第114話 ジークフリートの報告

食事を終えた僕たちは再びキングの元に戻った。


「よぉ兄弟、十分戦力を補充できたか?」

(ああ、問題ない)


「なら良かった。またすぐに働いてもらわねぇといけねぇからな。」


やはり、キングも気付いている。

先ほどの攻撃はあくまで偵察だったことを。

もし本当にリュウが率いているのならば、本命はこの後にあるはずなんだ。


その時、僕の【相互理解】を通して連絡が届く。

ジークフリートだ。

最南端の部屋に偵察に行っていたジークフリート達から連絡が入った。


(最南端の部屋が陥落した。)

ジークフリートからのメッセージは衝撃的だった。


(最南東端を襲撃した魔族たちは、オークたちの陣地を占領。

その勢いのまま最南端の部屋にも攻め込んだようだ。)


(現状はどうなっている?戦力はどうだ?リュウはいたか?)


僕は逸る気持ちを抑えきれず、ジークフリートに矢継ぎ早に質問した。

ガーゴイルやサイクロプスだけでは、強固な部屋を落とせるとは思えない。

何らかの作戦や戦力を用意しているに違いない。


(ちょ、ちょっと待って。順番に説明しますので。)


質問が唐突過ぎたらしい。

ジークフリートは一旦、間を空けてから再び説明した。


(僕としのぶが偵察中に奴が現れたんだ。)


奴?ガーゴイル達ではないのか?


(奴はたった一匹の魔族だ。いや魔人なんだ。

奴は現れてすぐに最南端の部屋の入口へと向かって行った。

もちろん、門番のシャーマンたちが魔神に攻撃を仕掛けたけど、全然効いている様子もない。

入り口に現れた増援のシャーマンたちをまとめて、強力な炎で焼き尽くしたんだ。

奴は入り口を抜け、雄たけびをあげながら部屋の奥へと入っていった。)



・・・・・・・・・・・



(奴が入り口から部屋に入ってから2時間後、奴は部屋の奥から入口に姿を現した。

おそらく任務を終えたのだろう。

彼は振り返ることもなく、その場を離れ東方向へ行った。


僕としのぶは現状を確かめるために、魔人が去った後部屋の中に潜入したんだ。

部屋のあちこちで焦げ臭いにおいがしていた。

動くものは1人もいない。

部屋にいる全てのシャーマンは、絶命していたんだ。


ただ、宝箱や財宝には一切手を付けていないようだ。

そのまま手つかずのまま残っていた。

一番奥のパンドラボックスも無事でしたよ。)


(たった1人でシャーマンたちの拠点を制圧!?

一体魔人とはどれほどの強さを持っているのだ。

おそらく、この剣もリュウが噛んでいるに違いない。

操っているのはガーゴイルやインプ、サイクロプスだけではない。

何らかの方法で魔人まで味方にしているのだ。


(魔人が去った後、しばらくするとガーゴイルなどの使い魔が大量に現れた。

奴らはそのまま部屋に入り、部屋を占拠してしまったんだ。

報告が遅れてすまない。ただ、僕らも見つからないように必死だったんだ。)


ジークフリートたちと連絡が取れなくなっていたのは、そういった事情もあったからだ。

戦局が変わった。このまま彼らに偵察を続けてもらうのはとても危険だ。


(ジークフリート、しのぶ。一旦偵察を終えて最西端の部屋に来てくれないか?

今度はおそらくここが戦闘エリアになるだろう。)


(了解、今から向かうよ。)


間違いない。次に魔神が襲ってくるとしたらこの最西端の部屋だろう。

ここで魔人を迎え撃たなければならない。


「あー、兄弟。話をしているところ悪いがな。

どうやらここに向かってくる敵がいるらしいぜ。

今度も手を貸してはくれねえか?」


キングが再度僕たちに依頼する。

もちろん僕たちに断る理由がない。

恩を売りたい気持ちよりも、この最西端を落とされると僕たちの最北西端も危なくなる。



(もちろん、喜んで手を貸そう。)


「へっ、恩に着るぜ。今度の敵は1匹らしい。

魔人だ。

奴ら魔人まで操ってきやがった。」


僕たちは再度戦闘準備を整え、部屋の入り口へと向かったのだ。

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