第2話 チュートリアル
(ミミックってどういうことだ?まさか僕がミミックになっているのか!?)
そういえば思い当たるふしがある。僕が唯一動かせるのは箱の開閉のみ。
これってミミックの口の開閉なんじゃ…。
「レベル1となりましたので、チュートリアルをご使用できます」
どこからともなく、声が聞こえてきた。
しかし、僕の頭はミミックのことで頭がいっぱい。
声には気づいていたが、反応ができずにいた。
「レベル1となりましたので、チュートリアルをご使用できます」
再度頭上から声が響く。この声は一体誰のものなんだろう。
「レベル1となりましたので、チュートリアルをご使用できます」
(あーもううるさい!)
ステータス画面を見ると端にチュートリアルの文字が記されている。僕はチュートリアルを選択し、チュートリアルと念じた。
「パンパカパーン、おめでとうございます!」
先ほどまでの淡々とした機械音声の声が、急にハイテンションになって僕の頭に直接響く。
「光君はレベル1となったので、このチュートリアルを使えるようになりました!このチュートリアルでは、プレイヤー達にこの世界について学んでもらいます。」
(ん?プレイヤーとか言ったか?それにこの世界って?)
「うん、そう。光くんはこの世界のプレイヤーだよ。」
僕の思ったことが、直接伝わっているようだ。一方的なコミュニケーションではないらしい。
「光君はビクトリアス・ファンタジアのプレイヤーの一人に選ばれました。はい、拍手ー」
頭に直接響くイラっとする態度と声、そもそもチュートリアルってこんなのだっけ?
「このチュートリアルでは、この世界の成り立ちや攻略方法、質問なんかに答えちゃいます。もちろん答えられないこともあるので、怒らないでね。」
「また、このチュートリアルはいつでも使用でき、次の進化するまで使えるので上手く利用してね。」
どうやら本当に異世界?に迷い込んだらしい。夢でもないようだ。
(何で僕がこんなことに?僕は死んでしまったの?)
「異世界と思っているようだけど、ちょっと違うかな?ここは僕たちが作ったゲームの世界。仮想現実ってやつ。それに光君は死んでもないよ。」
(は?何で僕がゲームの世界に?それに僕たちが作ったって)
「僕はこのゲームの制作者の1人。何人かでこのゲームを運営しているよ。ただ、ゲームといっても体感することはリアル。体が傷つけば痛いし、お腹も減るよ。」
「魂だけこっちらのゲームの本体に移したような感じ。ホラ、スマホのSIMカードを入れ替えを想像してもらったらわかるかな?」
(じゃあ、僕の魂を入れ替えたってこと?でも何で僕が?それにミミックって)
「光君をミミックにインストールした理由?そうだなぁ、色々あるけどあげるとしたら名前?だって宝 光ってまさしくミミックっぽい名前しているじゃん。」
沸々と怒りがこみ上げてきた。
名前?本当に名前で選んだのか?
「制作者の1人が前々から目をつけていたらしいよ。アッ、僕じゃないよ。その人がずっと光君のことを推薦しててね。それで魂を移し替えたってわけ。」
このゲームの制作者の中にクソ野郎がいるようだ。
今にも爆発しそうな怒りを抑えるのがやっと。
感情に任せてチュートリアルを責めても、おそらく状況は改善しない。むしろ悪くなるだろう。
「そうそう、怒るのは分かるけどちゃんと聞いておいた方がいいよ。でないと一生この世界から抜け出せないからね。」
寒気がした…。ゲームから抜け出せない?
「このゲームには達成課題みたいなのがあって、それをうまく攻略すればゲームクリアになるってわけ。それがクリアされるまではずっとこの世界に残ってしまうかな。」
(達成課題?僕の課題は一体何?)
「それは今は秘密。おいおいと教えるね。」
(僕の本体はどうなってるの?クリアに時間がかかると本体の方が死んでしまうんじゃ?)
「それも心配いらないよ。肉体と時間と精神の時間は全く別だからね。ここで何年過ごしたとしても、現実世界はダウンロードした時の状態なんだ。1秒たりとも時間は経過しないよ。」
(じゃあ、この世界で死んでしまったらどうなるの?ゲームオーバーになることだってあるんでしょ?)
「それ聞きたい?もうある程度分かっているでしょ?新しいスマホがSIMカードごと壊れたら、データって残ってないよね?」
つまり、死んだら終わりと…。何で僕がこんな目に!
「気の毒かとおもうけど、なってしまったものはしょうがないよね。他に質問はない?無かったらこの世界について説明するね。」
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