第5話

由奈と僕の深夜の語らいは2時間程度まで及んで、気づけば28時を回っていた。


「付き合ってくれてありがとうね。

 また呼ぶかもしれないけどいい?」


「そんなかわいい顔で見つめられて断れる人はいないよ」


「やったね」


由奈と別れて家のベットに入っても頭の中は由奈のことでいっぱいだった。


次の日、僕の体は明らかに寝不足によって不調だったが、そんなことよりも由奈と過ごせた幸せでいっぱいだった。




春の陽気が消え去り、だいぶ生徒会にも慣れ始めていた頃のある放課後、僕は生徒会室で本来は会計の仕事である会計広報をまとめていた。


「京人くんはえらいね〜、俺だったら絶対断るわ」


頬杖をつきながら副会長の先輩がそう言う。


「先輩はどうしてまだ生徒会室に?」


少し嫌味っぽくなってしまった。


「彼女の部活が終わるの待ってんの、ここクーラー効いてて涼しいじゃん」


「はぁ…なるほど」


そんなことなら僕の作業を手伝ってくれ。


「そんな顔しないでよ、ほら、広報手伝ってあげるから」


この先輩はなんだかんだいい先輩だ。


「ごめ〜ん、おそくなったぁ」


「あ、お疲れ様〜」


この人が先輩の彼女さんか、そういえば生徒会長に立候補していた気がする。


「生徒会室涼しいね〜」


「ちょっと涼んでく?」


そう言って先輩とその彼女は生徒会室に居座っていた。


「あ、君が書紀くん?私去年まで生徒会長し

 てたんだよ〜

 まあ、今年はなんか凄い子が出てきて負け

 ちゃったけど」


「えっと…初めまして…」


「初めまして、困ったこととか、わからないことがあったら聞いてね」


「はい、ありがとうございます」


まさに人見知りの会話だ。実際人僕は見知りなのだが。


それから先輩達は十数分ほど談笑を繰り広げた後、生徒会室を出て行った。


「じゃあまたね〜、広報あとちょっとだけだからよろしく!彼女の大塚ちゃんと仲良くね〜」


え?






その日の26時、僕はまた由奈と夜道を歩いていた。


「由奈、副会長の先輩に何故か付き合ってることバレちゃった…」


「あら、まあバレちゃったものは仕方ないよ」


「なんでだろ…」


「あの人は勘が鋭いからね」


由奈は大して大事だとは思っていないらしい。


「蒸し暑いね〜」


「そうだね、もう夏みたい」


梅雨が明けようとして夏が始まろうとしている。

今日は今年初の夏日で夜になって太陽が

沈んでもじっとりとした暑さが続いていた。


「ねえ京人、ずっと歩いてると疲れちゃうから、あそこで座ってお喋りしない?」


由奈が指差したのは小さな公園のブランコだった。


「いいけど、なんでブランコ?」


「楽しいじゃん」


そう言って由奈は無邪気に笑った。

今夜も長い夜になりそうだ

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