第6話 狩られる者

自分だけが狩る訳ではない。狩られる側に回ることもあるのだ。

狩りが成功し続けて、そんな単純なことすら忘れていた。


僕の体にまとわりつく粘っこいスライムの体。

触れられているところが段々と熱くなってきた。


(なんとかしなければ…!)


動けない僕にとってスライムの攻撃はすぐに致命傷になってしまう。

蓋も押さえられているから、口を開くこともできない。

ガタガタ…ガタガタ…


必死で箱を開こうと繰り返すも、完全に防がれてしまい身動きすら取れないのだ。


スライムの粘液が僕の体をつたって地面に滴る。


ージュッー


粘液が地面に触れると音を立てながら焦げ臭いが広がった。

スライムは僕を溶かして、食べやすくしているのだろう。


(食べられる…僕が…!?)


日本にいるとありえない事実。今まさに食べられようとしている。

激しい恐怖とともにやるせない怒りが僕を襲った。


(こんなところで死んでたまるか!)


僕は状況を打破するヒントをもらうために、スライムに鑑定Lv3を使用した。


【スライム】

Lv 2

HP(体力):20

MP(魔力):10

SP(スキルポイント):50

筋力:15

耐久:0

知力:5

器用:5

俊敏:30

運:5


鑑定すると、ステータスでは力を除いて全体的に僕の方が上だ。

(自分よりも格下の相手に死を感じていたなんて…)


格下の相手と分かり幾分か安心したものの、状況は依然変わることはない。

僕の体は押さえられ、粘液で溶かされ始めている。


相手のスキルや弱点を見つけようと、再度鑑定Lv3を使用するも

「鑑定スキルレベルが足りません」

と一蹴された。


ミシ、ミシ、ゴトッ


僕の箱の外壁の一部が剥がれ、地面に残骸が転がる。

スライムはその隙間に体を入れてきた。

無防備な部分にスライムの粘液が付着する。


(うわぁぁ!痛い!痛い!)


箱の外壁部分に感じた熱さとは違い、外壁が剥がれた部分の痛みは刺すような痛烈な痛みだ。

傷口に直接火を当てられているような、激痛が僕を襲った。


(このままでは食べられるより先に気が狂ってしまう…)


もう一刻の猶予さえない。考えろ、考えろ!

現在あるスキルは、甘い匂いLv4 、鑑定Lv3、擬態Lv1、聴覚Lv1、毒針Lv1。

この中で使えそうなスキルは毒針Lv1だろう。

しかし、スライムに毒針なんて効くのか?


ダメ元で毒針のスキルを発動した!

しかし…


「エラー!毒針は箱が開いた状態でないと使えません」


使用する前にわずかな希望の光が潰されてしまった。

蓋を押さえられている今の状況では毒針が使えないようなのだ。


ガタガタ…ガタガタ。


箱を開けようと試みるも、スライムはそれを許してはくれない。

箱はしっかりと押さえられてしまい、全く動くことが出来ないのだ。


スライムの粘液が僕の体を蝕み続け、僕の外壁が次々と地面に落ち続けた。


「溶解耐性Lv1を獲得しました」


僕の耳にスキル取得の声が響く。

どうやら耐性スキルは、対象となるの攻撃を受け続けることで獲得できるようだ。

耐性スキルのおかげで、粘液による痛みは少しはましになった。

しかし、それで状況が改善されるほど甘くはない。

スライムの攻撃は着実に僕の体にダメージを与え続けている。


僕のHPが40→16となり、今も減り続けている。

もちろんこのままやられるつもりはない。

僕はスライムのステータスについて再度確認した。


【スライム】

Lv 2

HP(体力):20

MP(魔力):10

SP(スキルポイント):50

筋力:15

耐久:0

知力:5

器用:5

俊敏:30

運:5


奴は耐久と知力が低い。

そこにわずかな勝機を見出した僕は、擬態Lv1を使用した。


すると、箱の色がスライムと同じブルーに変化した。

突然の変色に一瞬箱を押さえる力がゆるんだのだ。

すかさず甘い匂いLv4を近距離で使用!

スライムの意識は完全に匂いの方へと逸れたようだ。


僕は全力で箱を開き、スライムを箱から引きはがした。

そして再び向かってくるスライムに向かって、


「毒針Lv1 毒針Lv1 毒針Lv1 毒針Lv1」

残っているSPを毒針に変換し、スライムに向けて発射した。


それでも向かってくるスライムに再度毒針を連続発射。

全ての毒針が、スライムの体に直撃した。

それでも向かってくるスライムだったが、ブルーの体が緑色へと変色し、やがて動かなくなった。

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