病的恋愛症

第9話

「じゃあ、京人に7月中何をしていたのか教えるね」

由奈はブランコを揺らしながらそう言った。

「これ見て欲しいの」

由奈はさっきまで花火を入れていたコンビニの袋からノートを取り出して僕に見せてきた。

そこにはたくさんの名前の横に住所らしきもの。なぜか、名前には見覚えがあった。

そして、よくわらない文章が連なっていた。

「由奈、これは何？」

「これはあの時、荒木がいた時の同じクラスだった人達。そしてその住所と侵入経路」

侵入経路？なんで今更小学生の頃の話を？

わからないことが尽きなかったが、由奈は話を続けていた。

「これを全部調べて、家をみて侵入経路を確認した。安心して、絶対に成功する」

「あの、由奈の話がよくわからないんだけど…」

「ああ、そういえばまだ話してなかったね。

私はあの時、荒木がいじめをしていた時、同じクラスだった奴を全員殺す。」

僕は由奈の言っていることの意味がわからなかった。

「私はいじめをなくしたいの、そのためにはこのくらいしないと」

由奈はそう言って僕の額を撫でた。

「ちょっとまってよ、なんで殺すの？

殺すなんて嫌だよ」

「殺すくらいしないと人の心には刺さらないよ」

「そうだとしても殺すなんて間違ってるよ」

「ねえ、京人、どうしてわかってくれないの」

「わからないよ、人を殺すなんて間違ってる」

由奈はうつむいて何かを考えていた。

小さなため息を漏らしてぼくをみてはっきりとこう言った。

「じゃあもういい、京人を頼ったことが間違ってた」

由奈の目からは明らかな怒りを感じた。

こんなことはいいままでで始めてだった。

由奈に嫌われてしまう

僕は由奈に言われた、信じていてほしいという言葉が浮かんだ。

あの崖で起きたことを思い出した。

その瞬間口が勝手に動いていた。

「僕がやるよ」

「え？」

「だから、僕が殺してくる」

由奈の目から怒りの色が消えて、いつもの由奈に戻った。

「ありがとう、じゃあ明日の夜実行しよう」

由奈は僕に計画の内容を逐一伝えた。

由奈の計画は完璧だった。

これなら全員を殺しつつも僕達がやったとバレることはない。

いまだに実感が湧かないが、失敗してしまえば確実に捕まってしまう。

もしかしたら明日が僕らの最後の日になってしまう可能性もある。

なら、僕が絶対に由奈と行きたかった所に行きたかった。

「ねえ由奈、明日の午前中行きたい所があるんだ」