒後、カップル消滅。そしてストーリーは混沌となる。」

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