第119話 リュウとの再開
「魔神の鍵と獣神の鍵を交換せえへんか?パンドラボックスもつけるで。」by関西弁ミミック
ナース宛てに贈られてきた内容に、僕たちは一瞬固まってしまった。
(罠だ。パンドラボックスを餌にした罠に違いない。)とファラオボックスのアヌビス。
(いや、魔人が倒された今、そうでもしないと対等ではいられないんじゃ。)とメタルボックスのアミナ。
(もらっとけばいいんじゃない?罠でもなんでもそうするしか無いんだから。)とうさぴょん。
など様々な意見が吹き荒れる。。
しかし、いずれにしても鍵を交換するしかないのだ。
僕らは提案を承認するという旨のメッセージに、交換に応じる時間と場所を指定した。
・・・・・・・・・・・
交渉当日、僕はジークフリートとタケルを連れ、交換場所である中央階段前へと向かった。
僕らが到着してから5分後、リュウは魔人2体を連れ交換場所へと現れたのだ。
魔人2体のけた外れの魔力に僕らは交渉前から圧倒されていた。
(光、久しぶりやな。)
僕らを騙しお互いに殺し合った相手。ハルクやクロコを葬り、リリアに重傷を負わせたリュウ。
僕の中でくすぶっていた怒りがこみ上げてくる。
(ああ、久しぶりだなリュウ。まさかまた会えるとは思っていなかったよ。)
(俺もや。)
リュウを見て実感した。ああ、僕はリュウを殺したいのだ。
僕たちを騙したことや彼が殺したハルクやクロコについての僕のネガティブな感情は、再び出会ったことで静かに燃え上がっていた。
(お互い忙しい身やから、さっさと要件を済ませてしまおうや。これが獣神の鍵とパンドラボックスや。)
リュウは僕の目の前に獣神の鍵とパンドラボックスを用意した。
確かにパンドラボックスは本物だ。獣神の鍵も本物だろう。
リュウは僕に駆け引きをするつもりはなさそうだ。
僕も同じように魔神の鍵を差し出す。
リュウはその鍵をチェックし、そのまま鍵を宝箱の中へと収納した。
(リュウ、一つ聞きたい。なぜ君はパンドラボックスを渡そうとしたんだ?)
僕は気になっていた質問をリュウにぶつけた。
(そんなの簡単や。俺には必要のないものやからや。
それに俺がずっと持っているとお前ら奪いに来ようとするやろ。
せっかく取ったエリアや、無駄に失いたくないだけや。)
半分は本心、半分は別の目的があるのだろう。
僕はそれ以上は聞かないようにした。
(これで交換は成立や。ほなな。)
魔神の鍵を手にしたリュウはそのまま方向転換をし、来た方向へ向かって移動し始めた。
このままみんなの仇を逃がしていいのか、僕の中のリュウへの殺意が一気に膨れ上がった。
(やめとき、光に勝ち目はないで。)
リュウは僕の方を振り返らずつぶやき、そのまま去っていった。
・・・・・・・・・・・・
一旦最北西端に戻った僕らは、今後のことを話しあった。
目的のパンドラボックスも取得し、獣神の鍵、宝玉も揃った。
8階層へ行くための獣神の扉もこの最北西端の部屋内にある。
僕らは遂に8階層へと進むことが出来るのだ。
ただいきなり全員で行ってしまうと、不慮の事故が起こると簡単に全滅してしまうだろう。
8階層以降の情報は、皆無と言っても良いくらいに何もないのだ。
僕は一旦8階層に進むグループと、7階層で防衛を続けるグループに分けることにした。
まずは先行隊として、僕を含む数体のミミックが8階層の探索を行う。
安全が確認されれば、徐々にミミックたちを派遣していくという形だ。
防衛隊は拠点を強化するチーム、情報収集・仲間の勧誘を行うチーム、他の拠点の勢力と外交を行うチームだ。
まず先行隊にジークフリート、タケル、うさぴょん、ナース、しのぶを選択。
拠点強化をアミナ・箱助を中心としたプレイヤーミミックチーム。
情報取集や勧誘にはアヌビスを中心としたチーム。
外交には重複亭箱太郎を任命した。
これで準備は整った。
次に僕がすべきことはパンドラボックスへの宿替えだ。
意思を持つ箱であるパンドラボックス。
前回は僕が宿主になることが出来なかった。
今回こそ上手くいってほしい。
僕がパンドラボックスに向き合うと、パンドラボックスの方から話しかけてきた。
「我の質問に答えよ。ミミックにとっての未来とはなんだ?」
今までこの問いをずっと考えてきた。
ミミックにとっての未来。
今まで僕はこの世界に来てから沢山の出会いと別れを体験した。
何度も騙された。
何度も殺されかけた。いや実際は殺されたのだ。
自暴自棄になったこともあった。
未来が見えなくて、手当たり次第に敵を攻撃してきた。
その度に助けてくれたのは仲間だ。
僕にとって未来とは仲間と過ごすことなんだ。
(ミミックにとって未来とは仲間だ。
ミミックは一体だけでも十分強い。
生きるためだけなら一体でも問題はないだろう。
しかし、もっと大きなことをする、ミミックの未来を考えるのならそれでは不十分だ。
ただ、ミミックにとっても仲間は必要だ。
苦楽を共にする仲間がいるだけで、何倍も強くなれる。
この旅を通じて僕はそのことを痛感した。
ミミックの未来にとって必要なのは仲間なんだ。)
僕は自分の思いの丈をパンドラボックスにぶつけた。
自分の言いたいことは言い切った。
これでダメならパンドラボックスは諦めよう。
パンドラボックスが無くてもダンジョン攻略をしてやる。
しばらく黙っていたパンドラボックスが口を開いた。
「良かろう。我は光を主として認めよう。
この箱の全ては光のものだ。
パンドラボックスはそう言うと僕と同化を始めた。
僕とパンドラボックスが光に包まれ、僕の箱であるファラオボックスが消失し始めた。
僕の頭に機械音が鳴り響く。
「ファラオボックスのデータをパンドラボックスに移行します。しばらくお待ちください。」
「データ移行中。起動中のアプリケーションを全てクローズします。」
データ移行中・・・・・・・・・・・・・
「データ移行が完了しました。システムを再起動します。」
プツン。ここで僕の意識は完全に途切れた。
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