第2階層 我が試練の塔 2層 決闘者対草原醜
やたら腰の低い草ゴブさん達に引っ立てられて外に出た。
無数の天幕に囲まれて草原が見えない。一夜にして現れた大集落。全てひっくるめて、ユニークモンスター・首長ゴブリンさんである。
我には首を傾げる話ではあるが、耳長どもの定義ではそうなったのだ。耳を傾けても理屈は理解出来なかったが、首長をくびながと読んでしまった我である。耳長どもに従うべきだろう。
くびながごぶりんさん。探せばいるんじゃなかろうか。
等々つらつら考えていると大柄な草ゴブさんの横に座らされた。草原の気候に適したあったかモコモコした服も、他の草ゴブさんに比べてちょっと華やかに見える。
彼が首ゴブさんなのだろう。耳長どもの戯れ言を吟味してやるとしたら首長ゴブリン・本体、と言ったところか。
首ゴブさんが我の腰に手を回して蝙蝠乳酒を飲み干す。ソウゲンモコモコウモリの丸焼きから肉を切り出し豪快にかじりつく。上機嫌のようだ。
「勝手に触んな。私の尻だ」
お前のじゃねーよ。我のだよ。
何故か我は花嫁または捕らわれの姫ポジションで首ゴブさんに尻を撫で回され、泥水ちゃんは下座というか、首ゴブさんの対面で一緒に飯食ってる。
「乳酒っつってもジュースみたいなもんだな。聖母様今度作ってくれよ」
「そしたら《神乳》が《神酒》になっちゃうよ」
「はっはっはっはっ。縁起でもないなっ」
むしろ縁起物なのではないのか。
乳と肉を平らげると、泥水ちゃんは立ち上がる。
「立てよ大将。こっちはもう矢も盾もたまらねぇんだからよ」
血沸く一族を鎮めると、首ゴブさんも立ち上がる。
興奮する草ゴブさんたちは、首ゴブさんが手を上げるだけで静まった。統率された一流の戦士たちだ。
上げていた手をゆっくり前へ振り下ろす。
「「「ガアァァァァァ!」」」
首ゴブさんが手を下ろした途端、草ゴブさんたちが一斉に剣をかち上げて泥水ちゃんに襲いかかった。
手を上げたのはステイじゃなくてスタンバイのポーズだったのかよ!
なるほど、全てひっくるめて首長ゴブリン。一族は己の手足も同然だから何ら恥じることはない。納得の理由だ!
しかし泥水ちゃんもなかなかの手練れ。性根の爛れた者同士、行動を読んでいたようだ。
草ゴブさんの山が吹き飛んだ。爆発の中心には泥水ちゃん。
シャドウシーフさんの収集ポーチに入っていた上級罠セットより鉄球を一掴み取り出し、挽き肉を作っていく。
鉄球が似合う系女子だな。
「はっ。この塔にはカマ野郎しかいねえのかよ。来いよ玉無し。あとはてめえだけだ」
彼女は拳鍔シミターの事を覚えているのだろうか。でもこれ、伝家の宝刀抜くよりも早くけりがつきそうだな。
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