朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

第1章 ミミックとして生きる

第1話 目が覚めるとミミックになっていた

(えっ?まだ暗い?)


いつものように目が覚めたが、なんだかいつもと違う。辺りは真っ暗で身体は金縛りにあったように全く動けないのだ。


声を出そうにも言葉が出てこない。体全体がなんだか重くどこかに閉じ込められているような気すらする。


(僕の体は一体どうなってしまったのだろう?)




僕の名前は宝 たから ひかる。珍しい名前のせいでからかわれることはあるが、僕自身は結構気に入っている名前だ。

某高校に通う2年生。県内でも有名な進学校だが、家から一番近いという理由で決めた。

趣味がゲームのためか、学校でも浮いてしまうことがしばしば。


いつものように夜遅くまでダンジョンRPGをして寝たはずだった。

考えてみても、現在の状況に思い当たるふしはない。

状況を整理しても体が動かないことには変わらない。段々息苦しくなってきた。

僕は深呼吸しようと大きく口を開けようとした。すると…。


ーギィーッ、バタンー


何かが開く音がしたと同時に、辺りが明るくなった。

なんと、天井がなくなったのだ。

同時に、僕の口に押し寄せる酸素。僕の息苦しさは一瞬で解決した。


ーギィーッー


僕の頭上で音を立てながら、再び天井が迫ってきた


ーバタンー


そして、再び僕の周りは真っ暗になった。

今ようやく理解が出来た。僕はどうやら箱の中に閉じ込められているのだ。

なぜ箱が開いたのかは分からないが、とにかく僕は箱の中にいる。

まったく身動きさえとれない状況に陥っているのだ。

誘拐されたのだろうか?



僕の家は両親が共働きで、帰ってくるのが遅い。

父はゲームクリエイターで、数々のヒット作を生み出している。

母も同じくゲームクリエイターで、父が所属する会社の代表取締役。

2人ともゲームの制作に没頭すると、家に帰ってこないこともたびたびある。

おかげで両親の影響を受け、小さいころから僕もゲームの世界に引き込まれるようになった。

両親は留守のことが多いが、それなりにセキュリティーが整っている。

誰にも気づかれずに僕を誘拐なんて出来るはずがないんだ。



しかし現実問題、僕は箱に閉じ込められている。

何かの薬を使われたのか、動けないし声も出せないのだ。

僕は再度深呼吸をしようと口を大きく開けようとした。すると…。


ーギィーッ、パタンー


先ほどと同じ音がして、箱の天井部分が開いたのだ。

明るくなる視界。

開かれた視界からよくよく見てみると、ここはどこかの洞窟のようだ。

一体僕はどこに連れてこられたのだろう。

自分の今後のことを考えると急に怖くなってきた。


ーギィーッー


また箱が閉まり出した。

なんとかこのまま開いていてくれないだろうか。

再度口を開けようとすると、箱も僕の意思と同じように開き始める。

どういうわけか僕が口を開こうとするたびに、箱が開くのだ。

じゃあ閉める時は?


僕は口を閉じようとすると、箱も同じように閉まり始めた。

どうやら僕の口の動きに連動して、箱が開閉するようだ。

現在僕が唯一出来ることは箱の開け閉めのみ。

それ以外は動くことも、声を出すことさえ出来ない。



途方にくれている僕に、一匹の虫が向かってきた。

急いで箱を閉めようとしたが、すでに手遅れ。

箱の中に虫が入ってしまった。

閉じ込められた虫は逃げようと箱の中を暴れまくる。

すると、虫が溶けるように消えてしまったのだ。


「羽ばたき虫より鑑定スキルLv1を獲得」

「レベルが上がりました」


どこからか機械音声のような声が聞こえてきた。

あっけに取られている僕に、機械音声はさらに続けた。


「ステータス画面が見れるようになりました」


今度ははっきりと聞こえた。

(ステータス画面?)

すると、僕の目の前にゲームのステータスウィンドウのようなものが現れたのだ。

そこにはこう書かれていた。


名前:光

種族:ミミック

クラス:見習い

Lv:1

HP(体力):40

MP(魔力):100

SPスキルポイント:100

筋力:5

耐久:10

知力:30

器用:5

俊敏:1

運:300


スキル:鑑定Lv1 食べるLv1 甘い匂いLv1


(これは僕のこと?)


ゲームのように僕の能力が空中に浮かび上がった。

(リアルな夢だな…)

夢ならいつか覚めるだろうと高を括り、どうせなら楽しんでやろうと思い直した。

さっきの虫を箱の中に入れたことで、虫が自滅したのだろう。

虫を倒したことでLvが上がり、出来ることが増えたのかもしれない。

ステータスを改めて見ると、運だけが異常に高いことに気づく。


(この箱に閉じ込められている時点で、運がいいとは思えないけど…。)


さらにステータスを見ていると、種族の欄に人間以外のものが書かれていた。


(えっ種族:ミミック!?)

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