第30話 闇落ち
「称号【闇落ち】を獲得しました」
僕は新しい称号を取得した。
特に何かをしたわけではない。
ただ、意識を変えただけだ。
今までどこかミミックになりきれずにいた。
食べずにわざと逃がしてしまうこともよくあった。
特に女性を食べることに、気持ちが拒否感を示していたのだ。
カエルに裏切られ死の淵を体験し、僕はその感情を捨て去ることに決めた。
信じても裏切られるだけ。
それならそもそも誰も信じない方が良いのだ。
僕は裏切られた怒りよりも落胆の方が大きかった。
それならとことんミミックになってやろう。
例え誰であっても、僕の前に立ちはだかる者は食ってやる。
僕の気持ちが固まったことが影響したのか、皮肉にも新しい称号を手に入れたのだ。
「【呪いLv1】がLv5になりました」
「【悪食Lv6】がLv10となり、レアスキル【暴食】へと進化しました」
「【早食いLv4】がLv8となりました」
「【暗黒魔法Lv1】を獲得しました」
「【暗黒魔法Lv1】獲得により、暗黒魔法【フィアー】を覚えました」
「【ポイズンブレスLv1】を獲得しました」
【呪い】対象の悪意を増大し、内部で破裂させる
【暴食】レアスキル。何でも食べることができる
【暗黒魔法】暗黒魔法が使用できるようになる。Lvが上がるにつれて使用できる魔法がスキルとして現れる。
【フィアー】対象に恐怖心を与える
【ポイズンブレス】ブレスが届く範囲の相手に毒霧攻撃を行う
【闇落ち】を獲得して得たスキルは、どれも相手に不安と恐怖を与えられるスキルのようだ。
今までの僕なら使うのをためらっていたスキルだろう。
しかし、今の僕なら使いこなせるに違いない。
ちなみに【闇落ち】とはどういう意味だろうか、鑑定Lv5で確かめてみた。
【闇落ち】
キャラの分岐によって獲得する称号の1つ。闇落ちルートを選択した場合に取得される。
これは、僕が選んだ道が間違っていたのか?
この世界はやはりリアルタイムのゲームのようだ。
どのルートを選択するかによって、ストーリーが変わってしまうらしい。
でも僕はこのルートを選んだことに後悔はしていない。
闇落ちすることを決めてから、心がすーっと軽くなったのだ。
次に僕がすべきことを考えた。
木箱になった僕は、このジャングルで居続けるのは心もとない。
いっそのこと2階層へ戻ろうか?
否。
僕は騙されたままじゃいられない。
僕を騙した奴には復讐をしなければ気が収まらない。
カエル狩りを行おう。
長が言っていたレアアイテムも僕の物とするのだ。
僕はカエルを探し始めた。
ジャングルの中をマッピングを使用しながら、当ても無く探し続けた。
そして、気づいたのだ。
この階層では木箱の方が動きやすい。
宝箱に比べ小回りがきき、軽い木箱。
悪路でも僕には大きな影響はない。
敵から隠れやすく、見つかりにくい。
しかもジャングルでは擬態スキルが非常に効果的だ。
周りに視覚情報が多い分、敵から僕の意識は簡単に逸れる。
さらに僕の覚えたスキルは強力。
相手にそっと忍び寄り、呪いLv5で敵を内部から破壊する。
毒針Lv5や奪うLv7も不意打ちで仕掛ければ、相手は気づかないまま大ダメージを追ってしまうのだ。
それはモンスターでも冒険者でも変わらない。
例え相手が戦意を喪失しようが、僕には知ったことではない。
意思疎通スキルの影響で相手の気持ちが分かってしまうが、それすら僕には何の意味もなかった。
僕は食べて食べて食べ続けた。
僕はアバターポイントが貯まっても宝箱は買わなかった。
僕が購入したものは主に罠。
ジャングルで効果的なワイヤーや、バンジースティックなどかつてベトナム戦争で使われた罠ばかりを選んでいた。
落とし穴の下にバンジースティックを設置し、落ちた相手を串刺しにした。
ワイヤーはとても効果的なアイテムだ。相手の動きを止めることも切り刻むことも一呼吸で出来るのだ。
食べ続けることでレベルもどんどん上がっていった。
スキルもLvも上がり、新しいスキルも覚え続けた。
覚えたスキルで、特に役立ったのは【吸盤】と【隠密】。
【吸盤】は体に吸盤を作り出すことで、壁や木などに体を固定することが出来る。移動スキルと組み合わせることで、壁や木をよじ登ることが出来るのだ。
【隠密】も使い勝手が良いスキルで、擬態スキルと組み合わせることでより相手に気づかれずに近づくことが出来る。
そして、僕は遂にカエルを見つけた。
餌を探しに来たのだろうか。
2匹で辺りをキョロキョロと見回しながら移動している。
相変わらず僕よりも大きい。
木箱になった今なら僕の3倍はあるかもしれない。
①このまま、倒すか?
②住処に帰るのを待つか?
僕が取った行動は①、②両方だ。
僕は隠密Lv3でカエルの元に近づき、全く気づいた様子のないカエルに向かって【呪いLv6】を発動。
ポンッ!
カエルのお腹で小さな破裂音が聞こえた。
その場に倒れるカエルだったが、もう一匹のカエルは気づいていない。
僕はその場を離れ、木陰に隠れ様子を伺った。
倒れているカエルに気づいたもう一匹のカエル。
驚いた様子で、そのカエルに近づく。
カエルは仲間をゆすってみたが、反応はない。
僕はダメ押しに【投石Lv2】を使用し、倒れたカエルと反対方向の木に石を投げつけた。
コン。
乾いた音が鳴り響き、カエルは音の方へと視線を向ける。
僕は倒れたカエルに近づき、ワイヤーでカエルの首をねじ切った。
僕は、急いでその場を離れ再び様子を伺う。
視線を戻したカエルは、ようやく仲間の首が落とされていることに気づいた。
鳴き声を上げ、一心不乱にその場を離れるカエル。
僕はその後を気づかれないように追いかけた。
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