第3階層 学園帝国 工房棟 あぐりっぱのへや
「やあ、お帰り。君臨猪の武器が出来てるよ」
学園に戻り、真っ先に工房棟に向かった。
我が一味専属のエンジニア、アグリッパ某に収集品の管理と武器のメンテナンスをしてもらう為だ。
初めての冒険についての興奮を聞いてほしいって思惑もあるけれど。
「刃の根元に埋まっているのは君臨猪の《魔核》を研磨したものだよ。猪鬼族は耳長と同じで《魔核》にスキルを記録しているからね。君臨猪のスキル《悪食同化》を利用して、モンスターの血肉で再生する剣をつくったよ」
限界まで研いだような薄い剣鍔シミターだった。骨を削ったような質感で、実際にオークロードさんの骨を素材にしているのだろうけど。
何か血を吸わせ過ぎるとオークロードさん復活!とかしそう。
「それはないよ。この刃の形がこの子にとっての正常だ。そうなるように《魔核》を研磨して調整したからね。骨が折れたよ。粉末にして再結晶化させる方が簡単なんだけど、それは耳長の専売特許だから面白くないしね」
何か鉱物みたいなんだね《魔核》って。
もしかして耳長が長命なのはこの宝石みたいなやつのおかげだったりするのかな。
我々は果実を、耳長は石を取った。だから我々は果実のようにたくさん生まれては腐り、耳長は石のように永遠を生きる。だったっけ。石って《魔核》の、ことだったり?
「あれ?わたしが聞いた話と違うっすね。確か丸耳は果実を、我々は石を取った。だから丸耳はリンゴだったりメロンだったり多様なサイズの胸をたわわに実らせ、我々は崖だったり城塁だったり一様なサイズの胸で常盤を生きるのだ、と。泥水は一族の可能性。希望だと」
我が同胞の寿命は短い。神話として語り継がれてきた話が、何世代も経て間違って伝聞された耳長共の虚しい僻みだったとは。
ちなみに、果実を取って死ぬ定めになった我々に、手長が火と知恵を与えたというのは
「ああ、最初の足長がリンゴもぎってきたから、美味しいアップルパイを焼いた話だね。『ずっとそばにいてくれ』と見事、言質をとった伝説的な手長として有名だよ。良い夫と良い足長を掴むには、まず胃袋からって、母から子へ語り継がれているね」
どこまで我らを愚弄する気だ!
「霊復鰐の皮だけども、あれでスーツをつくれば使い減りしなくて都合がよいね。勿体ないから全裸で戦うとか本末転倒なことをしないですむし」
話を流されたがまあよい。本当にどうかしてほしいどうかしてる案件なのでお願いしよう。…革のスーツ。カッコいいのかな?それ。
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